OKI、OKIアイディエス(OIDS)とフランスのMipsology(ミプソロジー)は10月17日、高度AIモデルの画像処理速度60fps以上を維持したまま軽量化し、FPGAへの実装を自動化する新技術の開発を発表。同日には、3社共同で記者会見を開催した。

  • 記者会見に登壇したOKIの前野蔵人氏(写真右)、須崎昌彦氏(写真右から2番目)、ミプソロジーの藤谷つぐみ氏(写真左から2番目)、(写真左)

    左からOKIアイディエスの滝澤家信氏、ミプソロジーの藤谷つぐみ氏、OKIの須崎昌彦氏、OKIのOKIの前野蔵人氏

エッジデバイス搭載の要求が高まる画像認識AI

AI開発の分野においては、自動運転や遠隔医療などの実現・高度化に向けて、演算処理の高速化(リアルタイム化)と消費電力の低減が求められている。しかし、高度な処理を行うディープラーニングモデルは、大規模かつ複雑な演算処理を必要とするため、計算性能やメモリ使用量に厳しい制約があるエッジデバイスへの搭載に際しては、AIモデルの軽量化や演算ロジック実装のための論理回路設計における専門知識を持つ技術者が必要となる。

AIプログラムのエッジデバイス搭載において、FPGAは、複雑な演算を並列処理し大容量のデータを高速に処理することができる小型デバイスであり、エッジデバイスでのリアルタイム処理に有効性を持つ。しかしFPGAは、汎用的なCPUやGPUに比べ複雑な実装や専門知識が必要で、開発期間の長期化やコストの増大が課題となっており、開発に数年間を割いたものの完成に至らず水の泡となった事例もあるという。

OKIはこれらの課題解決に向け、高度なAIモデルのエッジデバイス搭載を実現しリアルタイム処理を可能にするための軽量化技術の開発に取り組んだとのことだ。

  • AI技術のエッジデバイス搭載の重要性について語るOKIの前野氏

    AI技術のエッジデバイス搭載の重要性について語るOKIの前野氏

AIモデル軽量化技術「PCAS」とFPGA回路設計自動化技術「Zebra」を融合

OKIは、AIの認識速度を維持したままモデルの軽量化を行う独自技術「PCAS」を開発。同技術ではアテンション統計量に基づくチャネル削減手法を採用し、AIモデルを構成するニューロンの中から、演算処理において重要でないものを自動で特定し削除するという。

これにより、従来はAI技術者が感覚に基づく試行錯誤によって行っていた分析および軽量化を自動で行うことが可能となり、開発期間の短縮につながるとしている。

また性能評価実験では、PCASによる軽量化を行ったモデルでもオリジナルのAIモデルと同程度の認識精度となったといい、軽量化とトレードオフの関係にある認識精度についても維持可能だとする。

  • PCASによる軽量化の性能評価結果

    PCASによる軽量化の性能評価結果(提供:OKI)

またOKIの子会社であるOIDSは、2020年11月からフランスのミプソロジーと日本市場向けFPGA設計開発サービスにおける連携を開始している。

ミプソロジーは、AI推論の高パフォーマンス化を目的として2015年に設立された企業で、2017年には複雑なFPGAのロジック回路設計をプラグ&プレイで最適化するソリューション「Zebra」をリリースしている。

かねてより連携を行っていた両社は今般、OKIが開発したPCASとミプソロジーのZebraを組み合わせることで、AIモデルの軽量化からFPGAへの実装までの自動化を実現。これにより、性能を維持した上での開発期間の短期化やコスト削減が可能になるとする。

オープンソースのディープラーニングモデルである「YOLOv4」を評価対象とし、PCASによる軽量化レベル別で行われたAI画像処理におけるFPGA推論パフォーマンスの評価実験では、Zebraを単体で使用した場合のフレームレートが14fpsだったのに対し、PCASでの軽量化によって最大68fpsと、約4倍の処理速度を達成したとのことだ。

  • ZebraとPCASを用いた軽量化レベル別FPGA推論パフォーマンス評価実験の測定結果

    ZebraとPCASを用いた軽量化レベル別FPGA推論パフォーマンス評価実験の測定結果(出典:OKI)

また併せて、AIモデルの軽量化を任意のレベルで行うことが可能だとする。これにより、小型化に対する要求が大きい組み込み機器などのデバイスから、より高性能化が求められるサーバ向け用途など、顧客が要求するAIモデルの性能・サイズに応じたFPGAの選択が可能になるとしている。

2023年度のサービス受託を目指すOIDS

今回の会見では、新技術で軽量化したAI搭載デバイスによる画像認識デモンストレーションも行われた。デモの中では、従来のソフトウェアと新技術を用いたソフトウェアの比較が行われ、より滑らかな映像から瞬時に対象を認識する様子が見られた。担当者によると、同技術は、AIによる瞬時の処理が必要な車載領域についても活用が期待できるとする。

今後のサービス提供として、OIDSは、今回開発された新技術を国内市場向けFPGA設計開発サービスへの適用を見込んでおり、顧客が保有するAIプログラムの軽量化、およびFPGAへの実装自動化によって、高度AIを搭載したアプリケーションの消費電力低減や開発期間短縮に貢献するという。

OIDS代表取締役社長の滝澤家信氏は、「実際にビジネス化するには、そのための勉強がもう少し必要だ」と話し、まずは試験的なサービス運用に向け、顧客探しを行うとする。サービス提供の目標時期については「2023年度からのサービス受託を目指していく」とのことだった。

なお、今回発表された新技術については、2022年10月18日から21日まで開催されている「CEATEC 2022」のOIDSブースにて展示されているという。