最近、北関東で一人暮らししていた妻の母の体が弱ってきたため、わが家の近くの施設に引き取ることとなりました。おそらく、もう実家に帰ることはないでしょう。そうなると、もしもの時のことも考えなければなりません。自分の実家、妻の実家関連で、何度か地方の葬儀を経験したけど、たくさんの参列者を想定した入念な準備に、当日は参列者への挨拶やさまざまな確認事項にてんてこ舞いで、故人を偲ぶことなどまったく出来なかった思いがあります。義母にもしもがあった場合、同じ思いはしたくありません。ゆっくりと見送りたいと考えていました。
そんな折、「家族葬」という新しい葬儀の形があると聞き、前回、それをテーマにした座談会に出席してみたのです。その結果、少人数で故人とゆっくりお別れできるということは漠然と理解できました。しかし、実際にどういう場所で、どう執り行われるものなのか、具体的なイメージがどうもつかめません。そこで百聞は一見に如かずと、昨年11月に千葉県鎌ケ谷市にオープンした家族葬専門ホール「ファミーユ鎌ケ谷ホール」に実際に行き、「家族葬」の流れや料金など疑問に思ったことをあれこれ聞いてきました。
まずはホールの案内と、アンケート
ファミーユ鎌ケ谷に到着してまず思ったのが、意外に小さいこと。一般的な葬祭場は2階建てで、1日に数組の葬儀が執り行えるよう、ある程度の規模を持っているが、家族葬のファミーユは平屋建てでこじんまりしています。葬儀ホールと聞いてイメージする建物とだいぶ違いました。一見すると普通の家のようにも見えます。
ホールに入るとスタッフの秋月真弓さんが迎えてくれ、まずはホールを案内してもらうことにしました。容態が心配な家族がいて「もしもの時」に備えて相談に来る人だけでなく、筆者のように「興味があったので話だけでも」という人や、「自分の終活のため」と来る人も多いとのこと。気軽に来ることができるので、少し安心しました。
その後くわしく話を聞きたいことを告げ、「ご相談内容確認シート」に記入しながら説明をしてもらうことに。アンケートには「ご家族のことが心配」や「自分の葬儀を考えている」などの"現在の状況をお聞かせください"といった項目や、「仏式」、「神式」、「キリスト教」、「無宗教」などの"宗派をお聞かせください"といった項目があります。
無宗教スタイルもある今時の葬儀
確認シートの中で気になる箇所がいくつかあったので質問してみました。気になったのは宗派を訊く中にあった「無宗教」という項目です。
秋月さん「葬儀に宗教者を呼ばない形式の無宗教葬が、最近増えています。お経の代わりに故人が好きだった音楽を流したり、参列者から故人の思い出を一言ずつ語ってもらいながら献花したり焼香したりと、自由な形式で執り行います。葬儀に僧侶を呼ばなくても、後ほどご位牌を作り、お骨は菩提寺のお墓に埋葬する方も多いです」。
なるほど、好きな音楽がお経代わりになる。それはいいかもしれないですね。
ホールいっぱいに故人の思い出を
昨今は自由な形式の葬儀も要望が多く、ファミーユでいうと「オリジナルプラン」がそれにあたるそうです。
秋月さん「例えば故人が生前打ち込んでいた趣味のもの、釣果を抱えた写真や社交ダンスの衣装、旅行の時の写真やお土産、いつか行きたいと言っていた観光地の写真などをお借りしたりこちらで用意したりして会場全体をお飾りします。式場を故人が好きだった花いっぱいにするのも喜ばれます」。
先ほど、祭壇に花がなく地味な印象があったのですが、実際のご葬儀では生花を使うため、見学時には見られないとのこと。現地で写真は見せてもらいました。公式サイトではたくさんの写真がチェックできます。
ちなみに故人の写真による思い出パネルやメモリアルムービーの制作も料金に含まれているとのことです。
秋月さん「故人に関係するたくさんの物に囲まれながら、参列者たちでゆっくりと故人の思い出を語ってもらいたいのです。それが一番の供養になると思っています」。
ただおしゃべりするだけの時間を過ごすのではなく、お別れのセレモニーとしての式進行をファミーユ側で取り仕切るので、きちんとした気持ちの区切りができる内容になっているんですね。