ワークスベストプレイバック Part.2

――少し以前の作品についてもお伺いしたいのですが、弊誌では第2弾の「音のコンパス」について振り返っていただけますでしょうか

霜月「『音のコンパス』は、今回もお世話になっているティームエンタテインメントさんと組んで初めて出したワークスアルバムです。今思い返せば、けっこうこのタイミングで"初"のつくことが多くて、すでに200回以上も続いているWEBラジオを始めたのもこの頃ですし、2008年という年は、今に繋がっている活動のルーツというか、始発点になっていることが多いです。自分のバンドに『ウィルド・ラッド』という名前をつけたのも、この年のソロライブからでした。ライブ自体は2年振りだったんですけど、最初にやった『Lv.1』の頃はまったくの手探り状態で、自分のライブを自分でプロデュースするということがまったくわかっていなかったんですよね。そこにバンド名をつけたりし始めたのが2008年のライブから。あと、『音のコンパス』のジャケットで、私の声をイメージしてTivさんに描き下ろしてもらったコンパスちゃんは、今回の『想いのコンチェルト』にも登場していますし。そういった意味で、2008年は現在に繋がっているいろいろな事柄の起点になっている年だと思います」

2008年にリリースされたボーカルワークスベスト第2弾「音のコンパス」のジャケットイメージ

――そういう意味で、最初のワークスベストである「あしあとリズム」から変化したところはありますか?

霜月「ワークスアルバムの場合、そのときそのときで収録する楽曲が変わってくるので、意識するしないに関わらず、自然と変わってしまうところもあるのですが、コンセプト自体を変えようとは思わなかったです。逆に、自分の中で踏襲したかったところ、表題曲を書き下ろすというところなんですけど、それについては新しいレーベルのティームさんにやらせて欲しいとお願いしました。『あしあとリズム』を作ったときは、まだ先のことなど考えていなかったんですけど、2枚目の『音のコンパス』を作るにあたり、自分の活動を思い返して、今感じている気持ちを表題曲で表現するということは続けたかったんですよ。なので、まずはそこを理解していただくところから始まった感じです。中身に関しては、そのときどきのタイアップ曲によって変わるので、全然違うものになっていると思いますが、その表題曲を書き下ろすというコンセプトだけは意識して残した部分になります」

――そのコンセプトは現在までも続いていますよね

霜月「難しい部分はあったと思うんですよ。レーベルが変わっているのに、第2弾と言ってもいいのかなって思いもありましたし。ただそれは、あくまでも霜月はるかのアルバムとして手にとっていただく方にとっては関係のないことじゃないですか。霜月はるかの2枚目のワークスアルバムとして安心して手にとっていただけるような道筋は、私が作るしかないわけですよ。なので、そこはちょっとお願いして、ご協力していただいたという感じになりました」

――そうして出来上がったのが表題曲の「音のコンパス」

霜月「表題曲を作るときは、まず自分と向き合う作業から始まるんですよ。私は今、何を考えている? というところから始まり、自分が感じている気持ちをどのような形にすれば、人にも届き、かつ自分でも素直な気持ちだと思えるか……すごく悩みます。でも逆に、そうやって自分と向き合って書いた歌詞だからこそ、日記のような感じで、その時の自分の心境が垣間見えたりもします。いろいろな活動の始まりということもあり、次のステップに向けてどういう風にしていこうか、手探り状態で悩んでいた時期だったんですけど、結局のところ、歌を歌うことによって勝手に道が開けていく、そういうところを主軸にして考えるべきだよなって。どんなに悩んでも、やっぱり歌うのは楽しいし、その楽しいことが自分にとっては大事なことなので、それを中心に考えていくべきだと思っていた時期なんですよね。だから、自分の音楽が方位を示すコンパスになったり、そこを起点にして、製図用品のコンパスで輪を描くように、活動をドンドンと広げていきたい。そんな気持ちが、あらためて歌詞を見たり、曲を聴いたりすると思い出されてきます。本当に日記を読み返しているような気持ちですね」

――ちなみに「音のコンパス」というのは、アルバムのタイトルが先ですか? それとも曲のタイトルが先ですか?

霜月「そこは同時進行ですね。結局、表題曲を書くというのが前提なので、まずは曲の草案ができないと、タイトルが決まらないんですよ。なので、まずは何を曲にするかを考えた後、タイトルを決めて、それにあわせて曲を書いていくという感じです。アルバムのタイトルって、ちょっと早めに出さないといけないじゃないですか、アルバムの情報として。だから『タイトルはまだですか?』って言われると、『ちょっと待ってください、自分と向き合ってきますので』みたいな(笑)。下手にタイトルを決めてしまうと、曲作りに影響してしまうじゃないですか。ある程度、自分でどういう曲を書くかが決まらないと、アルバムのタイトルも決まらない。毎回そこが大変なところです」

(次ページへ続く)