所有者移転登記とはどのような手続きなのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?
実はこの登記を行わないと不動産の名義は変更されず、そのまま放っておくと本当の所有者が誰なのか分からなくなってしまいます。登記には費用がかかるため、費用についても事前に知っておいたほうがよいでしょう。
そこでこの記事では、所有者移転登記にかかる費用の種類や、相場について解説します。費用を安く抑えるコツについても解説するので、ぜひ参考にして、不安なく所有者移転登記をできるようになりましょう。
所有権移転登記が必要なとき
そもそも所有者移転登記とは、どのようなときに必要になるのでしょう。個人で不動産を所有する場合は、以下の3つのケースが考えられます。
- 不動産を売買するとき
- 不動産を相続したとき
- 離婚による贈与が行われたとき
人によっては人生の中で、所有者移転登記を何度か行います。それぞれなぜ必要なのかを詳しく見ていきましょう。
不動産を売買するとき
新築や中古の家の購入や買い換えなど不動産の売買をするときに、所有者が変わるため移転登記が必要です。手続きは決済する日に、新旧の所有者が法務局で行います。
たとえ不備なく決済していても、所有権移転登記を行っていなければ、自分のものであるという主張は通りません。不動産業者の仲介による売買なら、手続きは確実にできます。しかし、個人で知り合いなどと売買する場合は忘れないようにしましょう。
不動産売買をするときには、その不動産がいくらで売買できるのか知っておくことが重要なポイントになります。そのためには、Web上で手軽にできる一括査定サイトの利用をすることで、複数の不動産会社から査定をしてもらえ、価格の比較ができるので利用をおすすめします。
おすすめの一括査定サイトは「すまいステップ」

- 初めてで不安だから実績のあるエース級の担当者に出会いたい
- 厳選された優良不動産会社のみに査定を依頼したい
- 悪徳業者が徹底的に排除された査定サイトを使いたい
\ 厳選した優良会社に査定依頼 /
すまいステップで一括査定する

不動産を相続したとき
遺産として不動産を相続するときや、自身が存命の内に子供に贈与するときにも、所有権移転登記を行います。特に相続では、誰のものになったのかを明確にしておかなければ、トラブルの元になります。口頭で譲ることを相手と合意していても、法的な効力はありません。
相続や贈与で所有者移転登記をしていなければ、元々の所有者に固定資産税や都市計画税の支払いが届きます。新しい所有者のものだからと納税を無視すると、不動産を差し押えられることになりかねないため注意しましょう。
不動産を相続した際の手続きについて詳しく知りたい人は、こちらの記事もおすすめです。

離婚による贈与が行われたとき
結婚してから購入した家があり、売却せずに離婚する場合は、住み続ける人に所有権移転登記が必要です。手続きをしておかなければ、出て行った人が自由に売却することができてしまい、住家を失ってしまう可能性があります。
夫婦で築いた財産の中でも、家はトップクラスに高額のものなので、家を残したまま均等に財産を分けることは難しいです。また、所有者は減少した世帯収入で税金の支払いが続くため、住み続けても問題がないのかしっかり検討してみてください。
離婚による財産分与や発生する税金について、詳しく知りたい人はこちらの記事もおすすめです。


所有権移転登記にかかる費用
所有権移転登記の必要性が理解できたら、次は実際にどれだけ費用がかかるのかを見ていきましょう。手続き完了までに、最大で下記の5つの費用が発生します。
- 登録免許税
- 司法書士への報酬
- 登記に必要な書類の発行手数料
- 切手代
- 不動産調査のための費用
支払いを求められても納得できるように、必要になる理由から解説していきます。
登録免許税
登録免許税とは登記を行うために納める税金で、不動産の売買や相続などの所有権移転登記に限らず、住宅ローンの借入れや完済したときの抵当権抹消にも必要です。
手続きは、不動産のある地域を管轄する法務局で行います。現金での納付が基本で、発行してもらった領収証書を書類に貼り付けます。30,000円以上の登録免許税がかかる場合は、印紙を提出する書類に貼り付けることでも納税が可能です。
登録免許税の計算方法
所有権移転登記にかかる登録免許税は、以下の計算式で事前に見積もることができます。
課税標準額とは、自治体が評価した課税対象の価値で、実際に売買した価格の7割程度です。税率は登記するものやその理由によって、5倍の差があります。
土地の所有権移転登記の場合
登記をする理由 | 税率 |
土地の売買 | 20/1,000 |
土地の相続 | 4/1,000 |
