「初めての親族間売買でやり方がわからない」「不動産の親族間売買で注意することは何だろう」と悩んでいませんか? 親族間で不動産を売買することを「親族間売買」といいますが、一般的な不動産売買とは異なるポイントがいくつかあります。
本記事では、親族間売買における注意点やメリット・デメリットなどについてQ&A形式で解説します。本記事を読むことで、親族間売買に関する知識が身に付き、正しく売買できる可能性が高まるでしょう。ぜひ最後までお読みいただき、親族間売買に関する注意点を把握して、スムーズに取り引きができるようにしてください。
親族間売買とは?
親族間売買は、個人間売買のひとつであり、親族間で不動産を売買することです。よく知っている人同士、あるいは信頼できる人同士で不動産を売買するため、トラブルの心配が少ない傾向にあります。
友人・知人などの個人間売買では、トラブルが起こったときに対応できないことを考慮し、不動産会社に仲介に入ってもらうケースが多いですが、親族間売買の場合は、不動産会社を利用しなくて済むことが一般的です。
個人間売買について詳しく知りたい人は、次の記事をお読みください。

他の不動産取引の方法との違いは?
親族間売買と他の不動産売買では、主に以下の点に違いがあります。
- 売却価格
- 住宅ローン審査
- 居住用不動産の控除特例
親族間売買では、売却価格を安くするケースがありますが、あまりにも金額が低い場合、「みなし贈与」と判断されてしまい、税金関係の問題が発生します。「みなし贈与」に関する内容は、後で詳しく紹介します。
また、住宅ローン審査が一般的な不動産売買取引と違った判断基準となり、厳しくなる可能性があります。金融機関は、住宅ローンを他の目的で使われていることを恐れており、金融機関によっては親族間売買は対象外です。
3,000万円控除などの居住用不動産の控除特例についても留意すべき点が出てくるでしょう。なぜなら、居住用不動産の控除特例は、親族間の売買を適用外にしているからです。
親族間売買と通常の不動産売却で支払う税金などに大きな違いはありませんが、売却価格や住宅ローン審査、居住用不動産の控除特例に関しては注意しましょう。
住宅ローンの審査や居住用不動産の控除特例については、次の記事で詳しく解説しています。


親族間売買のメリットとは?
親族間売買は、以下のようなメリットがあります。
- 契約関係を整理できる
- 親が存命の間に不動産相続ができる
- 不動産売買の取引がやりやすい
ここでは、各メリットの詳細を見ていきましょう。
契約関係を整理できる
親族間売買のメリットは、所有者を新しい名義にできるため、契約関係を整理できることです。住宅ローンを売買金額によって完済できるケースでは、連帯保証人を変更したり、連帯保証人から外れたりすることも可能です。
また親族間だからこそ、契約に関するトラブルも発生しづらく、スムーズな売買を目指せます。不動産の契約関係が煩雑になっている場合は、親族間売買によって整理しましょう。
親が存命の間に不動産相続ができる
親族間売買は、親が生きている間に不動産相続できるメリットもあります。不動産相続は本来、親が亡くなってからですが、故人の意向が分からないままの財産分与は、トラブルの元となりやすいです。
親の不動産を親が存命の間に子どもが買い取ることで、相続問題を一部解決できるでしょう。また、不明点もすぐに聞けるため、事前にトラブルを回避できるメリットもあります。
不動産売買の取引がやりやすい
不動産売買取引のコミュニケーションがとりやすいことも、親族間売買のメリットです。一般的な不動産売買は、売主と買主は赤の他人であり、不動産会社が間に入ってコミュニケーションするため、スムーズにやり取りできるとは限りません。
親族間売買であれば、売買する前もした後もコミュニケーションが取りやすく、「購入後に瑕疵が見つかった」などのトラブルも、解決しやすいでしょう。
親族間売買のデメリットとは?
親族間売買のデメリットは、以下の通りです。
- みなし贈与に注意する必要がある
- 特例による控除が利用できない場合も
- 専門の業者が少ない
デメリットについても把握して、親族間売買のリスクを減らしましょう。
みなし贈与に注意する必要がある
みなし贈与とされる可能性があることは、親族間売買のデメリットです。あまりに安い売買価格で取引してしまうと、税務署にみなし贈与と判断され、贈与税の支払いが必要となる場合があります。
税務署は、贈与税を納めないための売買をチェックしており、指摘を受けた場合は、売買額と市場価格の差に対し贈与税を納める必要があるため、注意が必要です。
不動産売却に伴う相続税については、次の記事で詳しく解説しています。

