テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、IT企業経営者としての経験も持つ弁護士・中野秀俊氏が、企業がフリーランスに外注する際に気を付けたい「偽装請負」について語ります。

  • 企業のフリーランス対応「偽装請負」に気を付けよう


スタートアップ・ベンチャー企業では、自社の社員で全ての業務をこなせないので、外部の人に外注することが頻繁に行われています。このときに、いわゆるフリーランスに外注することが多いのですが、そのときに、発注する企業としては、法律上気を付けるべきことがあります。

また、今フリーランスで働いている人も、これから解説する扱いを発注先から受けた場合には、法律違反の恐れがあります。発注先の企業に、改善を求めるなどの対応が必要になるかもしれません。ぜひ知っておきましょう。

「偽装請負」に気を付けよう

社会的な問題になっているものとして「偽装請負」があります。偽装請負とは、実質的に雇用関係にあるにもかかわらず、企業が社会保険の負担や労働法令のルールを守らなくてもいいように、業務委託の形式で仕事をさせることです。

確かに企業としては、雇用してしまうと、原則解雇ができない、社会保険の負担が発生するなどの不利益が発生します。そこで「業務委託契約」という形にして、この負担を回避しようというものです。

しかし、業務委託として契約すれば、このような回避できるかというと、そんなことはありません。実質的な雇用にも関わらず、業務委託で契約して、労働関連法の適用を回避するのは、「偽装請負」として、禁止されています。

偽装請負になるかの判断基準としては、厚生労働省がガイドラインを出しています。ぜひ一度目を通してみてください。

・旧労働省告示(「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」昭和61年労働省告示37号。以下「37号告示」)
・厚生労働省のガイドライン(労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド)

フリーランスへの拘束はNGです

「偽装請負」にならないために、どういうところに気を付ければよいのでしょうか。

雇用されている、いわゆるサラリーマンであれば、会社からの細かい指示があり、それを行うこともOKですが、フリーランスについては、あくまでフリーランスの方が主体的に任された仕事を進める必要があります。

たとえば下記のような事情は、「業務委託」として認定される可能性が高いです。

・業務の遂行方法に関する指示やその他の管理を自ら行うこと
・労働時間(始業及び終業時刻,休憩時間,休日,休暇等)について、フリーランスが決める(発注する会社が、具体的な拘束をしない)
・作業場所は、フリーランスの自由(そこでしかできない作業を除く)
・業務に必要な費用は、フリーランスが調達している

また、報酬についても、次のような場合であれば、「業務委託」と認定とされる可能性が高いです。

・作業時間に関わらず、月額〇〇円とされている
・欠勤しても報酬が減額されない

フリーランスはあくまで企業とは別の事業体ですので、過度な拘束・干渉をしてしまうと、実質的に「雇用」とされてしまう可能性があります。

仮に、偽装請負だと判断されてしまうと「指導」「改善命令」「業務停止」などの行政処分のような処分が課されるケースもあります。また、刑事罰の適用対象にもなります(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金or6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)。

発注する企業側はもちろん、仕事を請けるフリーランス側も十分に注意しましょう。

執筆者プロフィール : 中野秀俊

グローウィル国際法律事務所 代表弁護士、グローウィル社会保険労務士事務所 代表社労士、みらいチャレンジ株式会社 代表取締役、SAMURAI INNOVATIONPTE.Ltd(シンガポール法人) CEO。
早稲田大学政治経済学部を卒業。大学時代、システム開発・ウェブサービス事業を起業するも、取引先との契約上のトラブルが原因で事業を閉じることに。そこから一念発起し、弁護士を目指して司法試験を受験。司法試験に合格し、自身のIT企業経営者としての経験を活かし、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動。特に、AI・IOT・Fintechなどの最先端法務については、専門的に対応できる日本有数の法律事務所となっている。