土地の贈与 | 20/1,000 |
建物の所有権移転登記の場合
登記をする理由 | 税率 |
建物の売買 | 20/1,000 |
建物の相続 | 4/1,000 |
建物の贈与 | 20/1,000 |
例えば課税評価額で土地1,000万円、建物2,000万円の不動産では、支払う登録免許税は以下のようになります。
もし、課税評価額が低く税額が1,000円未満になる場合は、一律で1,000円です。
登録免許税の減税措置
登録免許税は条件付きで、減税措置が行われています。売買での所有権移転登記の場合は、土地の税率は2021年3月31まで1,000分の15となり、2021年4月1日以降より0.5%節税が可能です。
建物部分に関しては3種類の減税措置があり、いずれも2022年3月31日までとなっています。
減税措置の種類 | 軽減税率 | 適用条件 |
住宅用建物の軽減 | 3/1,000 |
|
認定長期優良住宅の軽減 | 戸建て2/1,000、マンション1/1,000 | 耐震性やバリアフリー性などで、長期優良住宅と認定されている |
認定低炭素住宅の軽減 | 1/1,000 | 省エネなどで二酸化炭素を抑制し、低炭素住宅と認定されている |
減税措置は所有権移転登記を促し、不動産の所有者不明の土地が増加することを防ぐ効果が期待できます。誰の土地なのかが分からなければ、管理不全で問題が起きても、第三者による対応は難しくなるでしょう。
固定資産税評価額を調べる方法
登録免許税の計算で必要になる課税評価額は、不動産の所有者に毎年送付される固定資産税の納税通知書で確認することができます。送付時期は市町村によって差がありますが、おおよそ4~6月頃です。最新の納税通知書がまだ届いていないなら、前年のものを探して登録免許税を計算してみましょう。
紛失してしまった場合は、不動産を管轄している市町村の役場で、固定資産税評価証明書を取得できます。免許証などの本人確認書類と、発行手数料を用意しておきましょう。発行手数料は市町村で変わり、東京都23区内では1件のみ申請すると400円かかります。
固定資産税の算出方法や売却時の手続きについて、詳しく知りたい人はこちらの記事もおすすめです。

司法書士への報酬
所有権移転登記を専門家に代理でしてもらう場合は、司法書士に依頼することになります。登記は自分の力だけでも可能ですが、手続きしてくれる役所の対応は平日のみです。もし、手間を省くために司法書士に依頼する場合は、司法書士への報酬が発生します。
2003年3月31日以前であれば、司法書士報酬額基準により報酬の上限や下限が決まっていたため、3,000万円の不動産なら30,000円程度でした。しかし2020年時点では、事務所ごとで自由に決められるようになっています。そのため司法書士への報酬額は、依頼する司法書士の事務所ホームページなどで、依頼する前にしっかり確認しましょう。
登記に必要な書類の発行手数料
所有権移転登記の申請書には、売買や相続などの理由にごとに、さまざまな添付書類が必要です。その中に、市町村の役場で発行しなければならない印鑑証明や戸籍謄本があり、それぞれ手数料がかかります。
1通当たりは数百円で、市町村ごとに決まっています。不動産の売買や贈与では、必要な書類が少なく数百円で収まることもあります。しかし相続での所有権移転登記では、被相続人の戸籍謄本が全員分必要になるため、10,000円を超えることもあるでしょう。
切手代
所有権移転登記のために作成した書類は、法務局の窓口、オンライン、郵送の3パターンで提出が可能です。この中で郵送だけ、書類を提出するために切手代が必ずかかります。定型の封筒に入り1kg以内なら、84円~580円です。
郵送しなければならない書類は基本的に原本ですが、あとで返却してもらうため、別途封筒と必要な切手を入れておきます。速達を希望する場合は、その費用も入れておきましょう。
オンライン申請については、1つだけ注意点があります。添付する印鑑証明書や戸籍謄本などは、オンライン上で送ることはできません。法務局の窓口か郵送で提出するため、他の方法より手間と感じる可能性があります。
不動産調査のための費用
所有権移転登記を行うためには、不動産の現在登記に記載されている情報が必要です。登記事項証明書という書類で確認できますが、法務局からの取得方法によってかかる費用は変わってきます。
- 法務局の窓口で申請を行いその場で受け取り:600円
- 申請はオンラインで行い法務局の窓口で受け取り:480円
- オンラインで申請して郵送してもらう:500円
所有権移転登記を司法書士などに依頼している場合は、民事法務協会が運営する登記情報提供サービスを利用して334円です。個人でも利用は可能ですが、利用開始まで1週間程度かかり、クレジットカードの登録も必要です。頻繁に利用することはないため、そこまで手間をかけなくてもよいでしょう。
