COOL Chips 23はオンラインでの開催に

新型コロナウイルスの感染拡大から、多くの学会や展示会は中止やオンライン開催に替わっているが、IEEEが主催するコンピュータの国際学会「COOL Chips 23」も人間が一か所に集まらないWeb上でのオンライン開催に変更された。

開催日時は4月15日(水)の9時~15時40分、4月16日(木)の9時~17時45分、4月17日(金)の9時~14時45分となっている。

例年は、2日目に立食パーティーが入っていたのだが、今回はそれが無くなった。その代わりといっては何であるが、IEEEや電子通信学会、情報処理学会の会員の参加費が昨年の44,000円から30,000円に値下げされた。この値段はEarly Registration(2020年は4月10日までの参加登録がEarly Registrationとなる)のケースである。なお、学生にはさらに大きな割引があるが、前記のどの学会にも入っていない人は参加費が高くなっている。

初日に行われる2件の招待講演

例年のように、初日には2件の招待講義が行なわれる。最初はジョージワシントン大学のGuru Prasadh Venkataramani教授がAI時代のハードウェアセキュリティについて90分の講義を行う。最近では危険なアタックとして、タイミングチャネルを使った攻撃が注目されてきているが、これに関して最新の研究結果を述べる予定だという。

2番目の講義はワシントン大学のLuiz Ceze教授が、ハードウェアごとに違いがあり、現在はAIモデルを移植するのに手間が掛かっているが、そのギャップをAIを使って埋めるという研究について90分の講義を行う。

基調講演は4件を予定

また今年の基調講演は、キオクシアの森氏による「How to Uplift the World with "Memory"」、MicrosoftのAaron Smith氏による「Reconfigurable Cloud Scale AI」、日本のAIベンチャーであるLeap Mindの徳永氏による「An Extremely Quantized Deep Neural Network Accelerator for Edge Devices」、ルネサス エレクトロニクス吉岡氏の「Disruptive Evolutions: Technology Challenges and Countermeasures」の計4件の講演が行なわれる予定である。

森氏の講演はNANDフラッシュが低コストの大容量メモリを可能とし世の中を変えてきたが、AIと5Gの時代にNANDとその他の新メモリデバイスがどうなっていくのかについての講演である。

また、不揮発性メモリについては、招待講演として産総研の広渕氏が不揮発性メモリの仮想化によるDRAMのようなアクセスを可能とする技術を発表する予定。そして、IntelのJane Jianping Xu氏とKaushik Balasubramanian氏がIntelのOptane不揮発性メモリについて講演する予定。

Leap Mindの徳永氏の基調講演はエッジデバイス用の低ビットの量子化の技術と超低電力の推論IPに関するもので、今、非常にホットな話題である。

ルネサスの吉岡氏の基調講演は、組み込み用プロセサはディスラプティブなテクノロジの出現に伴っていろいろな使われ方が出てくる。それに伴って出てくる各種の要求とそれをクリアするテクノロジについて講演する。

一般発表でも多くの注目技術の発表を予定

一般発表は、セッション6が「Application specific processors and system」で、チップレット間の接続を無線で行い接続を変更できるRISC-Vプロセサという面白そうな発表が含まれている。また、宇宙船コントロール用のプロセサ、マルチチャネルのビデオ伝送システムの論文も発表される。

セッション7の「Cool Software」では、引き戸のようにじわじわとファームウェアのアップデートを行うという方法でフラッシュメモリの面積、時間、コストを低減するというこれも面白そうな発表が行なわれる。また、精度可変のソフトウェアが素早く作れる「XwattPilot」というシステムの論文の発表も行なわれる。

セッション8の「Low Power Processors」では、近スレッショルド動作のCortex-M3プロセサと逆ボディーバイアスの適用で消費電力を低減したCortex-M4プロセサが発表される。前者はフィンランド、後者はドイツと国際色豊かな発表である。

セッション10は「Memory Systems」のセッションで、タイル化が可能なReRAMメモリと、STT-RAMを使うハイブリッドのキャッシュアーキテクチャが発表される。

そしてセッション11は「Accelerators」のセッションで、粗粒度の再構成可能なアレイと教師なし学習で異常検出を行うRNNが発表される。