時間や場所などを選択し、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができる「派遣」ですが、一方で「安定した働き方ではないのではないか」、「キャリアアップにつなげられるのか」といった不安を持つ人も少なくありません。

そんな派遣スタッフの懸念や不安に真摯に向き合い、誰もが自分らしく働ける社会をつくるために尽力するのが「テンプスタッフ」などを運営するパーソルグループです。同社は2023年より「スタッフウェルビーイング委員会」を発足。さまざまな施策を通して派遣スタッフのウェルビーイングに取り組んできました。

今回はスタッフウェルビーイング委員会に所属する山崎涼子氏、土本晃世氏に取材を実施。委員会の活動内容や活動の成果、派遣という働き方に対する想いなどについて伺いました。

  • グループ人事本部 人事企画部部長 山崎涼子氏(写真左) 2008年、旧インテリジェンスに新卒で入社。一貫して人事畑でキャリアを積む。その後、テンプホールディングスに移籍し、ホールディングスの人事全般に関わる。2020年より現職。/グループ人事本部 人事企画部エキスパート 土本晃世氏(写真右) 新卒で総合電機メーカーに入社し、マーケティングや営業で経験を積む。その後、人事系コンサルティング会社、ITベンチャーを経て2023年7月にパーソルホールディングス入社。現在は人材に関する情報開示業務に従事。

「派遣」という働き方に対するパーソルの想い

――「派遣」は自分のライフスタイルに合わせて仕事を選べるのが特徴です。テンプスタッフなどさまざまな派遣サービスを展開されているパーソルホールディングスとして、「派遣」という働き方に対する想いを教えてください。

山崎:
パーソルは「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンを掲げています。このビジョンには、一人ひとりが働くことを通して幸せになってほしいという想いが込められており、そのためには「自分らしくはたらく」ことが大事だと考えています。「派遣」という働き方は、この自分らしく働くための選択肢の1つです。

派遣のメリットは自分に合った就業の仕方や就業内容を選ぶことができる点で柔軟であること。そしてそれ故にサスティナブルであることです。未経験の領域へのチャレンジや、スキルアップ、家庭との両立など、多様なキャリアを実現できるようにするために、サービス提供しています。

――そんな派遣スタッフの支援策の1つである「スタッフウェルビーイング委員会」について教えてください。

山崎:
スタッフウェルビーイング委員会は前身となる活動を2022年にスタートし、2023年から正式に委員会として発足しました。当社はこれまでにも人的資本経営の考え方に沿った取り組みを行ってきていましたが、それを人的資本開示のフレームに従って可視化したり整理したりということはできていませんでした。そこでまずは当社の従業員に関する取り組みの可視化と開示を行ってきました。

従業員のみならず、派遣スタッフも当社にとっての重要な資産ととらえ、スタッフウェルビーイング委員会を発足させました。

  • スタッフウェルビーイング委員会 構成員

山崎:
もちろん、従来から通常のビジネスの中でも派遣スタッフのウェルビーイングを高める取り組みは行ってきました。ただ、これまではそうした施策を可視化したり整理したりはしてこなかったのです。パーソルグループでは複数のビジネスユニットが、派遣ビジネスを運営しています。スタッフウェルビーイング委員会というグループ横断の組織をつくることで、ビジネスユニットを超えてナレッジの共有ができるのではないかとも考えました。

――近年では人的資本の開示が義務付けられるなど、人的資本に対する注目も高まっています。

山崎:
人的資本の開示義務や社会の変化だけが理由で取り組もうと思ったわけではなく、今まで暗黙知だった取り組みをしっかり整理することが社員や派遣スタッフのWell-beingにとっていいことにつながると考えたのが一番の理由です。もちろん人的資本に対する注目の高まりなども、いい形で追い風になってほしいとは思っています。

