Texas Instruments(TI)は3月8日、同社初となる100V GaNパワーステージ「LMG2100R044」および「LMG3100R017」、ならびに車載用途にも対応する1.5W絶縁型DC/DCモジュール「UCC33420/UCC33420-Q1」を発表した。

電力密度にフォーカスした新製品群

今回の新製品各種について、同社のGaN担当ビジネスリードのフェイ・ヤン(Fei Yang)氏は、「TIでは、電力設計上の課題として『低EMI』、『電力密度』、『低静止電流』、『低ノイズと高精度』、『絶縁』の5つを掲げており、今回発表したLMG2100R044およびLMG3100R0172製品はそれらの中でも電力密度にフォーカスしたものだ」と説明する。

というのも、近年、データセンターや太陽光発電、電気自動車(EV)など、さまざまな電子機器の分野において、扱う電力量が増大しつつあり、限られたスペースでより大電力の供給を可能としつつ、コスト削減を図りたいというニーズが高まっているという。

次世代パワー半導体として活用が進むGaNは、ワイドバンドギャップ半導体であり、高温動作、高耐圧、高いスイッチング周波数といった特徴を有しており、放熱機構の簡略化なども含めて、さまざまなメリットを提供することが期待されている。ヤン氏も、「今回発表したGaNソリューションは、データセンターや太陽光発電、EVといった分野に適用可能で、高密度、小型化、放熱性能の改善などを実現できるものだ」と説明する。

2製品ともにGaN FETとゲートドライバで構成されたパワーステージ製品で、高集積、高いスイッチング周波数によってスイッチング損失がSi MOSFET比で50%以上削減され、磁気素子の小型化も可能となるほか、1.5kW/in3(91.5W/in3)を上回る値まで電力密度を高めることが可能で、これによりプリント基板サイズを従来ソリューション比で40%以上小型化を図ることができるほか、部品点数(BOM)の削減も可能となり、システム全体のコスト削減につなげることができるとしている。

  • LMG2100R044およびLMG3100R0172

    LMG2100R044およびLMG3100R0172の概要 (資料提供:TI、以下すべて同様)

また、パッケージも放熱特性が強化されたものを採用。上面と底面の両面冷却が可能となり、これにより効果的に熱を拡散できるようになり放熱設計目標に到達させやすくなるとするほか、太陽光発電用マイクロインバータやオプティマイザでは、Siソリューションと比べて、スイッチング損失を半分以上減らすことが可能としており、システム効率が98%以上まで向上でき、加えて出力静電容量はSiソリューションやディスクリートソリューション比で60%以上下げることができ、ゲートドライブ損失を50%低減できるとしている。

  • LMG2100R044およびLMG3100R0172の採用パッケージの概要

    LMG2100R044およびLMG3100R0172の採用パッケージの概要

すでに2製品ともに量産出荷が可能。LMG2100R044とLMG3100R017の違いは、LMG2100R044が、80V連続、100Vパルス、35Aハーフブリッジ電力段で、ゲート・ドライバとエンハンスメント・モードの100V GaN FETを2つ内蔵し、5.5mm×4.5mm×0.89mmの鉛フリーの上面冷却用の露出上面QFNパッケージで供給されるもの。一方のLMG3100R017は、高周波GaN FETドライバによって駆動される100VのGaN FETで構成されたドライバ内蔵の90V、97AのGaNデバイス。ハイサイドのレベルシフタとブートストラップ回路が組み込まれているため、追加のレベルシフタを必要とせずに、2つのデバイスを使用してハーフブリッジを形成することができる。また、パッケージは6.5mm×4mm×0.89mmのヒートシンク接続用の露出上面QFNパッケージで供給されるものとなっている。

  • 100V GaNパワーステージを搭載した評価基板(EVM)

    100V GaNパワーステージを搭載した評価基板(EVM)もすでに提供可能となっている

トランス内蔵の小型絶縁型DC/DCモジュール

ディスクリートやトランスなどで構成される一般的な絶縁型DC/DCモジュールはソリューションサイズが大きくなるほか、トランスの高さも確保する必要があるが、高性能化が進むEVでは、システムレベルの電力密度の向上と高効率化が求められており、絶縁型バイアス電力供給ソリューションも例外ではないという。

UCC33420-Q1は、そうしたニーズに対応することを目的にEMI最適化済みのトランスや制御ロジックなど必要な素子を4mm×5mmのVSONパッケージに内蔵した車載向け1.5W絶縁型DC/DCモジュール(UCC33420は産業向け)で、ディスクリートソリューションに比べて8倍以上高い電力密度を実現するほか、競合モジュール比で3倍の高さの電力密度を提供するという。

  • UCC33420/UCC33420-Q1の概要

    UCC33420/UCC33420-Q1の概要

これにより絶縁型バイアス電源サイズを1/8に低減し、高さも最大75%削減可能とするほか、BOMも最大50%削減できるとしており、振動しやすい大きく重いトランスを使用しないで済むようになることから、バッテリマネジメントシステム(BMS)における信頼性の向上、設計容易化などを図ることができるようになるという。

性能としては、200V/nsを上回る高い同相過渡耐性(CMTI)と、3pF未満という1次側から2次側への小さい静電容量を通じて、大きい電圧過渡に対処できるソリューションを構築可能だとしている。

  • Isolated DC/DCがUCC33420/UCC33420-Q1が適用される箇所

    機能ブロック図の赤枠、Isolated DC/DCがUCC33420/UCC33420-Q1が適用される箇所

なお、これら2製品についてもすでに供給済みで、UCC33420-Q1については、入力電圧、出力電圧、電力定格が低い他のバージョンが存在しており、2024年第2四半期に入手可能となる見込みとするほか、800Vまたはそれ以上の高電圧アプリケーションに適した追加パッケージオプションも提供される計画だとしている。

  • UCC33420/UCC33420-Q1を搭載したEVM

    UCC33420/UCC33420-Q1を搭載したEVMの提供も可能な状態となっている