「旨くて、安いラーメンが食べたい」。1杯1,000円を超える高級ラーメンも多いが、手軽で・旨くて・さらに安くラーメンが食べられるのなら最高だ。全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター・井手隊長が、旨くて安いアンダー700円のラーメンを紹介する。

今回は、兵庫県神戸市灘区の名店「竹家ラーメン」だ。

  • 神戸の名店「竹家ラーメン」


かつて北海道・札幌に「竹家食堂」という名店があった。大正11年創業のお店で、日本で「ラーメン」という名前を初めて使ったお店という説がある。

中華料理の専門店で、「肉糸麺(ロースメン)」という麺料理が人気だった。

メニューは人気だったが、メニュー名をなかなか覚えてもらえず、その後「柳麺(リュウメン)」という名前に変えた。お店の庭に生えていた「柳」がお店の麺に似ていたところから名付けられたそう。

それでも覚えてもらうことが難しく、さらに「拉麺(ラーメン)」と改名した。「拉」とは麺を引き伸ばすという意味である。加えて、料理が出来上がった時に「好了(ハオラー)」(「できました」の意)という掛け声があり、その「ラー」と掛けているという話もある。

ここで誕生した「ラーメン」という名称が広まっていったという話だ(諸説あり)。

「竹家食堂」は昭和18年に閉店しており、食べることができないが、神戸の灘区にこの「竹家食堂」出身のお店があることを先日知った。「竹家ラーメン」である。阪神大石駅より徒歩5分、西国街道沿いに黄色いテント屋根が見えてくる。外観からはシンプルな町中華のよう。店の前には行列ができている。

「みそらーめん+焼き飯セット」を注文。

店主が焼き飯とラーメンを一緒に作る手さばきには惚れ惚れしてしまう。焼き飯はなんと250円。この焼き飯を毎度作りたてで提供するのは凄い。腕を痛そうにしながら一生懸命作っている。女性店員さんの接客の良さも光る。

具はチャーシュー、ネギ、モヤシ。麺は中縮れ。スープは都度中華鍋に移して温めている。

スープのベースはあっさりしていてノスタルジック感たっぷり。味噌の香りと旨味はしっかりしていて、じんわりとした一杯ながら最高に美味しく仕上がっている。濃厚に振り切らずとも美味しくまとめていて、しかも個性を感じる一杯。さすがである。

焼き飯は250円ながら量は十分で、お茶碗一杯分のご飯の量。醤油の香ばしさが際立っていて、これぞチャーハンではなく焼き飯という感じの一品だ。

「竹家食堂」の味を知ることは最早できないが、こういう形でDNAが受け継がれている歴史に感謝。ノスタルジックながらしっかり美味しく、誰にでもオススメできる名店だ。

竹家ラーメン
兵庫県神戸市灘区下河原通3-1-10
078-881-9514