2022年5月に新たな韓国の大統領として就任予定の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が大統領選挙で公約した「半導体超強国」の実現に向け、「大統領職引継ぎ委員会(引継ぎ委)」が韓国半導体産業の強化対策を講じる検討を始めたと多数の韓国メディアが報じている。同委員会は、半導体産業の経済的重要性と供給網の安全保障などを考慮し、半導体の「超格差」(他国からの圧倒的な優位性を意味する韓国の漢語表現)確保のための支援策を検討中だという。

引継ぎ委は、前大統領である文政権が、日本の半導体素材の輸出規制などに対し、サプライチェーンの安定化、ASMLやDuPontなどといった装置、素材メーカーの韓国への投資誘致、国家先端戦略産業特別法の制定などを推進してきたことを評価する一方で、韓国は企業の人材確保の難航、競争国に比べて低いインセンティブ(政府補助金)、システム半導体(メモリ以外のデバイス)競争力の脆弱性などの問題を抱えていると分析している。

また、「海外主要国は半導体を国家安保資産として管理している。企業間競争ではなく『企業+政府』連合間競争時代に突入した」とし、政府レベルの解決策として、以下のようなものを打ち出している。

  • 半導体受託生産(ファウンドリ)生態系支援の拡大
  • 半導体設計(ファブレス)企業の成長促進
  • 半導体工場増設規制の解消
  • インフラおよび研究開発関連インセンティブの拡大
  • 先端技術保護および戦略的半導体供給網協力体系の強化
  • 企業の人材難解消

さらに、教育分野として、以下のような取り組みも実施される見通しである。

  • 指定した大学の半導体専攻教授や学生定員の増員
  • AIやパワー半導体など特定分野の博士課程の専門人材充実
  • 半導体を専攻していない学生を対象に半導体専攻に転換する教育を実施
  • 素材・部品・装備(=製造装置と設備)に関する契約学科(授業料免除、奨学金支給、入学時に就職先内定)の拡大
  • システム半導体育成のための予算増大

このほか、新規生産ライン構築関連許認可問題を最小化するため、産業団地造成の際、これを担当する省庁を一元化する計画としているほか、米国をはじめとする主要国との半導体同盟を強化するための対策も模索しているという。

なお、尹次期韓国大統領は科学技術情報通信部長官(日本の大臣に相当)候補に国立ソウル大学のイ・ジョンホ半導体研究所長を指名したことで、半導体超強国に向けた動きに弾みがつくと韓国半導体関係者は歓迎しているという。