2020年1月15日~17日にかけて東京ビッグサイトにて開催された「第12回 オートモーティブテクノロジー展(オートモーティブワールド2020)」において、テクトロニクス社は差動プローブと電流プローブだけで、車載Ethernetの信号観測を可能とするソリューションの紹介を行っていた。

車載Ethernetは、ツイスト・ペア・ケーブルによる全二重通信リンク、PAM3シグナリングによる同時送受信機能を採用しているため、トラフィックの表示確認、シグナルインテグリティのテストは複雑なものとなっていた。特に、同一のリンク上をマスタとスレーブのデバイスが同時に通信するため、信号は互いに重なり、シグナル・インテグリティ・テストやプロトコルテストのためにオシロスコープで信号を分離することができなかった。

そのため、従来は車載Ethernetケーブルの間に方向性結合器を直列に挿入し、信号を分離、テストする手法などが用いられてきた。しかし、この方法は挿入損失とリターン損失が発生するため、信号が劣化しエラーが発生してもその原因がシステムにあるのか、追加されたハードウェアに起因するのかが不透明となり、正確なテストにならないという課題があった。

同社は、独自開発のソフトウェア・アルゴリズムと差動プローブ、電流プローブを組み合わせることで、観測した電圧波形と電流波形から全二重の信号を分離することで、正確な信号の観測を可能にしたという。これにより、挿入損失、リターン損失がなくなるほか、方向性結合器によるディエンベッドの影響もなくマスタとスレーブの信号を表示できるようになるとする。

実際に、同社ブースのデモでは同社の5シリーズ/6シリーズ MSOオシロスコープを利用して波形を表示。アイ・ダイヤグラムも方向性結合器を用いた場合に比べてアイの開口部が広くとれている様子を見ることができた。

  • テクトロニクス
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  • オシロスコープと差動プローブ、電流プローブという一般的な測定スタイルで車載Ethernetの信号を観測することが可能となった(要専用ソフトウェア)。デモでもしっかりとアイの開口部が広くとれている様子が見て取れた。このポイントはECUが送受信する信号をリアルタイムで見ることができるため、走行中の信号品質なども測定できるようになるという点にある

なお、同手法は、すでにEthernetベースの車載ネットワークの活用を推進するOPEN Allianceもスタンダードとして採用してもらうべく提案を行っている最中だという。