キーサイト・テクノロジーは2月23日、PXIeモジュール型計測器としてオシロスコープの機能を実現するものや、FPGAを内蔵したデジタイザ/任意波形発生器など10モデルを追加したと発表した。

PXIeオシロスコープ「M9241A/M9242A/M9243A」は、同社のベンチトップ型オシロスコープ「InfiniVision 3000T Xシリーズ」の機能をPXIeモジュールに凝縮したモデルで、ソフトウェアも共通であるほか、ハードウェア性能も同等で、最大1GHz帯域(モデルは200MHz/500MHz/1GHzの3種類)、5GSps/1μs以下の再補足時間、100万回の波形更新速度といった特徴も受け継いでいるが、MSO(ミクスド・シグナル・オシロスコープ)ではなくDSO(デジタル・シグナル・オシロスコープ)ベースであるため、ロジックチャネルがないほか、ユーザーインタフェースは2chまで、といった違いがある。ただし、シャーシに最大17モジュールまで搭載可能なため、34chまで同時にトリガをかけることができるといったPXIeモジュールならではの使い方ができるので、多チャンネルが必要といった用途にはマッチするほか、オシロスコープとデジタイザを組み合わせて、オシロスコープのトリガタイミングでデジタイザとの連携といったことも手軽に行えるようになる。

今回、最大となる6モデルが提供される任意波形発生器(AWG)/デジタイザの「M3000Aシリーズ」は、先端ワイヤレスや宇宙防衛分野の研究開発向け製品と位置づけられているが、最大の特徴はXilinxのFPGA「Kintex-7」を搭載したこと。これまでもFPGAを搭載したモジュールそのものは存在していたが、今回の提供では、新たにGUIを採用したユーザープログラマブル環境として、グラフィカルFPGAデザイン・ソフトウェア「M3602A」も用意。FPGAでフィルタ処理やアルゴリズム処理などを手軽に変更することなどが可能となる。また、M3602AはVelilog/VHDLによるコードのほか、VivadoやISE、MATLAB/Simulinkなどで生成されたコードのインポートにも対応しており、外部からIPを調達してきて、それを利用する、といった使い方も可能となっている。

そして10モデル目となるのが5Gや宇宙防衛分野での研究開発に向けた広帯域IQ任意波形発生器(AWG)「M9336A」。こちらは1チャネルあたり最大540MHzの帯域に対応した16ビット分解能の5G開発向けIQ AWGで、これを活用することで、従来の研究開発で必要となっていた1000万円クラスの信号発生用DAコンバータを不要にすることが可能となる。

同社によると現在、ソリューションビジネスを加速することを目標に掲げており、今回の10モデルは高まる多チャンネル開発ニーズに沿うものであるが、反面、開発の難易度などは高まっており、キーサイトとしても、FPGAのアルゴリズムIPなどの受託開発を積極的に受け入れることで、顧客の開発のサポートを進めていきたいとコメントしている。

なお、価格はいずれも税別で、FPGA搭載デジタイザが80万円から、FPGA搭載AWGが約72万円から、オシロスコープが約70万円から、IQ AWGが約216万円から(1GHz、3チャネル)となっているほか、オプションとしてオシロスコープの使用時にアクティブプローブの電源供給を可能とするプローブ電源モジュール「M9240A」(約18万円)、グラフィカルFPGAデザインソフトウェア「M3602A」(約37万円)なども用意されている。

2016年12月に発表された5スロットのPXIeシャーシ「M9005A」にAWG・デジタイザコンボの「M3300A」(一番右)と、オシロスコープ「M9243A」(1GHz、5GSps)を2枚、その間にアクティブプローブ用電源モジュール「M9240A」を搭載した状態。M3300Aは試作機であるため白いが、製品版は黒ベースのものになるとのこと。また、シャーシの手前に置いてあるのが、アクティブプローブ用のパネルで、これをM9240Aに挿すことで、アクティブプローブへの電源供給が可能になる