スタッフウェルビーイング委員会が取り組む「はたらく機会の創出」と「ファンづくり」

――委員会の活動内容について教えてください。

土本:
まず「はたらく機会の創出」です。派遣スタッフも働く先となる企業も多様なので、当社としてはできるだけうまく仕事と人をマッチングさせていかなければいけません。このマッチングですが、当社では独自の呼称として「フィッティング」と表現しています。今の時代、機械的に職務経歴と仕事をマッチングするのは簡単なのですが、そこから先のプラスアルファの情報がとても重要なんです。たとえば派遣スタッフの方の働くことに対する志向性やスタンスが、就業先企業の風土、カルチャーに馴染むことができるか。こうしたプラスアルファの情報は必ずしも十分に言語化されているわけではありません。その結果、せっかく派遣スタッフと企業をマッチングしても、うまくいかないケースもあるのです。

そこで当社では社員が派遣スタッフとクライアント企業の間でサポートし、両方から情報を引き出しながらプラスアルファの情報を含めて「フィッティング」します。本当にその派遣スタッフがその企業に入って自分らしく活躍できるのか、企業にも満足していただけるのかをしっかりと考えながらフィッティングを行うわけです。

次に「教育と能力開発の支援」です。当社では無料で派遣スタッフに受けていただける学習コンテンツを提供したり、かなり専門的な研修も提供したりしています。また、企業が指定する資格があれば、それを取得するサポートとして費用の補助なども行っています。

――たとえばどのような資格や研修がありますか。

土本:
パソコン関係や語学系、あとはRPA(業務を自動化できるシステム)やAIなどの最新のテクノロジーを学べる研修なども提供しています。こうした研修を通して職種変更に挑戦される方もいらっしゃいます。たとえばずっと事務系の仕事をされていたとある派遣スタッフは、パーソルに入ったことをきっかけにRPAの研修を受けて技術を身につけられました。通常の研修会社ですとトレーニングを受けた後の仕事探しは自分で行わなければならないのですが、パーソルですと研修だけでなくフィッティングまで一貫したケアが受けられます。そこがとても心強いというお言葉をいただいています。

――派遣スタッフに対してここまで手厚くサポートしている派遣会社は珍しいですね。

土本:
ほかにも「パーソルでよかった」と思っていただけるような「ファンづくり」にも取り組んでいます。具体的には派遣スタッフが安心して働いていただける環境のご提供です。たとえばヘルスケアについては無料でご家族も含めドクターに相談できる仕組みを整えていますし、技術系スタッフのメンタルケアでは心理療法士などの専門家が相談に乗るサポートを行っています。

また、派遣スタッフの方にも短時間勤務や週に数日だけ働くなどのフレキシブルワークをサポートする「フレキシブルキャリア」という制度をご提供したりしています。このフレキシブルキャリアは就業者が昨年に比べて2倍に増えています。

フレキシブルキャリア ホームページ(一部)

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――派遣会社というと「仕事探しのサポート」というイメージがありますが、パーソルではそれ以上のところまで支援しているのですね。

土本:
はい。仕事を探してそれで終わり、ではありません。というのも派遣スタッフが大変なのは就業直後だからです。仕事や環境に慣れるまでは不安もありますし、重点的にケアが必要です。そこで当社では派遣スタッフ向けの「テンプアプリ」というアプリを用意しています。アプリで専門スタッフや営業担当へのご連絡、チャットボットを活用した相談などが可能になっています。このテンプアプリの利用率は62%(2024年3月現在)と高く、当社としても手応えを感じております。

土本:
また、派遣スタッフが自身の職務経験から仕事を探せる「ジョブチェキ」というポータルサイトを用意しています。ジョブチェキでは、AIを活用して派遣スタッフのご経歴から「おそらくこういった職務能力をお持ちだろう」と予測し、スキルの候補を表示する機能があります。自分自身の能力をすべて言語化できるわけではありませんので、気付きを促すことができているように感じます。

ジョブチェキ ホームページ(一部)

