日本は世界と比較しても税金が高い国だと言われています。普段から高い税金を負担しているので、土地の売却する際にできるだけ節税対策を実施しておきたいと考えている人も多いのではないでしょうか。適用条件を満たしていれば、土地の売却でも税金の控除を受けられる可能性があります。
本記事では、土地の売却にはどのような税金がかかるのか、節税対策に使える控除の種類、土地を売却した際の確定申告の必要性や確定申告の流れ、土地を高く売るために今すぐ実践できる簡単なコツなどを解説しています。
土地をできるだけ高く売却して節税対策を行えば、手元に多くの資産を残すことが可能です。土地売却の際に受けられる控除について知識を深めましょう。
土地売却の際に必要になる税金の種類
土地の売却では、次の3種類の税金が売主に対して課せられるケースが多いです。
- 所得税
- 住民税
- 印紙税
どのような場合に支払いが必要になる税金なのかを、1つずつ確認していきましょう。
所得税
土地の売却の際に利益が発生した場合に課せられるのが所得税です。所得税は給与所得からも毎月引かれていますが、土地の売却にかかる税金の中でも大きなウェイトを占めています。土地の売却金額から土地を取得する際にかかった取得費と、土地を譲渡する際にかかった譲渡費用を引いて算出した課税譲渡所得によって所得税額が決定されます。
課税譲渡所得の計算式は、次の通りです。
税額は課税譲渡所得に税率を乗じて計算しますが、税率は土地の所有期間によって異なります。土地の所有期間が5年を超えている場合は長期譲渡所得となり15%、5年以下の場合は短期譲渡所得となり30%です。
土地を短期間で売却すると2倍の所得税が課せられることを覚えておきましょう。所有期間によって税率が異なる理由は、土地転がしを抑制するためです。
住民税
前年の所得に対して課税されるのが住民税です。土地の売却により利益が発生した場合も、譲渡所得に応じた住民税を納める必要があります。住民税の税率も所得税と同じように所有期間によって変動するのが特徴です。
5年以下で土地を売却した場合は9%、5年超で売却した場合は5%なので、住民税も短期間で売却した場合は税率が2倍近くに跳ね上がります。
土地の売却で所得税と住民税の負担が必要になるのは、利益があった場合のみです。土地の売却により利益を得られない場合は、所得税や住民税の両方が非課税となります。
印紙税
土地の売買契約書など、特定の文書に対して課税されるのが印紙税です。印紙税は売買契約書に税額分の収入印紙を貼って納めます。印紙税の税額は土地の売却金額によって定められていて、法律により令和4年3月31日までは軽減税率を適用することが可能です。売却金額ごとの印紙税額は下記の表をご確認ください。
売却金額 | 印紙税額 | 印紙税額(軽減措置適用後) |
---|---|---|
10万円~50万円 | 400円 | 200円 |
50万円~100万円 | 1千円 | 500円 |
100万円~500万円 | 2千円 | 1千円 |
500万円~1,000万円 | 1万円 | 5千円 |
1,000万円~5,000万円 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円~1億円 | 6万円 | 3万円 |
1億円~5億円 | 10万円 | 6万円 |
売却金額が高くなっていけばいくほど、印紙税額も上がります。売買契約書に印紙税分の収入印紙を貼り忘れた場合は、過怠税として当初納めるはずだった印紙税額の3倍に相当する金額の税金を納めることになってしまうので注意が必要です。
土地売却の際に受けられる税金の控除の種類
土地の売却時には、以下のような特別控除を受けられる可能性があります。
- 居住用財産売却の際の3,000万円控除
- 相続した空き家の3,000万円控除
- 10年以上住んでいた家を売却した際の軽減措置
- 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 特定の居住用財産の買換え特例
- 土地のみの売却による非課税措置
控除によっては適用条件が定められています。自分の土地が控除の対象となっているかを確認しましょう。
居住用財産売却の際の3,000万円控除
土地に建っているマイホームを売却した場合は、譲渡所得から最高3,000万円を控除することが可能になる特例です。
土地の売却でこの特例を受けるためには、自分が居住用として暮らしていた家を売る必要があります。以前住んでいた家の場合は、家に住まなくなってから3年を経過する年の12月31日まで売らないと特例を適用させることができなくなるので注意が必要です。
家を解体してから売る場合は、解体の日から1年以内に土地の売買契約を結び、建物に住まなくなってから3年経過した年の12月31日までに売却を完了させなければなりません。
別荘として所有している家は適用できないなど、適用除外になるケースもあるので、自分の家が特例を利用できるか確認してみましょう。
相続した空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を土地ごと売却した場合に、譲渡所得から最大で3,000万円控除できる特例です。特例を利用するためには、平成28年4月1日~令和5年12月31日までの間に空き家の売却を完了させる必要があります。
特例の対象になるのは、空き家が以下の3つの要件をすべて満たしている場合のみです。
- 昭和56年5月31日以前に建てられている
- 区分所有建物登記がなされている
- 相続開始の直前に被相続人以外の人が居住していなかった
他にも細かい適用要件が設定されているので、自分の空き家が特例の対象になるかチェックしてみてください。
10年以上住んでいた家を売却した際の軽減措置
売却する土地に建っている家の所有期間が10年を超えている場合は、長期譲渡所得の税率よりもさらに低い税率で所得税や住民税の税額を計算できる軽減税率の特例です。
軽減される税率は、以下の表でご確認ください。
課税長期譲渡所得金額 | 税額 |
---|---|
6,000万円以下の部分 | 課税長期譲渡所得金額×10% |
6,000万円超の部分 | (課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×15%+600万円 |
この特例と3,000万円の特別控除を併用すれば、さらに税金を安く抑えることができます。特例を受けるための要件が設定されているので、利用する前に確認してください。
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
居住用財産の建っている土地を売却して新居を購入する際に、利益がなく損失があった場合は、譲渡損失を給与所得や事業所得から控除することで損益通算できる特例です。損益通算でも控除しきれなかった場合は、その後3年間にわたって繰り越し控除することができます。
繰り越し控除が適用できないパターンや、損益通算と繰り越し控除のどちらも適用できないパターンがあるので、土地の売却で損失があった人は詳しく調べてみてください。
不動産売却損の確定申告での節税方法について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をあわせて読んでみてください。

