Huaweiは2022年に、自社での半導体生産の実現に向け、中国中央政府と深圳市地方政府から総額300億ドルの資金を調達したものと推測され、深圳市で複数の半導体工場をHuaweiとは別の名義で建設を進めていると噂されている。

こうしたHuawei系の半導体工場の建設やインフラの整備に複数の台湾企業が協力している模様であると米国の経済メディアBloombergが報じている

深圳市で建設中のHuaweiの別名義半導体メーカーは、鵬芯微(PXW)、鵬新旭技術(PST)、昇維旭技術(SwaySure)の3社であることが米国半導体工業会(SIA)より指摘されており、Bloombergによると、台湾の半導体材料販売会社である崇越科技やエンジニアリングサービス企業の漢唐集成、台湾矽科宏晟科技、L&Kエンジニアリングの中国子会社などが、化学供給システムや排水処理などに関する契約を結んでいる模様である。

例えば崇越科技の中国子会社は鵬芯微との廃水処理契約を締結している模様であるが、環境プロジェクトは米国の制裁で禁止されていないと説明しているという。崇越科技も鵬芯微との契約に、半導体製造装置や材料は供給はないとしている。また、漢唐集成は昇維旭技術の内装改修工事を受注したが建設業でもありウェハ関連製品や設備の製造・輸出も行っておらず、輸出管理規定に抵触することはないと説明しているという。

難しい米政府の制裁規則に抵触するかどうかの判断

こうした海外企業の米国の規制対象企業への関与が米政府が打ち出している制裁規則に抵触するかどうかの判断は難しいといえる。米国の制裁は、必ずしもすべての中国企業との取引を禁止しておらず、米国由来の先端技術の輸出を規制しているに過ぎない。そのため、海外企業が何を中国に持ち込んでいるか正確に把握しない限りルールに反しているかの判断ができないためである。台湾政府経済部(日本の経済産業省に相当)は、今回報じられた台湾企業4社の調査を行い、4社が中国に持ち込んでいる機器や技術が米国の規制対象のものかどうか精査するとしている。

こうしたBloombergの報道に対して、台湾のDigitimesは、複数の台湾企業の「米国の規制に違反することはしていない」との談話を掲載した上で、「米国の対中半導体輸出規制と何の関係もない台湾のエンジニアリングサービスサプライヤに対して(米国が)何かを言うべきではない。もしもこれらの4社が中国顧客との取引を禁止されるようなことがあれば、他の台湾企業のほとんど、さらには日韓欧米の企業なども同様な扱いを受けることになる」との台湾業界関係者の声を掲載している。

中国にまもなく巨大IDMが誕生か?

なお、Huaweiは今回報道された深圳市の別名義3工場に加え、山東省のパワー半導体メーカーQingdao Si'En(芯恩集成電路)と福建省のDRAMメーカーFujian Jinhua(JHICC)をHuaweiとは別名義で買収したとも噂されており、これらの5工場が稼働すれば、Huaweiはグループとしてロジック/マイコン、RF、DRAM、イメージセンサ、パワーデバイス、光半導体など多様な半導体の設計から製造までを手掛ける世界有数のIDMとなる可能性がある。

同社は、深圳での量産工場建設の前段階として、以前から上海の別名義(上海市の外郭組織)の試作ラインで半導体の試作を行ってきた経験を有している。また、日本のデバイスメーカーや製造装置、材料メーカー、自動車メーカーなどから多数の技術者を招き入れているとも言われている。