女性活躍やダイバーシティが叫ばれるようになってから、さまざまな制度が整いつつあります。しかし、実際にその制度を有効に活用できているという感覚があまりない方もいるのではないでしょうか。
そこで、女性活躍やDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の課題解決に取り組む三井不動産の山田祥子さんと永山理子さんに、制度を活かすための情報発信やイベント開催の思いについてインタビューを実施。
さらに、3月4日に開催されたイベント「Diversity&Career Forum~企業の取り組みとワーカーの意識から紐解く、誰もが活躍できる社会を実現するためのヒント~」の様子もご紹介します。
誰もが活躍できる社会を実現
意識改革のためのきっかけ作りで「働きやすいオフィス」を創る
--お二人は、普段どのような業務をされているのでしょうか?
永山さん:はい、私たちは主に三井不動産のビルに入っているテナント企業が抱えている経営課題をサポートできるような企画提案や発信をしています
永山さん:たとえば、ダイバーシティ推進の面でいうと、「多様性(Diversity)」「公平性(Equity)」と「包括性(Inclusion)」を表す『DE&I』の専門部署を立ち上げて、制度作りや研修に取り組まれている企業様は増えているのですが、社員の皆さんを巻き込み切れていないことに悩みを抱えていると伺うことがしばしばあります。企業様が悩まれている社員の皆さんへどのように浸透させるかという課題に対して、私たちがネクストステップへ進むための手助けができればと考えております
山田さん:やはり、制度が整ったら、次は働いている方の意識を変える所が課題だと考えています。たとえば経営層など、まだまだ男性が多いと言われていますが、社内でもマジョリティとなる男性の意識が変わることで、社内の方向性や意識が変えられると思うんですね。でも『意識を変える』という部分がやはり難しく、皆さん日々悩まれているなと感じています
--そういった企業様の課題に対して、どのような取り組みをされているのでしょうか?
山田さん:一つは情報の発信です。『三井のオフィス』に入居するテナント企業とビジネスパーソンが集まり交流する『&BIZ(アンドビズ)』というサイトにて、DE&Iに関するコンテンツを展開しています。コラムや研修動画などを配信し、テナント企業に情報を提供しています
永山さん:はい、私たち不動産会社の強みでもある『リアルの場』から、『三井のオフィス』に入られているテナント様同士を繋げて、課題解決をサポートしています。開催するイベントでも、情報発信だけでなく、隣に座られている方同士で交流していただき、繋がりができることも期待しています
山田さん:もう1つは、物理的な取り組みです。弊社が進めるDE&Iのトピックの1つに『働く女性の健康』を掲げています。取り組みの例として、東京ミッドタウン八重洲のオフィスフロアの女子トイレに、誰でも使える生理用品を設置しました。これはテナント企業の社員の方からとても好評をいただいています
永山さん:他には、乳がん検診体験車を準備し、その場で乳がん検診が無料で受けられるイベントも実施しています。病気の早期発見のためにも、気軽に健診を受けていただく機会として、こちらも大変活用いただいています。これからも生理の問題や更年期、妊娠前の健康管理を表すプレコセプションケアなど、働く女性の健康に関する取り組みを増やしていければと思っています
--女性へのアプローチを意識して取り組まれているのですね。
山田さん:もちろん女性に関すること以外にもさまざまな課題がありますし取り組みも徐々に広げていますが、やはりダイバーシティの推進の中では、女性活躍推進を最も重要視されている企業様が多いと感じています。ですが、企業様では女性管理職の割合を上げるなどの目標を定めていても、女性が働く環境を整えるというところまで行き届かせるのは難しい場合もあります。だからこそ、その部分を私たちで何かお手伝いしたいと考えています。このように、一企業ではなかなか実施することが難しいけれど、ちょっとしたことができていると嬉しい、働きやすさやモチベーションUPにつながる、そういった環境を提供できるように努めています
--今回3月4日に開催される「Diversity&Career Forum~企業の取り組みとワーカーの意識から紐解く、誰もが活躍できる社会を実現するためのヒント~」も女性の活躍が大きなテーマかと思いますが、どのようなイベントでしょうか?