特定の居住用財産の買換え特例
居住用財産の建っている土地を売却し、新居を購入した場合は、課税譲渡所得に課せられる税金を将来家を売却するときまで繰り延べることができる特例です。住民税や所得税が非課税になるわけではありませんが、税金を一度に支払う負担を回避できます。
また、居住用財産の建っている土地を売却した金額より安い価格の新居を購入した場合は、所得税の課税が将来に繰り延べられるため、土地を売却した年の譲渡所得をなかったものとして扱うことが可能です。
買換え特例について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をあわせて読んでみてください。

土地の売却には消費税がかからない
建物がない更地を売却した場合は消費税が非課税になります。土地だけを売る場合は、売主が事業者でも個人でも消費税を支払う必要がありません。
また、個人の場合は建物を売却しても消費税が課税されることがないので覚えておきましょう。しかし事業者の場合は、事業に使用している建造物を売ると消費税がかかります。ただし、個人が土地売買を繰り返して事業並みの所得を得ている場合は、消費税が課税されてしまうので注意しましょう。
土地を売却する際に消費税がかかるのは、仲介を依頼した不動産会社に成功報酬である仲介手数料を支払う場合のみです。司法書士に登記を依頼する場合も報酬に対して消費税が課税されます。
土地売却した際の確定申告は必要?
土地を売却したときは確定申告をする必要があるのでしょうか。確定申告が必要かどうかの判断基準と、なぜ確定申告をする必要があるのかについて解説します。
利益が出なければ不要
基本的には、土地の売却で利益がなければ確定申告をする必要はありません。売却により、利益が発生した場合は確定申告を行い税金を納める必要がありますが、利益がなかった場合は税金が課せられないので確定申告が不要となります。
不動産売却で確定申告が不要かどうかについて、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をあわせて読んでみてください。

特例を受けるためには確定申告が必要になる
土地の売却で利益がなかった場合でも、特例を受ける場合は確定申告が必要です。損失があったことを申告しないと、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例など、損失があった場合に利用できる特例を受けることはできません。
確定申告は税金を納めるためだけに行うのではなく、特例を利用して控除を受けたいときにも必要であることを覚えておきましょう。
確定申告の流れ
一般的に確定申告は以下流れで行っていきます。
- 必要な書類を用意する
- 帳簿を整理
- 書類を作る
- 作成した書類を提出
流れを覚えて確定申告をスムーズに進めましょう。
1.必要な書類を用意する
土地の売却後に行う確定申告には、以下のような書類が必要になります。
- 確定申告書B様式(第一表・第二表)
- 申告書(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書附票・計算明細書)
- 土地の売買契約書のコピー
- 土地の登記事項等証明書(全部事項証明書)
- 領収書(仲介手数料などの譲渡費用がわかるもの)
- 取得費がわかる書類
- 戸籍の附票
受けたい特例によっては、この他にも書類が必要になる場合があります。直前になって慌てないように、確定申告に必要な書類は前もって準備しておきましょう。
確定申告で必要になる書類について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をあわせて読んでみてください。

