――そこに大きなこだわりがあるわけではないんですね

喜多村「そういった感覚は紛れもなく自分のものなんですけど、やはり、今までにそういった喜多村を見たことがない人には、『喜多村、どうしてそんなフリフリした衣装を着ているんだ』とか、『何で喜多村がピンクの小物をつけているんだ』みたいなことを言われたりもしますが、私自身としてはそこでムリをしているという感覚はないんですよ。今回のアーティスト活動も同じで、今までの喜多村像を壊すというのもあるのですが、実際のところは、もともとあったんだけど、お見せする機会がなかったものを出すという程度であって、まったくムリはしていませんよって胸を張って言えます。ジャケ写にしてもPVにしても、自信を持って喜多村英梨ですって言えるものがあります。ただ、その反面、ツッコまれたら恥ずかしいなって気持ちも同時にあったりしますが(笑)」

――そこには役者・喜多村英梨として、アーティスト・喜多村英梨を演じるといった面はあるのでしょうか?

喜多村「何かひとつ、目標のようなものは立てていると思うんですよ。カッコいいというフィールドを与えられたら、喜多村英梨がやるカッコいいとは何か?、まだ見せたことはないけど、みんなが思うカッコいい姿を新たに作るぞっていう気持ちは常にありますから。目標に向かって突き進んでいくというのは、役を演じるにしても、イベントに出るにしても同じことで、たとえばラジオだったら、毎回の放送が"神回"って言われたらいいなって気持ちがあったりします。これまでアーティストとして、喜多村名義で出させていただいたものもありますが、何かひとつの着地点のようなものがあったと思うんですよ。でも今回は未知数の部分が多い。これまでのような、目標があって、そこにパーフェクトにたどり着ければいいという作業から、今回の喜多村英梨の歌人生においては、この先に何が起こるかわからない。タイアップがつくかどうかもわからないし、どんな曲を歌うことになるのかもわからない。何もわからない中での終わりなき旅みたいな感じなんですよ」

――今回のアーティスト活動ではゴールが設定されていないということですね

喜多村「そうですね。今回のアーティスト活動においては、あえてこうしていこうとか、ああしていこうといった、年間計画みたいなものは、まだ私の中にはありませんし、逆にそれがいいのかなって思っています。そのときそのときで、自分の好きなものだったり、流行っているものだったりを、歌というフィールドを使って素直に表現していく。『これも今の喜多村です』みたいなものを、皆さんにお見せできればいいなって。その手段が、今までは演じる役だったり、作品のイベントだったりで、いろいろな看板を借りて、そこに便乗しているという感覚が強かったのですが、今回は喜多村発信のフィールドになりますから、感覚的にはまったく別ですね」

――喜多村さんは歌い手として、数々のキャラクターソングを歌ったり、「ARTERY VEIN」としてのユニット活動をなさっていたりしますが、今回はソロアーティストということで、やはり気持ちの上で何かプレッシャーのようなものはありますか?

喜多村「全然ありますね。ただ、プレッシャーと呼べるのかどうかもわからないぐらい、未知数すぎて(笑)。これをプレッシャーと言っていいのか? ぐらいの、不安があり、そして漠然とした悩みみたいなのがあります」

――そのあたりは、キャラソンを歌う場合とは大きく違うところですね

喜多村「キャラクターだったら、ドヤ顔でいけますもんね(笑)。本編の収録を重ねてきているので、このキャラがこの歌を歌うとしたら、絶対にこう歌いますって言えますから。すごくストレートにイメージが固まるんですよ。ユニットでやらせていただいている『ARTERY VEIN』だと、ARTERYさんとVEINさんではないですけど、やはりユニット内でのイメージ像にぶれない方向性があり、曲のジャンルも『ARTERY VEIN』としての色があるので、どこまでも突き詰めていくことができる。もちろんそこには難しいところもあって、喜多村英梨じゃないものをやるけど、キャラクターのようでキャラクターではない。そのあたりのせめぎあいを重ねながらのレコーディングにはなっています」

――それが喜多村英梨個人となると……

喜多村「もちろん、そういったことは喜多村個人でも同じなのかもしれないし、キャラクターとして"喜多村英梨"という人物を武器に使うこともできると思うんですよ、でも、幅広くなっている分、まとめるのが大変だろうなって(笑)。ジャンルにしても、女子アンティークな感じだけでやっていくと宣言しているわけではないので、それぞれのフィールドにおいて、うまく自分の持っている武器を間違えずにはめ込んでいかなければいけない。そのあたりがちゃんとできるかなっていう不安はありますし、それと同時に、これからどんな曲がくるんだろうっているワクワク感もあります」

――喜多村英梨というキャラクターを武器にしつつも、喜多村英梨という人物を演じるわけではないですよね

喜多村「『声優って何ですか?』って聞かれると、『人生』っていつも答えているのですが、やはり、自分の生き様を武器として使っていくという意味では、歌も同じだと思っているんですよ。歌というフィールドにおいては、声優・喜多村英梨はまだまだ勉強不足で、プロのアーティストさんと対等に戦うことはできないけれど、プロのアーティストさんが体験していないところで培ってきた、世界観だったり、キャラクター像だったり、何らかのイメージだったりに潜り込んでいけるイマジネーション能力みたいなものは、もしかしたらあるかもしれない。そういう点にはちょっと自信があるので、アーティストとしての喜多村英梨になりきって歌うというのではなく、喜多村英梨がその曲の世界観に潜り込んで、そこにバシッとはまる……そんな感じで、技術を上回る気持ちで歌う"喜多村節"みたいなものを確立していけたらいいなと思っています」

(次ページへ続く)