プロダクトに対する責任を持ち、成長へと導いていくプロダクトマネージャー(PdM)。新たな価値を創出したりプロダクトや社会の課題を解決したりと、重要な役割を担っています。

世の中に変化をもたらし最前線で活躍しているPdMは、どのような思考や実践力を持っているのでしょうか。多彩なバックグラウンドを持つPdMから気づきを得る場として開催されたイベントが、リクルート主催の「PdM Days」。今回は、豪華な登壇者が集まる会場に潜入し、セッションの様子を探ってきました。

  • 「PdM Days」

PdM Daysとは?

リクルートが開催したカンファレンスイベント。DAY1~DAY3はオンラインで、最終日となるDAY4(2024年2月17日(土)開催)は現地会場とオンラインによる生配信で実施されました。

  • 当日、会場は大盛況!

「枠を超えて、未来のまんなかへ」をテーマに開催された本イベント。プロダクトを通じて社会課題の解決に取り組む人、組織に変革をもたらす人、未来の新たな当たり前を浸透させようと試みる人など、多彩なバックグラウンドを持つ方々が登壇しました。

DAY4ではFigma, Inc.の山下祐樹さんをはじめ、プロダクト筋トレコミュニティの小城久美子さん、有限会社 znug designの根津孝太さん、Takramの佐々木康裕さんなど11人の方々が登場。常識にとらわれない発想法や、プロダクトを成長に導いた実践事例、未来に対する向き合い方などを語り合いました。

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DAY1~DAY3の様子の記事はこちら

プロダクトを成長させる鍵は?
「魔法のような製品をいかにして生み出すか」

最初のプログラムはFigma, Inc. Chief Product Officerとしてアメリカで活躍する山下祐樹さんによる講演。「魔法のような製品をいかにして生み出すか」をテーマに、ご自身の経験から得たPdMのヒントを語りました。

YouTubeやUber、Figmaなど革新的なプロダクトに携わってきた山下さん。「魔法のようなユーザー体験を届けること」がプロダクトを成長させる鍵だと感じているそう。
そのために山下さんが心がけたのが、「自分やチームメンバーの理屈を超えた情熱を引き出すこと」と、「いつものルーティンを作らないこと」。前者はやる気に満ちたリソースの確保に、後者は思考に余裕を生み出すために役立つといいます。
また、ビジネス指標にとらわれすぎて、プロダクトに接したユーザーの満足度が後回しにならないよう、OKR(※)の廃止も実践していました。PdM自身が常識にとらわれない働き方をすることで、ユーザーが満足する魔法のようなプロダクトが生まれるのです。

※「Objectives and Key Results」の略称。目的と主要な結果を設定することで、目指すべきゴールや達成度の進捗を明確化すること。

講演後は、株式会社リクルート プロダクトデザイン室の磯貝直紀さんからいくつか質問が。例えば、「プロダクトの成功と失敗の分かれ道となるファクターはあるか」という問いに対しては、「チームリーダーが情熱を持っているかどうか」だと答えました。 山下さんがこれまで携わった事業でも、成功したプロダクトについてはユーザーの満足度をビジネス指標以上に気にしているリーダーが必ずいたそうです。「ユーザーの喜びや不満に対して何か反応しなければ!」と情熱を持つことが、PdMに求められる要素のひとつだといえるでしょう。

最後に山下さんは「プロダクト作りは大変ですが、感じる喜びも大きいです。ユーザーが喜んでいる姿を見ることは、キャリアの中でも常にハイライトになります。それを求めていれば、日本からも魔法のようなプロダクトがもっともっと生まれてくると思うので期待しています」と参加者たちにメッセージを送りました。

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ロードマップは創造と破壊の連続
「ユーザー課題に向き合うプロダクトマネージャーたち」

続いてのセッションには株式会社コドモン執行役員の彦坂春森さん、SHE株式会社シード事業部ユニット長の松尾真里さんが登壇。ユーザー課題に向き合って新たなプロダクトを生み出した2人が、ロードマップの組み方や、課題の優先順位の考え方などを語りました。

プロダクトのロードマップを考える際、両者に共通していたポイントが「ロードマップが行き詰まったら潔く壊すこと」。このまま進んでも売上が伸びない、ユーザーの課題を解決できないなどの問題に気づいたときは、事前に作ったロードマップに固執しないようにしているそうです。方向性をガラッと変えたり根本的な見直しを行ったりして、新たなロードマップを作り、プロダクトを成長させています。

さらに、ユーザー課題に対する優先順位の決め方を問われると、彦坂さんは「プロダクトに期待し続けてもらうためにはどれから取り組めばいいかを考える」、松尾さんは「声の大きな人の意見だけに耳を傾けないよう、客観的に判断する」と回答。たとえ小さな課題だったとしても、それを解決することでユーザーが満足できるのならば取り組む意味があると考えているようです。