所有権移転登記費用の相場
実際に所有権移転登記の手続きをする際には、トータルでいくら費用が必要になるのでしょう。相場を把握していないと、高額な請求をされたときにも、そのまま支払ってしまう恐れがあります。不動産の売買や相続、贈与での所有権移転登記で損をしないように、相場を知っておきましょう。
不動産売買時の費用の相場
一口に不動産売買といっても、減税措置や住宅ローンの有無、不動産の評価額などによって、かかる費用は大きく変わります。土地と建物の価格をそれぞれ500万円と仮定し、手続きを司法書士に依頼した場合は、ケース別で所有権移転登記費用の相場は、以下のようになります。
不動産を購入する人が支払う費用の相場
- 現金で購入し住宅用建物の軽減を適用:14~17万円
- 現金で購入し住宅用建物の軽減なし:22万5,000~25万5,000円
- 1,000万円のローンを借りて住宅用建物の軽減を適用:18~22万円
- 1,000万円のローンを借りて住宅用建物の軽減なし:29万5,000~33万5,000円
不動産を売却する人が支払う費用の相場
- 住宅ローンが残っていて抵当権の抹消が必要:4万円
売却する人は、住宅ローンを完済してすでに抵当権を抹消しているなら、所有権移転登記費用は0円です。
不動産贈与時の費用の相場
土地と建物の価格をそれぞれ500万円と仮定すると、贈与で所有権移転登記をする相場は30万円程度です。売買と違い、支払いは贈与する側とされる側で話し合って決めます。親が不動産を子供に譲るなら、全額負担してもよいでしょう。離婚のための贈与なら、すべての手続きにかかる費用を含めて、均等になるようにします。
将来贈与の有無でトラブルを起こさないためには、さらに贈与契約書を作成します。その際は登記とは別に費用が発生し、10,000円程度かかりますが裁判でも証拠として使えます。離婚する際は作成しておくと、将来の遺産相続などでトラブルのリスクを下げることが可能です。
不動産相続時の費用の相場
500万円の土地で相続の所有権移転登記をした場合は、11万~15万円程度が相場です。登録免許税は売買や贈与の5分の1ですが、遺産分割の協議書を作成する必要があり、それなりの費用になります。
協議書の作成は、どれだけの遺産があるのかを特定したり、相続人の戸籍を集めたりするため、6万~10万円程度かかるでしょう。
登記費用を安く抑えるコツ
所有権移転登記は、相場で10万円以上かかる手続きです。価値のある不動産なら費用はさらに高額になるため、申請を躊躇してしまうかもしれません。そこで、安く抑えるために以下の2つのコツを紹介していきます。
- 自分で司法書士を探す
- 自分でできることは自分で処理する
自分で司法書士を探す
不動産の売買などでは、仲介の業者から司法書士を紹介されるケースが多いです。しかし、紹介料が上乗せされていたり、元々相場より高い報酬であったりする可能性があります。言われるままに費用を支払っていては、損をしやすいです。
所有権移転登記を依頼する司法書士の報酬は、事務所ごとに自由に設定されています。ホームページにかかる費用を掲載している所はあるため、複数社を比較して安い事務所を探してみましょう。
優良な司法書士を探すポイントとして、得意とする分野にも注目してみてください。売買や贈与、相続で必要になる手続きは変わってきます。減税や免税措置を正しく適用してもらうためにも、厳選は必要です。ホームページだけで判断できないなら、実際に相談してみてください。多くの事務所では、初回なら無料で対応してくれるでしょう。
自分でできることは自分で処理する
所有権移転登記の際に、必要な書類の発行費用や登録免許税を節約するのには、限度があります。しかし司法書士に支払う報酬は、やり方次第で大幅な減額が可能です。
一番の節約は、司法書士の力を借りずに所有権移転登記をすることです。減税できるかなど、専門的な知識が多少は必要になりますが、個人でも十分に可能な手続きなので、手間はかかっても司法書士へ支払う報酬分を節約できます。
節約方法はもう1つあり、司法書士に依頼しても、可能な限り自分の力で処理するというものです。設定されている報酬は、司法書士が手続きのすべてを請け負った場合を想定しています。しかし書類の用意や提出は、自分の力でもやりやすいです。減額に対応してくれるかは事務所によるため、交渉してみてください。
所有権移転登記費用を負担する人
所有権移転登記には高額な費用がかかり、一体誰が支払うことになるのか気になるところですが、実は法律では明確に決まっていません。手続きをスムーズに進めるために、売買・贈与・相続の3パターンで、どのように対応したらよいのかを解説していきます。
