――喜多村英梨の魅力をそのまま歌に出していくという感じですか?

喜多村「もちろん、それは私のボーカルだけでできることではないと思うんですよ。そういう意味では、実際、スタチャのスタッフさん一同が、喜多村英梨の人生における歌の部分を背負ってくださっているというのが痛いほどよくわかったのが、カップリング曲ですね。今回のシングルのリード曲になる『Be Starters!』はタイアップがついていますが、カップリング曲には言わば何の制限もない。じゃあ、どうする? って話になったとき、私の好きなこと、今考えていることを突き詰めていきましょうって、私がお願いするまでもなく、先に場所を与えてくださったんですよ」

――カップリングには喜多村さんの意見が強くとりいれられているわけですね

喜多村「言うだけならタダなので(笑)。私が言ったことに対しても、いいものはちゃんと実現してくださるし、ものによっては『それはまだもったいないかもね』って、否定ではなく、歩み寄りという形で進めてくださる。私自身、『和』の雰囲気や耽美な世界観が好きなんですよ。ARTERY VEINも耽美な世界観でやっていますけど、『和』という感じではなく、どちらかというとゴシックなところが際立っているユニットなので、意外と今までやってきていないフィールドかもしれません。キャラクターでもあまり和キャラみたいなものはやったことがないですし。音楽に関しては、ジャンルを問わず好きですし、何でも聴くんですけど、ただ喜多村英梨という声優アーティストが歌うサウンドには『和』の要素を盛り込みたいという話を漠然とさせていただいたんですよ。そうしたら、せっかくだから、カップリングに入れて、これが本物の喜多村英梨であり、喜多村サウンドですというものを作りましょうという話になりまして」

――そして出来上がったのが「彩-sai-」

喜多村「『Be Starters!』は『Be Starters!』で、その世界に入っていけていると思いますが、『彩 -sai-』は『彩 -sai-』で、すごくその世界観にはまり込んで、好きなように、自由に泳げたと思います。『彩 -sai-』の作詞・作曲は山崎寛子さんという女性の方なんですけど、山崎さんにとってもこの曲がデビュー曲になるということで、みんな『Be Starters!』じゃないですか! みたいなところもあったのですが(笑)、実際に曲を聴かせていただいたときも、すごく自分に通じるところがあるなって思ったんですよ。私の好きな世界観だし、詞もすごく共感できるところがある。自分が作り出すものに対しての責任感、そこにがむしゃらに向かっていくところ、そしてちょっと後ろ向き(笑)。そういったところが私と似ているのかなって思いつつ、これは山崎さんの詞なんだけど、喜多村そのまんまの歌詞だなって思いました」

――相変わらず「後ろ向き」なんですね(笑)

喜多村「もちろん、超マイナス思考ですから(笑)。マイナス思考ゆえに、そこからどうやって凛としていくかというところで、『ちょっと肩肘を張りすぎじゃない』って言われることもあるので、そのあたりも『彩 -sai-』にはあえて盛り込んでいこうと思いました。ジャケットやPV撮影のときも、本当の喜多村英梨をレンズの前に立たせるというところで、周りのスタッフさんも、あまりにマイナス思考の私を落ち込ませないように、すごく気をつかってくださるんですよ。『喜多村さんの好きなようにやりましょう』みたいな感じで、すごく持ち上げられたので、私自身も舞い上がっちゃいました(笑)」

――それではあらためて曲についてお伺いしたいのですが、『Be Starters!』を最初に聴いたときの感想はいかがでしたか?

喜多村「『ザ・私の中での大好きなポジティブな曲』という感じでした(笑)。1stシングルの1トラック目は、まぎれもなく私の曲ではあるのですが、誰もがその曲の主人公になれるような曲にしたい、みんなのオープニングテーマになればいいなと思っていたんですよ。なので、もうこれだ、と」

――『まよチキ!』のオープニングテーマというだけでなく、みんなのオープニングテーマというわけですね

喜多村「朝起きて最初に聴く曲でもいいですし、登校中や通勤中に聴くBGMでもいい。とにかくこれから始まるんだという躍動感のようなものを与えられる曲を歌いたいと思っていたので、まさにこの曲という感じで、ドンピシャでした。キタコレみたいな(笑)。最初にメロディラインを聴かせてもらったときから、耳なじみが良く、すごく印象に残る感じで、つい口ずさみたくなる。サビの部分も、まさにこのメロディラインだなって感じでした」

――実際に曲を聴かせていただいた感想としては、4分弱の曲なのにすごく短く感じたんですよ

喜多村「確かにそうですよね。そういう意味では、何回もリピート再生しようって思ってもらえる曲なのではないかと思います。最初から、できるだけシンプルにしようという思惑があって、いろいろと脚色したり、Dメロなどで仕掛けるということももちろんできたのですが、今回のテーマは、『シンプルで飾り気はないけど、何か気になる』。これはビジュアル面でもそうですし、歌詞にしてもそう。大事なことは繰り返していうけど、遠回りはせずにシンプルに。なので、あえてDメロなどはつけていないですし、メロディフレーズも繰り返しが多い。何も難しいことはせず、とにかくシンプルにしつつも、つまらない曲ではなく、シンプルがゆえに中毒性のある曲。そんな感じになればいいなと思っていたので、短く感じたという意見を聞くと、ホッとします(笑)」

(次ページへ続く)