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2021年2月に開催された日本流イノベーションのビジネスカンファレンス「Innovation Garden」。2回目となった今回のカンファレンスでは、イノベーションを生み出し世界へと発信していくために、トークセッションが実施された。イベントには、幅広い業種のビジネスリーダーをはじめ、日本におけるイノベーションの今後に興味を持つビジネスパーソンが多数参加。業界を超えた参加者のマッチングも数多く誕生している。

今回のテーマは「COMMUNICUBATION 共同孵化」。このテーマのもと行われた貴重なイノベーターらによる12のキーノートから、筆者が特に気になった「テクノロジーが示す未来とは」「超高齢化社会をどう生きるか」という2つのトピックについて紐解いていきたいと思う。

【生命体としての都市デザイン】テクノロジーが示す未来とは
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木嵜綾奈さん(NewsPicks Studios チーフプロデューサー)をモデレーターに行われたキーノート「生命体としての都市デザイン」では、これからの都市の在り方や可能性について議論された。登場したスピーカーは、須賀千鶴さん(世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長)と、齋藤精一さん(パノラマティクス主宰)、佐渡島隆平さん(Safie CEO)の3人だ。

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須賀さんが所属する世界経済フォーラム第四次産業革命(C4IR)は、政府、産業界、市民社会、地方自治体、国際機関などが参画し、グローバルなルールづくりに取り組んでいる実証型の官民プラットフォーム。センターは現在13カ国、パートナー政府・機関は31カ国・6機関と世界的な取り組みとして進められている。

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齋藤さんは、クリエイティブディレクターとしてパノラマティクスを主宰しており、モノづくりからテック、演出など、分野を越えて幅広い取り組みを行っている。現在は、2025年の大阪万博や延期となっているドバイ万博などに携わっているという。

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佐渡島さんは、映像から未来をつくるという理念のもとSafieを2014年に起業、さまざまな産業現場を“見える化”する事業を展開。カメラをクラウドと接続することで、進化し、賢くなっていくカメラというソリューションを作っている。クラウドのカメラとしてはシェア最大となっており、映像データを用いたDXを実施している。

最初に、議論のきっかけとして、モデレーターから「都市の可能性を閉ざそうとする障壁は何だろうか?」という問いが投げかけられた。

齋藤さんは、テクノロジーに関して言えば、5Gが普及していない今、リアルタイムな同時接続が難しく、人の繊細なコミュニケーションにおいてはまだまだ障壁があると指摘した。また、国の規制緩和などが進んでいるにも関わらず、民間の動きが鈍いことも問題だ、と話した。

これには佐渡島さんも、民間がどんどんテクノロジーのボーダーを突破していかなければならないと同意。

須賀さんは、テクノロジーによってサービスなどの質をものすごく上げられると考えている人と、そういうテクノロジーは自分とは関係のないところで起こってほしいと考えている人の間に大きな隔たりがあることを問題として挙げた。その解消のためにも最先端の技術がもたらすワクワク感をいかに共有していくかがカギとなるという。

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今回の議論を通して、齋藤さんは、自身の立ち位置を「実装してナンボ」の立場と話す。今、人が想像できることはほぼ実装できると考えており、大きなパワフルクエスチョン、分かりやすい問いにソリューションで答えを出す。それを、同じ思いを持っている人とスクラムを組んで、どんどん実装していきたいと語った。

佐渡島さんは、都市づくりは、あまりに広大なリアルワールドをソフトウェア化していく世界なので、誰かの真似をするのではなく、自分の中にある文化やアートを実直に作れば、必然的に日本らしさが出るはずなので、自分の中のやりたいことを外に打ち出していくことが重要だと話した。

須賀さんは、世界で日本のリーダーシップを示すべき、という議論はよくなされるが、今それを一番示しやすく、一番求められているのが、このルールメイキングの部分だと宣言。佐渡島さんのような新しいビジネスに取り組んでいる人と、その分野においてあるべき規制などについて一緒に考え、ルールを作っていくことが、ひいては国際公共財として世界の幸せにつながる。そういうムーブメントを日本から起こしたいし、一緒にやっていきたいとビジョンを描いた。

さまざまな技術革新や新たなコンテンツを生み出すことが可能になっていたとしても、それをうまく運用することができなければ意味がない。世の中を便利にする技術はすでにたくさん存在しているのに、それを活用しきれていない現状にもどかしさを感じた。たくさんの分野で次々に新しいものが生まれ続けている昨今、それをいかに連携させ、円滑に運用するかということが求められていくだろう。