特例による控除が利用できない場合も
居住用不動産の売買ではさまざまな控除が受けられるものの、親族間売買の場合、控除の適用外となる場合があるため注意が必要です。適用外となる控除は、以下の通りです。
- 居住用財産を譲渡したときの3,000万円控除
- 居住用財産を売ったときの軽減税率
- 特定居住用財産の買換えの特例
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例
親族間売買では、控除がなく節税しづらいと認識しておきましょう。
譲渡所得の特別控除について詳しく解説したこちらの記事もおすすめです。

専門の不動産業者が少ない
親族間売買に詳しい不動産業者が多くないこともデメリットに挙げられるでしょう。親族間売買自体、それほど多く存在する取引ではないため、専門業者を見つけられない可能性があります。
親族間売買は親族間での契約になり、必ずしも不動産業者に仲介を依頼する必要はないですが、トラブルが発生した際、専門家に相談しづらい点に注意が必要です。
親族間売買の手続き方法は?
親族間売買は、以下の流れで手続きを進めます。
- 登記簿謄本の取得
- 物件価格の調査
- 売買契約を結ぶ
- 決済して名義変更を行う
ここでは、各手順の詳細を見ていきましょう。
STEP1:登記簿謄本の取得
まずは、法務局で登記簿謄本を取得しましょう。売買契約書に記載する地番などは、登記簿謄本と同じ内容にする必要があるからです。登記簿謄本には、以下のような登記(不動産の権利情報)の内容が記してあります。
- 面積
- 所在地
- 所有している人
- 住宅や事務所などの種類
- 木造や鉄筋コンクリート造などの構造
- 床面積などの状態
登記簿謄本は、全国の法務局で手数料を支払えば取得できます。現在では「登記事項証明書」と呼ぶ方が一般的です。また登記簿謄本は、登記・供託オンライン申請システム、もしくは申請用総合ソフトを使用することで、オンラインでも取得可能です。
取得方法などを詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。

STEP2:物件価格の調査
法務局に行って登記簿謄本を取得した後、物件価格を調べます。親族間の場合、市場価格よりも安く設定すると、「みなし贈与税」と見なされる可能性があるため、物件価格を調査することは重要です。
物件価格は、不動産業者に査定依頼をしたり、インターネットの一括査定サイトなどを活用したりしながら調査することをおすすめします。一括査定サイトは、無料で査定依頼ができたり、不動産会社探しの手間が省けたり、時間に縛られずに依頼できたりするメリットがあります。
おすすめの不動産一括査定サイトや利用者の声を知りたい人は、以下の記事がおすすめです。

STEP3:売買契約を結ぶ
物件価格を調査した後、条件と売買価格を設定し、売買契約を結びます。親族間でも、一般的な不動産売買と同様に、契約書を交わさなければなりません。
売買契約書は、自分自身で作成可能です。インターネット上には、無料テンプレートがいくつもあり、最新の法律に対応したものを利用するようにしましょう。また、作成した売買契約書には、印紙税(収入印紙代)も必要です。
印紙税など、不動産売却でかかる費用の詳細は、以下の記事をご覧ください。

STEP4:決済して名義変更を行う
最後は、登記関係の事務処理を行い、売買代金の決済を行います。代金の支払いは、売買契約の事前・事後でも問題ありませんが、トラブルを避けるために、契約日当日の支払いが望ましいです。また、現金でも銀行からの送金でも可能です。
決済と同時に、不動産の名義を変更する所有権移転登記を行いますが、司法書士に依頼することが一般的です。
不動産所有権移転登記にかかる費用や手続きの詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。

親族間売買でも贈与税はかかる?みなし贈与について
親族間売買では、みなし贈与に注意する必要があります。みなし贈与のポイントは、以下の通りです。
- 著しく低い価格での取引はみなし贈与と判断される
- 金銭のやり取り無しで名義変更しても贈与とみなされる
- 親族間売買でも適正価格で取引を
ここでは、各ポイントを詳しく見ていきましょう。
著しく低い価格での取引はみなし贈与と判断される
不動産をあまりに低い価格で取引した場合、買い手側が大きく得をしたことになり、みなし贈与とみなされ、贈与税が課せられる可能性があります。
通常の売買価格との差額をみなし贈与と判断されるケースがあるため、前章で紹介した通り、価格を調査することは重要です。また、差額が大きいほど贈与税がアップするため注意が必要です。
金銭のやり取り無しで名義変更しても贈与とみなされる
著しく低い価格で取り引きしたケースだけではなく、金銭のやり取りなしで不動産の名義変更をしても、贈与とみなされ贈与税がかかる可能性があります。
双方の合意があれば、不動産の登記簿の名義変更自体は可能ですが、税務署から連絡が入り、納税の確認が行われるため注意が必要です。親族間においては、教育費など扶養義務の範囲内ならば贈与税はかかりませんが、不動産の場合、扶養範囲を超えてしまい贈与税がかかるでしょう。
親族間売買でも適正価格で取引を
親族間売買でも、適正価格で取引すれば贈与税は発生しません。時価の80%未満での取引はみなし贈与と判断されるため注意が必要です。不動産業者の査定や不動産鑑定士の鑑定ならば、通常の価格に近い売買価格を出してもらえるため安心です。
不動産業者の査定や不動産鑑定士の鑑定については、次の記事で詳しく紹介しています。


