また、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の分布についての検討が行われたところ、TLSを持つ症例では、腫瘍内のT細胞性免疫細胞(CD8陽性T細胞)だけではなく、B細胞性免疫細胞(B細胞や形質細胞)も高度に浸潤していることも判明したとする。
さらに、TLSの形成に関わる重要なケモカイン(免疫細胞を特定の組織へ遊走させるために必要な物質)の1種である「CXCL13」の遺伝子発現は、TLSを持つ症例で高いことが確認されたとするほか、腫瘍内のさまざまな腫瘍浸潤リンパ球数と相関し、卵巣がんの予後因子となることも明らかになったという。
加えて、がん微小環境においてCXCL13は、腫瘍形成初期段階のTLSにおいてはCD4陽性T細胞が発現し、成熟段階になると濾胞性樹状細胞優位に発現が移行することが判明したことから、特にCXCL13分泌CD4陽性T細胞は、TLSの初期形成において重要である可能性が示唆されたとしている。
実際に研究チームではマウス卵巣がんモデルに対して、CXCL13を腹腔内投与したところ、がん局所にTLSを誘導することができたとするほか、がん微小環境にCD8陽性T細胞が誘導され、担がんマウスの生存期間が延長することが確認されたとする。
なお、今回の研究成果から、卵巣がんにおいて、新たにTLSやB細胞性免疫とT細胞性免疫の協調的な抗腫瘍反応の重要性が解明されたことから、研究チームでは今後、さまざまながん腫横断的な検討とともに、CXCL13などのTLS誘導による新たながん治療戦略に応用されることが期待されるとしている。