【「やさしいDX」が世界を救う】超高齢化社会をどう生きるか
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根本豊さんをモデレーターに行われたキーノート『「やさしいDX」が世界を救う』では、超高齢化社会を迎えつつある日本で、ウェルビーイングなイノベーションとはどのようなものかを考えた。スピーカーには、若宮正子さん(ITエヴァンジェリスト)、沖中直人さん(サントリーウエルネス株式会社代表取締役社長)の2人が招かれた。

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若宮さんは、世界最高齢のプログラマーとも言われている。長年勤めた銀行を定年退職する少し前に、インターネットに接続するところから始めて、スマートフォン向けアプリを制作するところまでパソコンに精通。そのアプリが海外メディアで紹介され、米Apple社のティム・クックCEOに招待されたり、最近では有識者会議などにも名を連ねたりと、幅広い活躍をしている。

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沖中さんは、清涼飲料水などを手掛けるサントリーグループの中でも、サプリメントなどを手掛けるサントリーウエルネス株式会社の代表取締役社長を務めている。サントリーウエルネスは、老化という現象に科学で向き合い、老化によって起こる不具合を少しでも和らげることができないか、という観点から事業を行っている。年齢を重ねることはポジティブなことだけではない。ネガティブなことに向き合うことがミッションであり、DX戦略としてデジタル格差の解消が必要と考えている。

デジタルの普及について、若宮さんはインターネットがインフラにならなければならないと考えているという。昔は回覧板を回していたが、現代はそれが電話に成り代わっており、今度はそれがインターネットになっていくべきだと話した。このことは、国が主導で、などではなく、それぞれが当事者になって考えていかなければならないことであると語った。

また、高齢者にインターネットがもたらすものとして、仲間やコミュニティの存在が挙げられた。沖中さんによると、定年退職をして職場というコミュニティを離れた後、新たなコミュニティを作ったり入っていったりすることが得意な人と、そうではない人とでは大きな隔たりがあるという。

コミュニティ形成が苦手な人に、すべてリアルでコミュニティを作らせようとするとすごく大変で、そこにインターネットが非常に有用になる。コミュニティに入ることができず、孤独になると心も健康にはなれない。コミュニティに属して仲間を作り、仲間と付き合う中で自分の自我と向き合うことが、高齢化社会の課題であり必要なことだと考えているという。

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若宮さん、沖中さんの話を聞いて、根本さんは、心のウェルビーイングがイノベーションや社会課題を解決するために重要なことであると話す。 若宮さんも、人生は長さだけではなく質×量である、みんなが「いい人生だった」と思って100歳まで生きられるような世界を作ることが重要だと語った。

沖中さんは「顧客一人一人に伴奏していく」というミッションを実現するためには、デジタルの力なくしてはあり得ないと言う。今後は顧客の幸福寿命にアプローチするために、インターネットの環境を整え、皆さんに楽しんでもらえるようなコンテンツを提案していきたいと語った。

これから日本が超高齢化社会に向かっていく中で、体の健康だけでなく心も健全に年齢を重ねていくことは、誰しも向き合っていかなければいけない問題だろう。それは個々の心がけだけで解決できるものではない。老齢人口が増えるということは、求められるコミュニティや社会の仕組みにも、変化が求められる。快適な老後のためにも、自分自身のことだけではなく、世の中の環境をも整える必要があるのではないだろうか。

自分自身もこの世界を形作るひとり
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イノベーションを起こすことをイメージした時、どうしてもひと足もふた足も先のビジョンを描いてしまうのではないだろうか。もちろん、大きな理想を描くことは大切だが、そこにたどり着くためには、目の前にある小さな問題や些細な不満を拾い上げ、それをテクノロジーによって解決できる可能性に気付いていくことが重要だと感じた。

イノベーションの先端を走る人々の声と、自分の中から生まれた課題を重ね合わせ、共感できる人とともに新しいイノベーションを起こしていく。Innovation Gardenには、そのために必要な気付きや新たな視点のきっかけがあふれている。自分自身も世界をデザインしていく当事者として、Innovation Gardenで得た知識を糧に、堅実なビジョンを描いてイノベーションに加わっていきたい。

Innovation Gardenの詳細はこちら

[PR]提供:Innovation Garden実行委員会