この半導体ニュースのまとめ

・東レリサーチセンターが、半導体実デバイス内部の接合強度を直接定量評価する分析サービスを開始
・前処理技術とナノインデンテーション法により、従来困難だった内部接合界面の評価を可能にした
・ハイブリッド接合の信頼性向上や不良解析、歩留まり改善への活用を見込む

東レリサーチセンターは6月9日、半導体のハイブリッド接合で課題となっていた実デバイス内部の接合強度を直接定量評価する分析サービスを開始したと発表した。AIや高性能計算の進展を背景に重要性が高まる3次元実装向けに、ハイブリッド接合の信頼性向上、不良原因解明、歩留まり改善の高度化を支援する狙いである。

AI・高性能計算の進展で高まる3次元実装の信頼性評価ニーズ

近年はAIや高性能計算の進展に伴い、半導体の高性能化・高密度化が進んでおり、チップを積み重ねて接続する3次元実装技術の重要性が高まっている。その中核技術であるハイブリッド接合は、金属配線同士の接続と絶縁層同士の接合を同時に実現することで、高密度かつ低抵抗な接続を可能にする技術として注目されている。

一方で、接合界面はナノ~マイクロメートルサイズと微細で、しかもデバイス内部に埋もれているため、実デバイスの状態で接合強度を評価することは難しかった。従来の接合強度評価法として知られるDCB法(Double Cantilever Beam法)では、単純化したモデル試料やウェハ端部での評価に限られ、実際の多層構造やバッファ層を含むデバイス構造を反映した評価が難しい点が課題だった。

前処理技術とナノインデンテーション法で内部接合界面を直接評価

今回のサービスは、横浜国立大学の井上研究室により体系化されたダイヤモンド製の圧子を試料表面に押しこみ、荷重と変位の関係から弾性率(ヤング率)や硬さを算出する手法である「ナノインデンテーション法」による界面強度評価手法を基盤としつつ、東レリサーチセンターが実デバイスに適用するための前処理技術を開発した点が特徴だ。具体的には、試料の積層構造や材料特性に応じて、評価対象となる接合界面を選択的に露出させる研磨・エッチングの組み合わせを確立したとする。

これにより、従来は内部に埋もれていて直接評価が難しかった実デバイス内の接合界面に対し、ナノインデンテーション試験を適用できるようになり、露出した接合界面に圧子を押し込むと界面に剥離が生じ、その剥離領域の形状や大きさを観察・定量化することで接合強度を評価するという。接合強度が低ければ剥離領域が広がり、逆に強度が高ければ剥離は抑えられて領域は小さくなるため、実デバイス構造における強度差を直感的に把握しやすいという。

接合ばらつきの定量化や不良メカニズム特定を支援

同社は、この独自前処理技術とナノインデンテーション評価を組み合わせることで、従来手法では把握しにくかった実デバイス構造における界面信頼性の実態を高精度に捉えられるとしている。同サービスにより、接合強度ばらつきの定量化、接合不良発生箇所およびメカニズムの特定、接合条件最適化への直接フィードバックなどが可能になるという。

  • 実デバイス構造の例と界面接合強度評価工程の模式図

    上段が実デバイス構造の例と界面接合強度評価工程の模式図で、接合界面を露出しナノインデンテーションにより剥離を発生させる評価工程を示している。下段が試料上方から観察した圧痕周囲の剥離領域の模式図で接合強度の違いに応じた剥離領域の広がりの違いを示している (出所:東レリサーチセンター)

先端パッケージング分野では、接合界面の信頼性がデバイス性能と量産歩留まりを左右する要素の1つとなっている。ハイブリッド接合の適用拡大が進む中で、実デバイスに近い構造で接合強度を評価できる手法は、プロセス条件の最適化や不良解析の精度向上に直結する可能性がある。

先端パッケージ開発向け界面評価技術の高度化につなげる

東レリサーチセンターは今後、同技術を通じて半導体メーカーや材料メーカーにおける先端パッケージング技術の開発を支援していくことで、界面評価技術の高度化を推進していく方針を示している。3次元実装の高密度化が進むほど、接合界面の健全性や強度を実デバイスレベルで捉える要求は強まるとみられ、今回のサービスは評価・解析面から先端パッケージングの量産安定化を支える取り組みとして位置付けられそうだ。