e-Taxを使うならICカードリーダーも用意
国税の電子申告・納税が可能なシステムのe-Taxを使って確定申告を行う場合は、必要書類にプラスして、以下のものを準備する必要があります。
- ICカードリーダー
- マイナンバーカード
マイナンバーの通知カードで電子申告することはできません。マイナンバーカードをまだ発行していない場合は、交付まで1ヶ月以上かかる可能性があるので、e-Taxを利用する予定があるなら早めに発行しておきましょう。
2.帳簿を整理
必要書類の準備が完了したら、帳簿を整理するための仕分けにとりかかります。帳簿を整理するために、以下の書類を集めておきましょう。
- 受領書
- 領収書
- 請求書
- クレジットカードの明細書
仕分けを間違えると税金の計算も間違えてしまうので、帳簿の整理は正確に行うことが重要です。白色申告と青色申告では記帳の方法が異なるので、ミスがないか都度確認しながら行ってください。
確定申告で必要経費として申告できる内容について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をあわせて読んでみてください。

3.書類を作る
帳簿の管理が終わったら、確定申告に必要な書類の作成にとりかかります。直接手書きで記載するか確定申告専用のソフトを使って作成することが可能です。税理士に依頼すれば作成の手間を省くことができますが、報酬を支払う必要があります。
確定申告が初めてで書類の作成に自信がない場合は、税務署内の確定申告書等作成コーナーを利用してみましょう。わからないところを税務署の職員に質問することができます。市区町村によっては確定申告の時期になると相談会を開いているケースがあるので、役所に確認してみましょう。
4.作成した書類を提出
確定申告書の作成が完了したら、最寄りの税務署に持参して書類を提出します。郵送で提出することも可能ですが、通信日付印の期日が提出日とみなされるため、なるべく早めに郵送してください。e-Taxであれば、パソコンを使って自宅から電子申告することができます。
確定申告後は納付期限までに所得税の納税を行います。住民税は確定申告後に納付書が送付されてくるので、納付書の内容に従って納税を完了させてください。
土地を高く売るコツ
土地を高く売るためのコツは、以下の通りです。
- 境界を明確にする
- 土壌汚染調査をする
- きれいな状態を保つ
土地の売却でより多くの資産を得るためには、節税だけでなく土地を高く売ることも重要になってきます。土地を高く売るためのコツを実践してみましょう。
境界を明確にする
隣家の境界が曖昧な土地は、売却後トラブルが起きる可能性が高いため、購入希望者から敬遠されて売れ残ってしまうケースが多いです。土地の境界が確定している土地は高く売れやすいので、法務局で発行できる確定測量図で境界を確認し、確定させましょう。
確定測量図が作成されていない場合は、土地家屋調査士などの専門家に確定測量を依頼する必要があります。土地の境界は土地の価値を決めるための大事な要素になるので、費用を負担してでも確定測量を行ってください。
確定測量について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をあわせて読んでみてください。

土壌汚染調査をする
土地の土壌汚染を気にする買主も増えているので、信頼を得るために土地の土壌汚染調査を実施しておくこともおすすめです。土地の汚染調査を行わずに売却して後から地中埋設物や汚染が発覚した場合は、撤去費用や損害賠償を請求される可能性があります。
売主も買主も安心して取引を行うために、土壌汚染調査の実施を検討しましょう。
きれいな状態を保つ
土地の購入希望者が現れると、不動産会社は土地の見学対応を行いますが、見た目がきれいな土地の方が、見学に来た購入希望者の印象も良くなります。
土地に雑草が生えていたり、ゴミが落ちていると購入希望者の印象がダウンして土地が高く売れなくなってしまうので、見学に備えて土地の定期的な清掃を実施してください。土地が遠方にあって頻繁に様子を見に行けない場合は、業者に管理を依頼しましょう。
まとめ
土地の売却にかかる税金は特例を利用して特別控除を受けることで負担を軽くすることが可能です。特例には適用条件が定められているケースがほとんどなので、自分の土地が対象になっているかを事前に確認しておきましょう。
控除を受けるためには、売却で儲けがあった場合も損をした場合も確定申告が必要です。スムーズに申告できるように、必要書類の準備や帳簿の整理を行ってください。
土地を高く売却するコツと節税対策をしっかり実践し、資産形成に役立てましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
・https://www.retpc.jp/chosa/reins/
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