また、2人が重視している「プロダクトに意志を乗せる」ための方法も話題に。彦坂さんは「ひとつの領域を深く見て、これは社内で自分がいちばん詳しい、と各PdMがいえるようにする」、松尾さんは「解像度を高めることが意志の強さにつながる。現場でしかわからないことが必ずあるので現場の意志も尊重しあう」と答えました。

セッションの最後に彦坂さんは、「今日参加しているPdMは各社でそれぞれ大変なことがたくさんあると思います。だからこそ知見をシェアして助け合っていきたいと思っていて、がんばった痕跡をみんなで世に発信していきたいです。お互いにがんばりましょう」と参加者を鼓舞。松尾さんは「PdMに正解はありません。プロダクトや会社によって判断の軸は異なりますが、その中でも情報収集をして最適解を見つける力が、PdMには求められると思います」とメッセージを送りました。

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社内の文化を尊重した組織作り
「多彩な組織におけるプロダクトマネージャーのあり方を考える」

「多彩な組織におけるプロダクトマネージャーのあり方を考える」をテーマにしたセッションには、BCG Xプリンシパル – プロダクトマネジメントの伊藤嘉英さん、株式会社Muture Product Managerの兼原佑汰さん、プロダクト筋トレコミュニティ主催者の小城久美子さんが登場しました。

PdMの知見がなかった企業をサポートして人材を育成したり、大企業に新たなPdM組織を作ったりしてきた伊藤さんと兼原さん。「プロダクト組織のない会社にどうPdMをインストールするか」というテーマでは実践例を交えて議論しました。

兼原さんは「企業のカルチャーを大事にしながら社内を変えていく」ことが大事だと回答します。経験から新しいものをいきなり導入しようとすると失敗してしまう、と知った兼原さん。社内に根付いている文化に寄り添ったうえで、現場がやりたいことと現実とのギャップを埋められるような提案をするよう心がけているそうです。

一方伊藤さんは、「社内に出島を作る感覚を持って組織作りに取り組んでいる」と回答。ほかの部署とは少し離れた位置づけで、情熱を持ってプロダクト作りをするための土壌を育んでいます。ときには外部から積極的に人材や手法を投入することも。人事制度や報酬制度も含め、既存の枠組みにとらわれない新たなチームを組んでいると紹介しました。

「同じ考えを持つ人のコミュニティにはどのような役割があるか」というテーマには、小城さんがプロダクト筋トレコミュニティの事例をもとに回答します。「PdMのスキルは社内である程度身につくものの、それだけでは学べない部分もある」と考えている小城さん。クローズドな場で他者の事例を知ったり自分の経験を振り返って発信したりするうちに学びを得られる、と語りました。

最後に伊藤さんは「さまざまな企業にPdMが入っていくことで日本全体がよくなっていくと思います」と一言。小城さんは「プロダクトを生み出して幸せを創っていこうとしている人はみんな仲間です」、兼原さんは「近しいことに取り組んでいる人や、同じ悩みを抱えている人がいたらぜひ語り合いましょう」と、PdM同士の交流を促していました。

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課題との出会いはどこから?
「社会課題をプロダクトで解決する起業家たち」

続いては、コーチングのマッチングサービスを提供している株式会社mento代表取締役の木村憲仁さん、産業廃棄物業界で廃車アプリなどを手がけているファンファーレ株式会社代表取締役の近藤志人さんが登壇したセッション。社会課題への向き合い方やプロダクトへのつなげ方などを議論しました。

社会課題に出会った経緯や起業までの道のりを尋ねられると、2人からは対照的な回答が。木村さんは自身の原体験をもとに「このプロダクトをもっと世に広めたい」と取り組み始めたそうです。最初は別のテーマで起業したものの、モチベーション維持に苦戦していたという木村さん。そこで人から勧められたコーチングを受講したところ、自分が本当にやりたかったことが見えてきたといいます。

一方、近藤さんは「日本全体をよりよくするために解決すべき社会課題とは何か」をロジカルに分析してテーマを決めたそうです。産業廃棄物業界は公共性が高いものの、なかなか世間の目が向いていないと気づいた近藤さん。当事者意識を持つために全国の産業廃棄物関連企業に足を運び、解決すべき課題を見つけていきました。

プロダクトの立ち上げで気をつけていることを尋ねられると、「プロダクトをなるべく創らないこと」と共通の回答が。木村さんはまずは自分の手が届く人にサービスを届けようと、ひとりでプロコーチの紹介を始めたそうです。だんだんとスケールアップし、手が足りないと感じた部分を自動化するなど、段階的にプロダクトを作りあげていました。

近藤さんも最初はプロダクトを創らず、顧客を納得させるための簡単なデモのみを用意。ニーズの高さを確認してからエンジニアを雇い、少しずつプログラムを完成させていきました。「サービスの価値が本質。そこさえつかめればあとは簡易的なやり方でもいい」と考えている近藤さん。だからこそ最初はものづくりではなく、価値の創造に注力しているといいます。

