京都大学(京大)は8月3日、卵巣がんにおける「がん微小環境」において、慢性的な免疫応答に関わる「三次リンパ様構造」(TLS)の形成メカニズムと臨床的意義の一端を明らかにしたことを発表した。

同成果は、京大大学院 医学研究科 婦人科学産科学の濱西潤三准教授、同・浮田真沙世特別病院助教、同・万代昌紀教授、同・医学研究科 免疫細胞生物学教室の吉富啓之准教授、同・上野英樹教授らの研究チームによるもの。詳細は、生物医学の基礎から臨床まであらゆる分野を扱うオープンアクセスジャーナル「JCI-Insight」に掲載された。

がん微小環境とは、腫瘍組織やその周囲に混在する正常組織や免疫細胞などのさまざまな細胞成分および非細胞成分から構成され、腫瘍の発生段階および進行に多くの影響を与えることが知られている。同環境へのT細胞(特にCD8陽性T細胞)の浸潤は、これまで多種類のがんにおいて、患者の予後因子となることが報告されているという。

一方、免疫細胞の1つのB細胞については、悪性腫瘍における機能的な役割が十分に解明されていないという。近年、慢性炎症に伴って、後天的に非リンパ組織に形成されるTLSが、複数のがん腫においてその存在が確認され注目されている。しかし、リンパ節などの二次リンパ組織と異なり、先天的に決まっている構造ではないTLSが、がん微小環境においてどのように誘導され、患者の生存にどのような影響を及ぼすのかは不明であったとする。

そこで研究チームは今回、卵巣がんの腫瘍標本を用いてTLSが存在するかをどうかの調査を実施。その結果、卵巣がんの約6割にTLSが認められたという。