時価と売買価格の差額に注意
みなし贈与は、時価と売買価格の差額が贈与とみなされます。なぜなら、例えば、親が所有する5,000万円の物件を子に100万円で売却した場合、親の資産を減らし相続税を下げることが可能になってしまうためです。こうした税金対策を防ぐために、みなし贈与という判断がくだされます。
親族間売買で住宅ローンは組める?
親族間売買での住宅ローンに関するポイントは、以下の通りです。
- 審査は厳しくなる
- 条件が良ければ組むことは可能
- 住宅ローン控除が利用できないことも
住宅ローンで困ることがないように、この機会に理解を深めておきましょう。
審査は厳しくなる
親族間売買で住宅ローンは組めるものの、審査は厳しい傾向にあります。なぜなら、親族間売買に見せかけて、受けた融資を他のことで使う可能性を疑われるためです。
金融機関であっても、偽装を見抜くことが難しいため、親族間売買での住宅ローンは通りづらくなっています。基本的には融資を受けられる可能性が低いと認識しておきましょう。
条件が良ければ組むことは可能
親族間売買で住宅ローンは、絶対に組めないわけではありません。以下のような条件であれば、融資を受けられる可能性があります。
- 医者や弁護士、高年収など、安定した収入が見込める職業
- 仕事などで金融機関と付き合いがある
「収入が不安定」「初めて金融機関を利用する」といったケースでは、融資の審査対象に入ることは難しいです。
住宅ローン控除が利用できないことも
売主と買主の生計が一緒だった場合、住宅ローン控除が利用できません。住宅ローン控除とは、一定の割合に相当する金額が所得税から控除される制度です。
住宅ローン控除を利用すれば、不動産を購入する際の住宅ローンの負担を軽減できるメリットがあります。ただし、売主と買主の生計が別のケースであれば、住宅ローン控除を受けられます。
より詳しく住宅ローン控除について知りたい人は、以下の記事をご覧ください。

住宅ローン控除に関する最新情報の確認を
住宅ローン減税で控除される割合は、これまで1%でしたが、今後0.7%に引き下げられる可能性があります。また、減税期間を10年から11年以上に変更する方針もあります。
できるだけ損を減らすためには、こうした住宅ローン控除に関する最新情報を確認するようにしましょう。
親族間売買が難しい場合は?
親族間での売買ができそうになく、けれども物件を手放したくない場合は、リースバックという手段がおすすめです。リースバックとは、物件を売却した後にも、賃貸として住み続けられる仕組みのことです。また、一度売却して賃貸として利用した物件を、将来的に再度購入できるメリットもあります。
リースバックの基本やメリット、手順についてもっと知りたい人は、以下の記事がおすすめです。

親族間売買について相談したい場合は?
親族間売買の相談先は、内容によって異なります。親族間売買について相談できる専門家は、以下の通りです。
- 適正価格については、不動産鑑定士・宅地建物取引士
- 契約書の作成については、行政書士・司法書士・弁護士
- 登記については、司法書士
- 税金については、税理士
また、不動産業者に仲介に入ってもらう方法もありますが、その場合は仲介手数料が発生するため注意が必要です。
仲介手数料を値引きしたい場合は、以下の記事をご覧ください。

まとめ
不動産の親族間売買では売却価格に注意しましょう。あまりにも金額の低い取引が行われてしまうと、「みなし贈与」と判断されてしまい、税金関係の問題が発生するためです。適正価格や税金に関する相談は、税理士がおすすめです。
また、不動産の親族間売買は一般的な不動産売買とは異なり、住宅ローンの審査も通りづらい傾向にあります。居住用不動産の控除特例についても対象外になっているケースが少なくありません。売主と買主の生計が一緒だった場合、住宅ローン控除が利用できないこともデメリットです。
こうしたデメリットがありながらも、不動産売買の取引がやりやすかったり、親が存命の間に不動産相続ができたりするメリットもあります。信頼できる相手だからこそ、トラブルが発生するリスクも少ないでしょう。親族間売買はみなし贈与に気を付けて取引するようにしてください。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
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