不動産の売買の場合は、基本的に購入する側が所有権移転登記の費用を全額支払います。名義変更をしないと新しい所有者になれないため、負担してくれるでしょう。しかし、なかなか購入者が見つからない不動産なら、売却する側が負担してくれる場合もあります。
不動産の贈与の場合は、当事者で話し合いをしましょう。特に離婚による贈与では、手続きにかかる負担も含めて、両者が納得できる割合にしなければ、裁判で決めることになりかねません。生前の贈与なら親族に負担をかけないように、元の所有者が全額支払ってくれることもあります。
不動産の相続の場合は、取得する人が負担することが一般的です。取得した人は資産が増えるため、所得者が負担するのが一般的です。しかし所得した不動産が、売却も困難で維持費が負担になる場合は、相続する代わりに所有権移転登記は、他の親族に負担してもらうという交渉はできます。
不動産売買の登記費用の負担者について、詳しく知りたい人はこちらの記事もおすすめです。

所有権移転登記の手続きの流れと必要な書類
所有権移転登記を自分で行いたい場合は、どのような流れで手続きをすべきか解説します。いきなり司法書士に依頼しようとはせず、まずは手順や必要な書類を揃えられそうなのかをチェックしてみてください。
移転登記の手続きの流れ
所有権移転登記の手続きの流れは、とてもシンプルで以下の4つのステップで完了します。
- 登記申請書への記入
- 添付が必要な書類を揃えて法務局に提出
- 登記の審査が終わるまで待つ
- 登記識別情報通知書・登記完了証を受け取る
登記完了証は、申請した内容が記載されているだけで、今後は他の手続きで使うことはありません。オンラインで申請しても、書面で受け取ることもできます。登記識別情報通知書は、登記の本人確認に使われる大事な書類で、12桁の不動産番号が記載されており、次の名義変更などの際にも必要です。
手続きは法務局に書類を提出してから、7~10日程度で完了します。窓口で受け取るためには、運転免許証などの本人確認書類と印鑑が必要です。完了から3ヶ月を過ぎると受領できなくなってしまうため、注意しましょう。受け取りに行けそうにない人は、あらかじめ返信の費用を支払っておくと、指定した住所に登記識別情報通知書が届きます。
手続きに必要な書類
手続きの際は、法務省の窓口やホームページで入手できる登記申請書以外にも、売買や相続、離婚での贈与について以下のような書類が必要です。
所有権移転登記で必要な書類
不動産の売買 | 不動産の相続 | 離婚による贈与 |
|
|
|
本人確認書類や登記識別情報以外は、基本的に市町村の役場で費用を支払い発行してもらいます。手続きを司法書士などに依頼している場合は、委任状を作成してもらい他の書類と一緒に提出します。
法務局のホームページには、申請書の様式と一緒に、記載例もダウンロードが可能です。注意事項も読みながら記入すれば、ミスは避けられるでしょう。
まとめ
所有権移転登記の費用を自分が支払うことになると、10万円を超えることも珍しくないでしょう。高額な不動産の名義を変更すると、費用はさらに高くなってしまいます。
登録免許税や、必要な書類発行などでの節約は可能ですが、やはり限界があります。一手間をかけてでも、司法書士を厳選したり自分で書類を作成したりするなど、いろいろと検討してみてください。手順を確認すると、意外に簡単にできる部分もあります。専門家に無料の相談もできるため、費用を少しでも抑えたい人は工夫してみましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
・https://www.retpc.jp/chosa/reins/
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
・https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021-fudousan-anke-to.pdf
◆記事で紹介した商品・サービスを購入・申込すると、売上の一部がマイナビニュース・マイナビウーマンに還元されることがあります。◆特定商品・サービスの広告を行う場合には、商品・サービス情報に「PR」表記を記載します。◆紹介している情報は、必ずしも個々の商品・サービスの安全性・有効性を示しているわけではありません。商品・サービスを選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品・サービススペックは、メーカーやサービス事業者のホームページの情報を参考にしています。◆記事内容は記事作成時のもので、その後、商品・サービスのリニューアルによって仕様やサービス内容が変更されていたり、販売・提供が中止されている場合があります。