ロシアによるウクライナ侵攻から2ケ月が経過する中、ウクライナでの戦況は悲惨さが増しているが、プーチン大統領は強気の姿勢を堅持し、欧米主導の対露経済制裁は強化され続けている。

既にこの問題の長期化は避けられず、ロシアでの経済活動再開という選択肢は非現実になっている。

企業のロシア離れは鮮明に

2ケ月が経過する中、日本企業のロシア離れは加速化。

ジェトロ(日本貿易振興機構)が3月末に発表した企業アンケート結果によると、今後半年から1年後の見通しとして、「ロシアからの撤退」と回答した企業が6%(ロシアに進出する企業211社のうち回答した97社が対象)に達し、同様に「縮小」(38%)、「分からない」(29%)、「現状維持」(25%)、「拡大」(2%)と半数近くの企業がロシア離れの考えを示した。

また、ジェトロがロシアによる侵攻前にも同様の調査を実施したが、その際「縮小」が17%だったころから、軍事侵攻で日本企業のロシア離れは一気に拡大した。

さらに、帝国データバンクが4月に発表した企業調査結果(全国2万4,561社対象で有効回答が1万1,765社)によると、ウクライナ情勢について、「既にマイナスの影響がある」と回答した企業が全体の21.9%を占め、同様に「今後マイナスの影響がある」(28.3%)、「影響はない」(28.1%)、「分からない」(20.7%)、「プラスの影響がある」(0.9%)と全体の半数近くでマイナスの影響が聞かれた。

上記2つのアンケート調査では、企業のロシア離れがかなり進んでいることが鮮明になったが、この問題が長期化すればするほどロシア離れの企業数はさらに増えることだろう。

仮に、情勢が落ち着いたからといってロシアでの経済活動を再開する企業があったとしても、そういった企業の企業イメージが悪くなる恐れがあり、また、脱ロシアを完了した欧米企業などとの付き合いが悪くなり、返って経営状況が悪化する可能性もあるだろう。

上述のアンケートで、現状維持や拡大、影響はない、プラスの影響があると回答した企業は、今後世界の企業からどう思われているかという部分で難題に直面するかも知れない。

一方、ロシア離れといっても、それが部分的にも第3国へのシフトという形で順応可能な企業もあれば、ロシア離れが倒産レベルになるロシア依存企業があるのも事実だ。

筆者の周辺でも、「岸田政権がロシアと距離を置いても、我々の企業はそうはできない」といった声が聞かれる。こういった企業が取れる選択肢は、ロシアによるウクライナ侵攻、それから波及する大国間競争という地政学リスクが深刻化する中でも、その影響を最小限に抑えながら経済活動を継続、再開することしかない。

米国と欧州で「制裁強度」に違いが出る

では、地政学リスクが深刻化しても、そのリスクの中で経済活動ができるのかというと、答えはできるとなる。例えば、メディアで報道されているように、欧米主導でロシアへの経済制裁が強化されているが、ロシア産天然ガスでは米国と欧州ではその依存度が大きく異なるので、いつかは対露制裁を巡って米国と欧州との間で"制裁強度"の違いが出てくることになろう。

要は、日露関係においても、外交関係が悪化したからといって、"ブロック経済化"になることは経済のグローバル化が進んだ今日では非現実的で、関係が悪化する中でも経済活動を実施、再開することは可能だ。

今回の件で、日本企業が大きく困惑していることは間違いない。しかし、企業によって立場が千差万別であり、その後も行動も企業によって大きく異なっていくことだろう。