永山さん:昨年に引き続き、国際女性デーに合わせて、みんなで女性活躍推進の課題について考えていくフォーラムを企画しました。今回の3名のパネリストは、全員『三井のオフィス』のテナント企業の従業員の方。実際にダイバーシティを推進している立場の方だけでなく、対外的にDE&Iを研究・発信されている方もお招きしました
山田さん:東京ミッドタウン八重洲でリアルに行い、オンラインでも配信するハイブリット開催です。イベントでは、DE&Iの先駆的企業様が実施している、制度や社内の取り組み事例をご紹介します
--テナント企業の従業員の方で構成するという形は、『三井のオフィス』の企業を繋げられている三井不動産ならではの構成ですね! このイベントの開催に、どのようなことを期待されていますか?
永山さん:セミナー参加者にはDE&Iの業務に携わっている方、携わっていない方、両方の立場の方が参加されます。DE&Iを実際に企業で担当している方は、同じ立場で見るからこそ共感できる部分があると思うので、自社の取り組みのヒントとして、何か持って帰っていただけると感じています
普段、DE&Iの業務に携わっていない方へは、イベントを通じて自身の職場の女性活躍推進を自分事化して考えてもらうきっかけを提供したいと考えています。『女性活躍』という言葉ではありますが、女性に限らず職場の男性にも一緒に考えていただき、制度や研修が整ってきた後のネクストステップに進むための意識改革の必要性を感じていただけたらなと思っています
--昨年も同イベントを実施していますが、今回アップデートされた点はどういったところですか?
山田さん:今年は年代や性別、DE&Iとの向き合い方など背景が異なるパネリストの方にご登壇いただくことで、さまざまな立場や幅広い価値観が展開され、参加者の方が共通点を見つけやすくなるのではと考えました。昨年は、なぜ企業がダイバーシティ推進をしなければならないのか、という問いを深掘りした形でしたが、今年は実際にDE&I推進している方に会社の事例を紹介していただくことで、解像度をより細かくしたイメージですね
--企業においてより実践する目線に近づけたということですね! 最後に、これからどんな取り組みをしていきたいとお考えですか?
山田さん:そうですね。昨年のイベントでも、『パネリストの話に共感でき、参考になった』というお声をたくさんいただきました。社会は進歩していますが、やはりいつも同じ課題にぶつかるという面もあります。そういった生の声や事例を知っていただく機会にしていただけたら嬉しいです。これからも小さなきっかけ作りが、働きやすさや社内の意識改革につながるようなコンテンツ提供を続け、『三井のオフィス』のサービスが働く人の課題解決になりテナント企業の経営課題をサポートすることを実現していきたいです
永山さん:私たちはテナント企業と長くお付き合いさせていただいているので、一緒にイベントを企画したり、テナントさん同士を繋げたりして、どんどん新しい取り組みを増やして輪を広げていきたいですね
女性活躍推進のベースには、女性が働きやすい環境作りが不可欠。そのためには、まだまだ改善の余地があり、働く人たちのリアルな声に寄り添い、あるべき姿を示し、社会全体の意識の変化を促していくための一歩一歩を積み重ねていくことが大切なのかもしれません。
では、そんな課題と解決の糸口を見つけられるイベント「Diversity&Career Forum~企業の取り組みとワーカーの意識から紐解く、誰もが活躍できる社会を実現するためのヒント~」の様子をご紹介しましょう!
イベントに潜入! 各社の興味深い取り組みに、思わず共感……!
