この半導体ニュースのまとめ

・ソニーセミコンダクタソリューションズが直接変換積分型X線CMOSイメージセンサ「IMX711」を商品化し量産出荷を開始
・最大26,100fpsの撮像速度と34e-rmsの低ノイズを両立し広いダイナミックレンジでの高精度測定を実現
・理化学研究所との共同開発により電池・半導体検査や元素マッピングなど検査・計測の高度化に貢献

ソニーセミコンダクタソリューションズは、最大26100fpsの高速撮像と34e-rmsの低ノイズを両立した直接変換積分型X線CMOSイメージセンサー「IMX711」を商品化し、2026年度第1四半期より量産出荷を開始する。

  • 直接変換積分型X線CMOSイメージセンサ「IMX711」

    直接変換積分型X線CMOSイメージセンサ「IMX711」のイメージ (出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ)

AI時代に求められるX線検査・計測の高度化

X線を用いた検査・計測は、電池や半導体などの先端半導体デバイスの検査から、材料開発や生命科学研究における科学計測まで幅広い分野で普及している。

そんな中、AIを含むデータ解析技術の進化に伴い検査・計測手法も高度化する中、X線センサにおいても効率的に信頼性の高いデータを取得できる性能が求められるようになってきているという。

従来、X線センサとしては「光子計数型」と「積分型」の2方式が存在しており、光子計数型はX線の信号量をしきい値に応じて0/1で処理する方式で、しきい値以下のノイズが出力されないため低照度での測定精度が高い一方、照度が上がると光子の数え落としが発生する課題がある。一方の積分型は光子エネルギーを積分したエネルギー量を信号出力する仕組みだが、ノイズの影響により特に低照度下での測定精度が低下する点が課題となっていた。

IMX711が実現した高速と低ノイズの両立

IMX711は、独自の回路技術により積分型X線CMOSイメージセンサとして最大26100fpsのフレームレートを達成。1フレーム当たりの電荷蓄積量を低減することで従来よりも高い飽和特性を実現しつつ、積分型センサの課題であるランダムノイズの発生を34e-rms(評価値、性能保証値は60e-rms)まで低減している。これにより微弱なX線信号もノイズに埋もれずに検出でき、X線光子単位でのエネルギー測定を可能としている。

全画素において低照度から高照度までX線の総エネルギー量を正確に測定できるため、照度差が大きい検査・計測にも単一のセンサで対応し、装置のスループット向上やダイナミックレンジの拡大に寄与するとしている。

高エネルギー分解能で元素マッピングや構造解析にも対応

同製品は積分型方式を採用しているため、事前のしきい値設定を必要とせずに光子のエネルギー情報を取得できる。さらにノイズや信号のばらつきを抑えた読み出しにより高いエネルギー分解能を実現し、光子エネルギー値の違いを明確にとらえることが可能だという。

高エネルギー分解能で信頼性の高いデータ取得を可能にすることで、元素レベルでの構成要素の違いやわずかな状態変化を定量評価する構造解析や材料分析など、従来は複数回の測定を要していた高度な検査・計測の精度向上や効率化に寄与する。さらに全画素の測定データを収集し、空間情報と組み合わせたり特定のエネルギーデータを抽出するなど、さまざまな条件での後段処理が可能となることで、検査・計測の多機能化にも貢献するとしている。

応用が想定される検査・計測手法としては、電池・半導体などの高速動体検査における定量精度やスループットの向上、光子エネルギーの違いと二次元分布を可視化する元素マッピング、さらには光子エネルギー情報と空間情報の活用による結晶構造解析と元素分析の同時測定などが挙げられている。

理化学研究所との共同開発で量産技術を確立

なお、同製品の開発は、ソニーセミコンダクタソリューションズと理化学研究所(理研)が共同で行ったとのことで、理研の初井宇記博士により発案された画素構造をもとに、実用的なX線イメージセンサとして成立させるために必要な高感度化および高いX線照射耐性と高電圧耐性の実現などの技術開発に共同で取り組んだという。ソニーは回路技術のほか、製造プロセスやパッケージング技術を開発することで製品の量産化にこぎつけたとしている。

X線検査・計測の分野では、半導体の高密度実装やバッテリーの品質管理といった先端デバイス領域での需要が高まっており、AIによるデータ解析の高度化も相まって、センサ側に求められる性能も多様化している。同製品のように高速撮像と低ノイズを1チップで両立するアプローチは、検査・計測装置の性能向上にとどまらず、エネルギー情報を活用した新たな解析手法の開拓にもつながるものと言えるだろう。