質疑応答で「採用したいPdMは?」と尋ねられると、木村さんからは「自分をPdMだと思っていない人」という意外な答えが。起業ではPdMが必要になる段階はかなり先だそうで、「職域を定めすぎずに動くことが大切」だと伝えました。

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課題意識と課題解決が不可欠
「未来を創る想像力と実現力」

「未来を創る想像力と実現力」と題したセッションには、有限会社znug designのクリエイティブコミュニケーターでありデザイナーでもある根津孝太さんと、株式会社令和トラベル プロダクトマネージャーの宮田大督さんが登壇。「明日の当たり前」となるプロダクトを生み出すための要素を語りました。

PdMに必要な想像力の原点を尋ねられると、根津さんは「問題意識の蓄積」だと回答。リサーチを行うほか、「もっとよくできるのでは」という視点で世の中を見ると解像度が上がるそうです。

また宮田さんの考える想像力の原点は、「お客様や関係者と向き合って取り入れた遺伝子と、自分のビジョンとのバランスを保つこと」。他者の困りごとや考えに寄り添いながらも、「世の中をなんとしても変えたい」という意志を強く持っていれば、課題をアイデアへと昇華できるそうです。

続いて話題になったのは、未来を形にするための実現力について。議論が進むにつれ、「空中戦と地上戦をつなぐ」というキーワードが登場しました。空中にあるビジョンだけで戦っていると、現実という地上から飛んでくる弾に撃たれてしまうこともある、と語る2人。理想と現実のギャップを俯瞰して、チーム内でコミュニケーションをとりながら同じ方向へ進んでいくことが大切だと結論づけました。

最後のトークテーマは「未来を創るとはどういうことか」。根津さんは「クリエイティブな場が未来を創っていく」と答えました。人と話しているうちに自分がどんどんアップデートされていく感覚があった、とこれまでを振り返る根津さん。

宮田さんも同意し、さらに「未来のビジョンに向かいつつ、今をきちんと見て正しい課題解決をすることが、未来につながっていく」と回答しました。

また、セッションの最後に根津さんは「執念があれば『まあいっか』とあきらめることはない」とコメント。宮田さんも「社会を絶対に変える」という欲望を持ってPdMに取り組むことの大切さを語りました。

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未来のヒントは現在にある
「兆しを見つけ、未来を描く」

DAY4最後のプログラムは、TakramのFutures Researcherとして、Lobsterr PublishingでAnother Editor in Chiefとして活躍する佐々木康裕さんによる講演。「兆しを見つけ、未来を描く」をテーマに、未来に対する向き合い方を掘り下げました。

世界のトレンドに目を向け、情報発信も行っている佐々木さん。プロダクトで世の中を変革し続けている企業の共通点として、「文脈把握力」を挙げました。

そのために必要なのが、現在をしっかりと見てトレンドをいち早くつかむこと。トレンドを分析する視点のひとつとして、佐々木さんは「タブー収集をすること」を紹介しました。「世間でタブー視されていることは未来ではポジティブなイメージに変わる場合があり、その逆もあり得る」と語る佐々木さん。未来を一方通行に考えるのではなく、行き戻りをくり返すスペクトラムとしてとらえる重要性を挙げました。

ほかにも「未来のバラ色な面だけではなく、負の側面を認識すること」、「時代はめぐるのだと意識すること」など、未来について考えるヒントを紹介した佐々木さん。現在すでに発生しつつある「半未来」に目を向ける大切さも語りました。半未来には、未来のスタンダードになるプロダクトのヒントが隠れているからです。 また、トレンドを生み出す手法のひとつとして「未来を名付けること」も提案。1単語で表現されたものは、世間で広まりやすくなるといいます。

セッションの最後に佐々木さんは、「我々は××経済の一部 ○○型社会の一員」というキーフレーズに言及。「プロダクトの向こうにあるユーザーや社会、経済を変えるものを生み出してほしい」とメッセージを送ります。未来で自分たちがどのような役割を発揮していくか、よりよい未来をどう実現するかを考えるおもしろさを、参加者たちに伝えました。

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PdMの正解はひとつではない。未来を切り拓く力を養おう

企業やコミュニティなど、さまざまな視点からPdMについて熱い議論が交わされた本イベント。ユーザーの満足度に向き合う、他者をリスペクトしあってコミュニケーションをとる、情熱を持って一歩を踏み出す、未来を想像するために現在を見る、など、これからPdMとして成長していくうえでの学びが詰まった1日となりました。今回参加した人々の手によって、いつか「未来の当たり前」となるプロダクトが生まれるかもしれません。

リクルートの「プロダクトデザイン室」でも、多彩なPdMが日々プロダクトに向き合っています。PdMに関する情報発信やイベントも積極的に実施中。興味がある方は一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

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[PR]提供:リクルート