「Diversity&Career Forum~企業の取り組みとワーカーの意識から紐解く、誰もが活躍できる社会を実現するためのヒント~」は3月4日に開催されました。
ジャーナリストの浜田敬子さんがファシリテーターを務め、パネリストにEY Japan株式会社の梅田惠さん、大和証券株式会社の平野友視さん、そして株式会社博報堂 博報堂キャリジョ研プラスの前田将吾さんの3名を迎え、2部構成でトークディスカッションが行われました。
第1章では、「DE&Iにおける先進企業の具体的な取り組みを知る」をテーマに、それぞれの会社での取り組みを紹介しながら、トークが繰り広げられました。
まずは本フォーラム最年少のパネリストとなる26歳男性の前田さんから、自身が所属する“博報堂キャリジョ研プラス”の取り組みをご紹介。20代の男女を対象としたアンケート調査を元に、若い世代が求める働き方意識を紹介。女性よりも男性の方が管理職になりたい人が多いという調査結果に、女性の管理職がまだまだ少ない中、管理職に対する心理的ハードルが上がってしまっているのが背景の1つではないか、という分析や、子どもが生まれた後のライフプランの調査では、男性も「養う」から「一緒に子育てしたい」という意識に変わっているのではという見解などが聞かれました。たくさんの興味深い結果に、会場でもうなずいている方が男女ともに多く見られました。
そしてEY Japan株式会社のDE&Iリーダーであり、筑波大学の教授でもある梅田さんが紹介したのは、インクルージョンとエクイティに注目した女性だけのリーダーシッププログラムについて。女性だけの研修をするのは、性別的な役割が発生しなくなることや、同じ志の仲間が作れるという点がメリットなのだそう。
また、平野さんが紹介する大和証券が取り組む女性活躍に関する取り組みでは、女性役員の登用や、経営層と現場の社員が直接対話できるDE&I推進委員会などが挙げられました。10年以上前から社員の働き方や女性活躍に着目しているのだとか。また、2022年度から男性も2週間以上の育休取得を必須化し、男女ともに育休を取得して一緒に子育てをスタートするという意識を高めています。
全員が当事者として考える「女性活躍推進の課題」
第2章のテーマは「パネリストが考える女性活躍推進の課題解決」について。
日本社会が抱えている女性活躍推進の根本的な課題について、梅田さんは「ダイバーシティはグラデーション。日本は男女だけに分けて比較する傾向がある」と指摘。女性活躍以外にも進めなければならない障がい者や外国籍、LGBTなどの問題も並行して進めることで、相互作用ですべてが進んでいくと言います。
さらに前田さんは、「男性も自分事として捉えることが大事」と話す中で、男性からは逆差別だという声もあるという話に着目し「男性は自分たちに特権があることを自覚しにくい」と言います。これに対し、梅田さんはロールプレイ研修で気づいてもらう、という取り組みをしているそう。
また平野さんが考える課題は、日本はまだまだ働く時間や場所が固定されていて、柔軟な働き方がまだ達成できていないという点。働く人たちに「もっと人生に欲張りになってほしい」と話していました。
1時間15分でしたが、終始白熱したディスカッションが続き、大盛り上がり。参加者の大きな拍手で幕を閉じました。DE&Iの担当者だけでなく、誰もが当事者となって聞ける興味深いトークは、参加者それぞれの女性活躍の推進に確かな一歩となるはずです。
情報発信やイベント開催
これからも三井不動産の取り組みに注目!
三井不動産では、『三井のオフィス』に入居するテナント企業で働く方のワーク・ライフの充実のために「Work in Life」「Family」「Women’s Health」の3つを軸として、さまざまな活動を行っています。
●多様な価値観と向き合う「LGBTQイベント」の開催
6月のプライド月間に合わせ、多様な価値観との向き合い方を学ぶため、東京ミッドタウン八重洲にご入居の三井化学株式会社および住友生命保険相互会社とともに「LGBTQ」に関する映画を鑑賞する、共同上映会を実施。
鑑賞したのは、レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~でグランプリを受賞した「カランコエの花」という短編映画作品。LGBTQが抱える問題を当事者だけでなく周囲の人々の目線からも描いた作品です。鑑賞後は、監督の中川駿さんと参加者によるトークセッションも行いました。
●育パパのリアルをお届けする「育児と仕事の両立セミナー」
育休取得を検討している方や今現在育休中の男性に向けて、実際に育休を取ったパパたちによるオンラインセミナーを開催。育児・介護休業法の法改正に携わった、ファザーリング・ジャパンの塚越学さんをファシリテーターに迎え、育休についての分かりやすい解説や、育休取得経験者のパネリスト2人とリアルな体験談をお届けしました。
誰もが働きやすい環境づくりを整備、発信することは、日本全体の意識を変えていく一歩になるはず。これからも三井不動産の女性活躍やDE&Iの取り組みに注目が集まります。
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