米中貿易戦争の激化で、TSMCに自社スマートフォン向け5nmプロセッサの製造委託を継続することができなくなったHuawei/HiSiliconは、中国最大のファウンドリであるSMICへの製造委託を画策しているが、SMICの先端プロセスはトップグループから3世代ほど遅れた状況であり、Huaweiが要求するような最先端製品の製造は難しい状況にある。

SMICは2019年末に14nmプロセスでの製造を始めたばかりで、次世代プロセスとしては12nmを開発中と言われている。すでにASMLに対し、EUV露光装置の発注は行っており、当初は2019年末にも納入される予定であったが、まだ実現されておらず、今後の入手のめども立っていないのが実情である。

EUVのような最先端露光装置の輸出にはオランダ政府の許可が必要であり、ASMLは「政府の承認を待っている段階だ」と説明しているが、実際は米国政府が中国勢に対して出荷しないようにオランダ政府に要請していると言われており、出荷できない状況に陥っているようだ。なお、ArFなどのDUV露光装置については中国への出荷は行われている。

このため今後、SMICがEUVリソグラフィを活用して7nm以降の微細プロセスへ移行するのは不可能な状況にある。ニコンやキヤノンは、すでにEUV露光装置の開発から撤退してしまっているため、ASMLの代わりとして日本勢の露光装置メーカーに頼ることもできない。

中国の3D NANDフラッシュメモリ専業のYMTCは、微細化をさけた3次元化デバイスを製造しているため、EUVリソグラフィは必要ないが、現在立ち上がりつつある複数の中国DRAMメーカーは、EUV露光装置を用いたDRAMの製造ができなければ、この先、競争力ある先端プロセス製品で勝負することが難しくなるだろう。