ジョブチェキ ホームページ(一部)※画像クリックで詳細へ

山崎:
テンプアプリやジョブチェキのようにテクノロジーを活用する一方で、テクノロジーに振り切っていないのもパーソルの特徴です。すべてをテクノロジーに頼ってしまうと、細やかなフィッティングはできません。テクノロジーと同時に、しっかりと人によるケアも行っています。

「派遣」に対するネガティブなイメージや不安を多様なサポートで払拭

――派遣という働き方は自由度が高い一方で、安定していないとかキャリアにつながらないのではといったイメージもあります。この点についてスタッフウェルビーイング委員会はどのように取り組んでいるのでしょうか。

土本:
まず、派遣スタッフの方が気軽に相談できるキャリアアドバイザーとのコネクションを用意しています。その中でご自身のキャリアや職務能力をどんな方向に進めていけばいいのかなどご相談いただけますし、さらに能力アップにつながるような研修や講座の紹介も行っています。

もう1つが「ファンタブル」というサービスです。たとえば事務系の仕事がしたいと思っていても、正社員として雇用される機会は限定的です。そこでまずは当社にご登録いただき、派遣スタッフとしてクライアント企業で就業しつつ、研修も一緒に受けていただきます。いわば新入社員研修のようなイメージです。そうしていくうちにクライアント企業から正社員として雇用されるという就業の仕方をご提供するサービスがファンタブルです。

ファンタブル ホームページ(一部)

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――正社員につながる可能性のある仕組みも提供されているのですね。

土本:
はい。とはいえ、全員が正社員を希望されるわけではありません。以前は派遣スタッフというと「正社員になれなかった人」という印象を持たれがちでした。しかし、実際には正社員を希望される方もいれば、派遣という形でフレキシブルに働きたい方もいらっしゃいます。また、一口に派遣スタッフといっても、家庭の事情で短期間だけ働きたい方や、3年ごとに職場を変えてスキルアップを図りたい方などさまざまです。かつては正社員として働いていても、ライフステージの変化で派遣スタッフを希望される方もいらっしゃるでしょう。重要なのはそこに「選択肢」があることなのです。

――そのほかにスタッフウェルビーイング委員会として取り組んでいることを教えてください。

土本:
やはり自分の仕事がどう評価されているのかを知ることはモチベーション高く働くために重要です。そこでクライアント企業から派遣スタッフの行動を評価してもらい、その内容を派遣スタッフ本人にフィードバックして能力開発に生かしてもらっています。現在はトライアルで取り組んでいますが、今後は全国に展開する予定です。

人的資本の取り組みが財務価値に与える影響を可視化

――スタッフウェルビーイング委員会の成果について教えてください。

山崎:
よかったことは3つあります。1つは人的資本に関する具体的な施策が可視化できたこと。それにより私たちがやってきたことが明らかになっただけでなく、まだ伸びしろを持つ箇所も見つけられました。もう1つは、その可視化した情報が財務価値にどのようにつながっているのかをインパクトパスという考え方で検証できたことです。昨年立てた仮説を今年検証した結果、人的資本の取り組みと財務価値に一定のつながりがあることがわかりました。3つ目は組織間のナレッジ共有が進んだことです。ほかのビジネスユニットの施策で良いものを取り入れていくことで、グループ全体でサービスの底上げができると考えています。

――最後に今後の展望について教えてください。

山崎:
当社は「自分らしい働き方」をあらゆる人が実現できる社会を目指しています。そのために派遣という働き方が1つの選択肢になるということをポジティブに発信していきたいと思います。それにより社会の考え方もアップデートされ、それが派遣スタッフの皆さんにも良い形で波及されるようなサイクルを作っていきたいですね。

土本:
まだまだできることはたくさんあると思っています。スタッフウェルビーイング委員会をきっかけにパーソルグループがより1つにまとまり、中長期的な目線で新しい取り組みにも挑戦していければと思います。

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