オフィスの引っ越しと共に始まった「ワークスタイル変革」。営業部門がいる2フロアでは、「自分の机」を持たない社員たちが好きなところで好きなように仕事をしていた。最終回となる今回は、一番気になる「個人の荷物をどうしているのか」を紹介したい。

ロッカーの秘密

打ち合わせコーナーや、図面用の大きめデスクの置き場所を確保するため、個人のデスクを置かないという選択をした新川第2オフィス。それぞれの荷物の収納場所は、各自に割り当てられた鍵付きのロッカーだ。大きさは駅にある標準サイズと同じくらい。決して大きいとは言えないし、一番下のロッカーに当たった人から文句が出そうだが……。

扉にマグネット式の名刺入れをつけて、場所を管理している

長谷川さん「使いにくさの不公平感をなくすために、ロッカーを定期的に入れ替えるルールがあるんです。この運用ルールのおかげで、ロッカーや書類の整理も定期的に行うことができます。ロッカーが書類で溢れたり、雪崩が起きるという悲劇も防げます(笑)」

デスクに持っていくのはこのファイルボックス

ちなみにロッカーの中にはコンセントが有るので、退社時にノートPCを充電しておくことができる。公平性を保ちつつ中身の見直しが行え、しかもPCの充電設備付き。この一石三鳥の仕組みがあるから、収納が小さなロッカー1つに収まるのだ。  

タコと由緒あるプロジェクター

最後にやってきた4Fは営業支援部隊が在籍しているフロア。デスクワークが主な仕事のため、フリーアドレスではあるが、全座席にモニターを設置している。これにより、どこでも仕事を2倍速で進めることができるようになっているのだ。

ここでもアクティブコモンズ制を導入している

ちなみにこの写真の右奥にある白い機械、デスク用のプロジェクターなのだが、この拡大写真を見てほしい。

Enigma Engine Soft社…?

「エニグマエンジンソフト社」、聞き覚えがある人もいるかもしれない。そういえば、木村拓哉さん主演のドラマ「安堂ロイド」(TBS)に出てきた会社のような…。なぜそれがここに?

長谷川さん「実は新川第2オフィスが、ヒロインの柴咲コウさんが働いていた『エニグマエンジンソフト社』のロケ地なんです。撮影にはオフィス家具も提供したんですよ」

何と! 柴咲コウさんが内田洋行に!? 長谷川さんによると、近代的な雰囲気がドラマにマッチしているということで、撮影場所として選ばれたのだという。ちなみにそのときの様子は、内田洋行のHPにも書かれている。

そんな由緒ある(?)プロジェクター。もしかしたら柴咲さんが触ったかもしれないので、一応触っておいた。

思いもよらないサプライズをうけ、ほくほく顔で4Fを後にしようとする一同。エレベーターを待っていると、後ろから視線が……。

なんじゃこりゃー!!

長谷川さん「これはタコマツです」

タコマツ!? 確かに足が生えているが、タコ??

長谷川さん「タコマツは、内田洋行のデザイナーによる東日本大震災復興支援プロダクトなんです。間伐材や被災木を原料にしていて、収益の一部が寄附される仕組みになっています」

左からコーンマツ、タコマツ、コーンマツ、イカマツ

後日見たタコマツのHPには「タコマツを知って! もっと愛して!」と、今どきの草食系男女に聞かせてやりたい情熱的な求愛メッセージが。タコながらうっかりほだされかけた。

内田洋行の未来

以上が、我々が見せていただいた新川第2オフィスだ。同オフィスはデザイン性だけでなく、働きやすさ、効率もきちんと計算されていることがお分かりいただけただろうか。

実践の過程からも伺えるが、アクティブコモンズの導入は簡単にできるものではない。平山さんが「自分の収納を全部なくすのは結構勇気がいる」というように、自分のスペースが「ロッカーだけ」になるのは心もとない。だが、やってみたらわかるメリットは内田洋行によって実証されている。未来の働き方は、自分のスペースにとらわれすぎない方向へ広がっていくのかもしれない。

最後に長谷川さんは、すぐ近くの本社ビルにあるコーポレートミュージアムへ連れて行ってくれた。

中は未来のような空間

この丸い大きなガラステーブルは「プロジェクションテーブル」。壁には、内田洋行のプロダクトを模した「アイコンキューブ」が年代ごとにはめこまれており、このキューブをテーブルの端に置くと、当時の歴史と商品の説明がテーブルの表面に現れる仕組みだ。

アイコンキューブがはめこまれた壁は「2090年」まで。内田洋行は今後どのようになっていくのだろうか、長谷川さんに聞いてみた。

長谷川さん「今のICT(情報通信技術)の発展速度はすごく早くて、数年先にどうなっているかわからないような状況です。内田洋行も2090年は何をしているか想像するのは難しいですが、社会の役に立つ会社であり続けていればと思います」

明治43年創業の内田洋行は、歴史を大切にしながらも未来を見据えた、かっこよすぎる老舗企業だった。

ありがとうございました