2025年10月14日から17日までの4日間、幕張メッセでは「Society 5.0」の実現に寄与するさまざまな技術が一堂に会する展示会「CEATEC 2025」が開催されている。

「Innovation for All」をテーマに掲げた同展示会にて、日立製作所は、「ドメインナレッジ×AIで進化し続けるLumada~ハーモナイズドソサエティをめざして~」をテーマにブースを展開。AIエージェントやデジタルエンジニアリングなど、社会のイノベーションを後押しする技術を紹介している。またブース内の一角では、同社のAIアンバサダーなど社内外のゲストが登場するミニセッション「スナック育子のInnovation Night」が行われた。

  • CEATEC 2025の日立製作所ブース

    CEATEC 2025の日立製作所ブース

非熟練者にノウハウを与えるAIエージェント「Naivy」

日立は7月、現場作業における非熟練者の心理的負担を軽減し、作業効率化を支援する次世代AIエージェントとして「Frontline Coordinator - Naivy」を開発したことを発表していた。そして今回のCEATECでは、同社独自技術である現場拡張メタバース上に作業現場を再現し、Naivyによって集約された熟練者のOTナレッジや現場データの解析をもとに、フロントラインワーカーを支援するソリューションが実演された。

  • 「Naivy」の概要

    AIエージェント「Naivy」の概要(出所:日立製作所)

今年度のCEATEC AWARDにおいてイノベーション部門賞を受賞しているNaivyは、メタバース空間で蓄積・生成される情報と現場でリアルタイムに発生する事象を効果的に統合・活用し、状況に応じて必要な情報をわかりやすく提供することが強み。こうしたAIエージェント機能により、現場で発生した課題に対して非熟練者であっても即座に対応することが可能になるため、社会的課題となっている人手不足の解決などにも寄与するという。

また工場など施設全体の管理においても、各設備の状況を整理して蓄積しするとともに、トラブル発生時には対処手順をわかりやすく表示可能に。“バルブを30度回す”など細かい手順を可視化し、対応時間を短縮することで、非熟練者の業務遂行能力が3割ほど向上することが確認されたともしている。

  • Naivy活用イメージ

    メタバースを活用したNaivy活用イメージ(出所:日立製作所)

高感度センサーグローブの実演展示も紹介

Naivyと同じく、非熟練者の作業効率向上などに寄与するデジタルエンジニアリング事例として展示されているのが、指先の繊細な動きを検出しデジタル化する「センサーグローブ」だ。同製品は、日立独自の人計測センサー技術と、同社米国子会社であるGlobalLogicのソフトウェア開発力を融合させ、高精度で手先の動きを収集・計測する手袋型ウェアラブルセンサー。圧力・加速度・ジャイロ・地磁気・音の5項目が測定できるといい、ラインワーカーの作業定量化や作業中の環境音取得など、さまざまな活用が期待されるとする。

  • センサーグローブ

    ブース内にて展示されているセンサーグローブ

今回のブースでは、実際にグローブを身に着けて動きをセンシングする体験展示を展開。また14日には、日立社員の中川育子氏がパーソナリティを務めるポッドキャスト「スナック育子のInnovation Night」を再現した“バーカウンター”で、この手袋型センサーをテーマに据えたセッションも展開された。

  • 「スナック育子のInnovation Night」のミニセッション

    14日に行われた中川育子氏(写真左から2番目)らによる「スナック育子のInnovation Night」のミニセッション

同セッション内でのデモンストレーションでは、プロのバーテンダーによる動きから取得したデータをもとに、カクテルシェイカーを振る動きを採点。お手本となる細かな動きとの違いを可視化することで、言語化が難しい熟練者ならではの動作の再現を後押しするとした。

  • カクテルシェイクの採点結果

    デモンストレーションが行われたカクテルシェイクの採点結果(デモンストレーションは“プロテインドリンク”のシェイクで行われた)

“量子コンピュータ”の計算メカニズムも解説

また日立ブースではこのほかにも、同社が開発に注力する量子コンピュータでの計算メカニズムを“ルーレット”でわかりやすく説明するコーナーや、偉人や経営者など高い専門性を有する600種類の“異能”たちをディスカッションさせ、創造的な経営指針などを生み出す経営層向けAIエージェント「FIRA」など、さまざまなソリューションが紹介されている。

  • 量子コンピュータの計算メカニズム解説

    ルーレットをイメージした量子コンピュータの計算メカニズム解説

グループを横断した「One Hitachi」でさまざまなソリューションの開発を推進する同社。新経営計画「Inspire 2027」で掲げられた「環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティ」の実現に向け、今後もLumadaを軸に、データからの価値創造による課題解決に取り組んでいくとしている。