東京大学(東大)は8月8日、ヒトとイヌの絆が強いほど、あくびがうつりやすいことを明らかにしたと発表した。

同成果は日本学術振興会外国人特別研究員のテレサ・ロメロ研究員(現:東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻特任研究員)、同研究科博士課程・日本学術振興会特別研究員の今野晃嗣 研究員(現:京都大学野生動物研究センター・日本学術振興会特別研究員PD)、東大大学院総合文化研究科広域科学専攻の長谷川壽一 教授らによるもの。詳細は8月8日(米国時間)に「PLOS ONE」に掲載された。

ヒトでは、見知らぬヒトのあくびよりも親しいヒトのあくびの方がうつりやすいことが知られているが、長年、人間と共に生活をしてきたイヌでも同じような現象がみられるのかについては、これまで十分な検証は行われてこなかったという。

伝染性のあくびは、他者のあくびを見たり聞いたりした後に、その観察者にもあくびが生じることを指し、他者の感情を理解し解釈する能力に関与すると考えられてきたことから、ヒトや動物の共感性を研究する科学者たちが研究を行ってきており、これまでの研究から、ヒト、チンパンジー、ボノボ、ヒヒを含む霊長類では、他者のあくびが伝染することが示されてきた。

近年、その研究対象に人間とともに暮らすイヌがヒトとの異種間の共感能力を調べるためのモデルとして最適な種として取り上げられるようになってきたが、従来の実験結果は一致せず、イヌにおいて伝染性のあくびが生じるのか生じないのか、その能力は共感性に関与するのかそれとも単なるストレス反応にすぎないのかという点については、十分な結論を導き出すことができていなかった。

そこで、今回研究グループは、一般家庭で暮らすイヌ25匹とその飼い主を対象に実験を行い、伝染性のあくびがイヌにおいてもみられること、さらに、その行動が単なる不安やストレス反応ではなく(イヌは不安を感じたときにあくびをする傾向がある)、共感に関連した行動であることを明らかにしたという。

この実験では、飼い主からイヌにうつるあくびがイヌの不安やストレスから生じた可能性を排除した状態でイヌに心拍計を装着し、飼い主と見知らぬヒトがそれぞれあくびの動作を演じて見せ、イヌにどのような生理学的変化がみられるかという点についても調査。その結果、人があくびの動作を見せることによって、イヌのあくびが誘発されることが改めて確認されたほか、見知らぬヒトのあくびを見たときに比べて、飼い主のあくびを見たときに、より多くの伝染性のあくびが生じることが確認されたという。

これらの結果について研究グループでは、イヌとヒトの感情的な結びつきが伝染性のあくびの生起に重要な役割を果たしていることを示唆すると説明するほか、心拍計から得られたデータから、飼い主のあくびを見ている場合と見知らぬヒトのあくびを見ている場合とでは、イヌの心拍変動の数値に差はなく、伝染性のあくびがイヌの覚醒状態の差よりも、イヌとヒトの共感レベルの差によって影響されることが示唆されたとしている。

なお、研究グループでは、伝染性のあくびがイヌの共感能力に関与しているのであれば、他者の感情を適切に処理する能力が求められる作業犬としての適性を判断する際に、人からイヌにうつるあくびが役に立つ可能性があるとしており、今後、イヌの共感能力に犬種差や個体差があるのかどうかという問題に取り組んでいく予定だとしている。

あくびをするイヌ (出所:東京大学 Webサイト)