宇宙線イメージングの解析用として、ピラミッド内外の詳細な3Dモデルがカイロ大学によって構築された検出器の位置を5cm以下の精度で特定したモデルを用いて、NFCが存在しない場合に、各検出器から期待される宇宙線イメージのシミュレーションが実施された。その結果をもとに、各検出器から得られたデータとの比較が行われた。もし一致しない領域が存在すれば、NFCの存在が示されたことになるのである。解析の結果、下降通路およびアルマムーンの通路の全検出器においてNFCが確認されたとする。

下降通路の解析にて、4か所のデータで確認されたNFCの存在領域からおおよその位置と全長が推定され、その結果をもとに、NFCの形状を直方体と仮定した上で、シェブロンの特徴点を原点とした3Dモデル中でその位置や形を変更しつつ、データとシミュレーション結果が最も良く一致する各種パラメータの推定が行われた。その結果、NFCは、シェブロンの表面から80cm背後におよそ2m×2mの断面を持つ長さ約9mの空間であることが判明。位置と形を決定するパラメータの精度は、数cm程度であり、宇宙線イメージングとしては、極めて高い精度が得られたという。

また、アルマムーンの通路の検出器からのデータ解析では、NFCの傾きが評価された。全検出器から得られた結果を下降通路の中心を通る垂直な面に投影し、投影された位置分布の解析が実施されたところ、NFCは水平であることが判明したほか、アルマムーンからの観測結果と下降通路からの観測結果は、良く一致したとする。

  • 下降通路(EM1~4)とアルマムーンの通路(EM5~7)に設置された原子核乾板検出器により観測されたシェブロン背後の空間(NFC)のイメージ

    下降通路(EM1~4)とアルマムーンの通路(EM5~7)に設置された原子核乾板検出器により観測されたシェブロン背後の空間(NFC)のイメージ。各イメージの左は、検出器設置位置から確認されるピラミッドの内部構造(3Dモデル)。右は、シミュレーションを分母とした、データとシミュレーションの比の分布。赤い色ほど、シミュレーションから期待されるミューオン数よりも多く観測された場所。図中のCHはシェブロン、DCは下降通路 (出所:名大プレスリリースPDF)

さらに、CEAの研究チームがガス検出器を用いた計測を独立して実施。下降通路とその周辺3か所から得られたデータの解析が行われ、NFCの形状が推定されたところ、原子核乾板とガス検出器の2つの完全に独立な解析により得られたNFCのパラメータ推定値は、それぞれ誤差の範囲内で一致したという。

今回のNFCに関する成果について研究チームでは、シェブロンの役割にとって決定的なものになる可能性があるとしているほか、今回の成果により、NFCとSPBVとの関係や、シェブロンやNFCの役割についての考古学的考察など、異分野にまたがる融合研究へと発展し、クフ王のピラミッドの謎の解明につながることが期待されるとしている。