俳優としても、いい意味で“ネタ”になっていたのが、『大病院占拠』で演じた青鬼。口だけが見える色違いの面をつけた11人の鬼たちは、誰が演じているのか伏せられていたため、ネット上は演じる俳優の予想で盛り上がっていたが、リーダーの青鬼だけは当初からバレバレだった。菊池の特徴的な口を見たらバレてしまうことは制作サイドも分かっていて、あえてキャスティングしたのではないか。

さらに言えば、今年1~2月には『ギバーテイカー』(WOWOW)に準主役として出演し、猟奇殺人犯を演じていた。これも菊池の振り幅の大きさを示すとともに、「連ドラのメインキャストとして年5作に出演」というバイタリティを物語っている。

専業の俳優でも、これほどのスケジュールをこなすことは不可能に近いが、バラエティやアイドル活動もある菊池の忙しさは、もはや想像できないレベル。それでも、テンションは下がらず、ルックスに疲れも見えず、演技や笑いの精度も下がらないのだから、現場は忙しさを知った上でオファーを出せる。このタフさは今後も菊池へのオファーを支えていくだろう。

そして、テレビマンたちから何度か聞いたことがあるのは、「待てる」「間が作れる」という長所。アイドルがバラエティに出ると、笑いを取ろうと頑張りすぎてしまい、時に現場で浮いてしまいがちだが、菊池にそのようなケースは少ないという。ガツガツと前に出て行くシーンはほとんどなく、自分の順番を微笑みながらじっくり待てるから、共演者のトークや笑いを分断しない。

逆に共演者からイジられたときはテンポよく返せることも含め、収録のチームワークやトークのキャッチボールを意識できることが大きいのだろう。語弊を恐れずに言えば、菊池は「人がいい」というより、肝が据わっていて周りの「人が見える」のではないか。

そのチームワークとトークのキャッチボールは、40歳の二宮和也と中丸雄一、30歳の山田涼介と行う登録者数400万人超のYouTubeチャンネル『ジャにのちゃんねる』でも同様。ここでは誰より元気に場を盛り上げながら、合いの手やツッコミを入れて先輩3人のトークをつないでいく姿に、業界内の評価は高い。ここで見せる菊池の姿は、バラエティでいうところの「笑いを取りながら裏回しができる」という稀有なタレントなのかもしれない。

  • 菊池風磨を「めちゃくちゃ面白いアイドルになっている」と評する『ドッキリGP』『何か“オモシロいコト”ないの?』のフジテレビ中川将史氏

■グループより個人で売れるすごみ

アイドルの枠に留まりながら、真逆に振り切ったトップ芸人レベルの笑いを生み出し、しかも「待てる」から共演者を殺すことがない。加えて、20代らしい元気や明るさがあり、年上からかわいがられるキャラクター。アンチがつきもののアイドルでここまで「嫌い」と言われる要素が少ないのは珍しい。

例えば、前述した全裸ドッキリも、もしパンイチドッキリに留めていたら、もっとアンチがいたのではないか。全裸まで振り切りながらアイドルとしての姿をギリギリ残すパフォーマンスは、他のアイドルファンも頑張りを称えざるを得ないし、男性層ですら「すごい」と認めざるを得ないものがある。そんなSexy Zoneのファン以外からも一目置かれていることが、テレビマンたちから「起用したい」と言われる理由の1つとなっている。

SMAP、TOKIO、V6、嵐、関ジャニ∞、Hey! Say! JUMPなどの先輩グループを見ても、グループより個人がこれほど多くのバラエティとドラマでオファーを受けたケースは見当たらない。B.I.ShadowとSexy Zoneで基本的にセンターではない菊池がそれを成し遂げたところに、ポテンシャルを感じさせられる。

後輩グループにあたるSnow Man、SixTONES、なにわ男子らの人気と勢いはすさまじいが、それはあくまでグループ先行であって、個人に対するオファー数は菊池のほうが突き抜けている。そんなアイドルの王道から外れた成り上がり方も、ファン層以外から批判を受けにくい強みなのかもしれない。