この半導体ニュースのまとめ
・三井金属と北海道大学が、宇宙線起因の熱中性子を99%以上遮蔽する極薄のガドリニウム金属箔を開発
・厚み0.1mm程度の金属箔でも高い遮蔽性能を確認し、半導体チップや装置への貼付によるソフトエラー低減を狙う
・塗料や溶射材などへの展開も視野に、半導体回路保護に向けた新たな材料技術として用途拡大を検討する
三井金属は6月8日、北海道大学(北大)と共同で、宇宙線起因の熱中性子を99%以上吸収する極薄のガドリニウム金属箔を開発したと発表した。近年、航空機や通信インフラなどで使用される半導体デバイスで顕在化している宇宙線中性子起因のソフトエラーに対応する材料技術として、半導体チップや装置に貼付しやすい極薄金属箔の形で回路保護を実現し、デバイスの信頼性向上につなげる狙いである。
熱中性子による半導体ソフトエラーが課題に
近年、航空機や通信インフラなどで用いられる半導体デバイスでは、宇宙線中性子に起因するコンピューターの誤作動、いわゆるソフトエラーが顕在化しているという。特に熱中性子はエネルギーが低いにもかかわらず、高エネルギーの高速中性子に近い確率でソフトエラーを引き起こすことが先行研究で報告されており、今後、半導体回路の微細化が進むにつれてその発生確率はさらに増大すると指摘されている。
こうした背景を踏まえ、三井金属はレアアースの1つであるガドリニウムに着目。ガドリニウムは中性子吸収能の高い材料として知られており、これを極薄の金属箔として実用化することで、半導体回路近傍への実装を容易にしようという発想である。
厚み0.1mm程度で熱中性子を99%以上遮蔽
今回開発したガドリニウム金属箔については、北大の電子加速器駆動パルス中性子実験施設「HUNS(Hokkaido University Neutron Source)」を利用して熱中性子遮蔽能を評価したところ、厚み0.1mm程度の金属箔でも熱中性子を99%以上遮蔽できることを確認したとしている。
この金属箔は極薄であることから、半導体チップや装置に貼付することで熱中性子から回路を容易に保護できる点が特徴となる。回路そのものの設計変更を伴わず、部材追加でソフトエラー防止効果を狙える可能性があることから、既存半導体システムへの適用余地も広がりそうだ。
半導体チップ貼付に加え塗料や溶射材への展開も視野
三井金属は、今回のガドリニウム金属箔について、半導体チップや装置への貼付用途に加え、ガドリニウム化合物を部材や壁に塗布する塗料や、高温部でも使える溶射材などへの用途拡大に向けて検討を進めるとしている。これにより、半導体パッケージ近傍だけでなく、装置内部や周辺部材も含めた多層的な中性子対策につながる可能性がある。
半導体プロセスの微細化と高集積化が進む中で、回路の高性能化だけでなく、宇宙線など外部要因に起因する誤作動対策も重要性を増している。今回のガドリニウム金属箔は、材料面から半導体の信頼性課題にアプローチする技術として位置付けられ、今後の実装方法や適用分野の広がりが注目される。
