アナログ半導体ファウンドリ大手のタワージャズは1月23日(現地時間)、Cadence Design Systemsならびにウクライナ国立工科大学のイゴル・スィコルスキー記念キエフ工科大学(National Technical University of Ukraine "Igor Sikorsky Kiev Polytechnic Institute":KPI)と共同で、ウクライナの首都キエフにアナログIC設計研究所(Analog Design Lab)を開設したと発表した。1月30日にTowerJazz、Cadence、KPIの関係者がKPIキャンパスに集いグランドオープニングセレモニーを開催するという。

  • Analog Design Lab

同研究所では、キエフ工科大でエレクトロニクスを専攻する学部および大学院生、講師陣にアナログ半導体技術の専門知識と先端の設計ツールを提供し、次世代ポストシリコン時代のアナログIC設計人材の育成を目指すとしており、参加する学生には、Cadenceの設計ツールやTowerJazzの施設を利用して設計から製造までのすべてのプロセスの経験ができるような教育プログラムが提供されるという。

TowerJazzのLSIデザインセンター&デザインイネーブルメント担当副社長であるOri Galzur氏は「TowerJazz、Cadence、KPI当局の協業により、KPIの学生が、Cadenceの先端ソフトウェアツールやTowerJazzのアナログPDK(プロセスデザインキット)と製造プロセスにアクセスし精通することにより、次世代のアナログ設計者を効率的に育成できるようになる」と述べている。

世界的にアナログIC設計技術者は不足している一方、アナログIC技術者の育成には時間がかかるため、TowerJazzとCadenceは7部門と3つの部門間研究所から構成されるエレクトロニクス学科に約1500名の学生を抱えるキエフ工科大に目をつけ、将来のアナログIC設計人材の新たな供給源とする狙いがあるようだ。

イスラエルの大学ともアナログプラットフォーム開発で協業

またTowerJazzは、2019年12月にも、イスラエルの国立技術大学であるテクニオン・イスラエル工科大学(Technion-Israel Institute of Technology)と共同で、同社の0.18μm CMOSプラットフォームで特許取得済みのY-Flash NVMをベースに、アナログメモリストレージとコンピューティング機能を特徴とするメモリスタデバイスを利用したアナログプラットフォームを開発したことを発表している。

同技術は、既存のデジタルベースのソリューションと比較して、桁違いの低消費電力を可能にし、最先端ではないテクノロジーノードに実装しても高い費用対効果を提供できるとするほか、IoTエッジデバイスや指紋認証、顔認証および音声認識アプリケーションなどのセンサに適した超低電力人工知能(AI)コアの開発が可能になるという。同成果の詳細は「Nature Electronics」に掲載された

旧パナソニック北陸3工場の主導権は維持

パナソニックは2019年11月、パナソニック セミコンダクターソリューションズ(PSCS)を中心に運営してきた半導体事業を、台湾Winbond Electronics傘下のNuvoton Technologyに2020年6月1日付に譲渡することを発表したが、譲渡事業の中にはTowerJazzとの合弁事業であるパナソニック・タワージャズ セミコンダクター(TPSCo)のパナソニック持ち分が含まれている。

TPSCoは、旧パナソニック半導体事業の中核を担ってきた北陸3工場(魚津、砺波、新井)をTowerJazzのファウンドリ事業として活用してきた。このうち、新井工場(現 新潟県妙高市)と砺波工場(富山県砺波市)は200mm工場だが、魚津工場(富山県魚津市)は、TowerJazzにとって唯一の300mm工場という位置づけとなっており、アナログICのほか、CMOS ICやCMOSイメージセンサも製造し、TowerJazzの主力製造拠点となっている(写真)。

  • 新井工場

    パナソニック・タワージャズ セミコンダクター(TPSCo)の新井工場 (編集部撮影)

TowerJazzによると、同社はTPSCoの株式の51%を所有しており、残りのパナソニックの所有分である49%の株式が台湾企業に売却されても、TowerJazzはTPSCoの株式を売却することはなく、TPSCoの51%の所有権と取締役会の支配権を維持し、従来通り主導権を持ち日本での半導体製造を続けるとしている。この結果、TPSCoは、6月以降、TowerJazzとNuvoton Technologyの合弁企業となり、社名を変える見込みである。