――冒頭で、NHKならではのコント番組制作の難しさをお伺いしましたが、逆にNHKだからこそできたという部分はありますか?

今、コント番組ってリアルタイム視聴重視の民放さんでは難しいと思うんです。ながら視聴に向いてないし、情報性もない。テレビのルールも昔とはかなり変わっていますよね。視聴者はチャンネルを変えると、まず画面隅のテロップを見て内容を把握する。じっくり見て理解するものではなくて、パッと見て分かるものが好まれる傾向がどんどん強くなっている。そういうテレビの変化を悪いとは思わないけど、NHKはそこだけではないんですよね。公共放送として、何を残すかが大切だと思うんです。今までと逆のことを言っているように聞こえるかもしれないけど、NHKだから『LIFE!』ができている。

NHKで意義を問われやすいバラエティを作っている人間だからこそ、逆に「公共放送って何?」ってことはすごく考えます。何のために受信料をいただいて、何のために番組があるのかということ。そこに『LIFE!』としてどうコミットするのか。笑いには"権威の無価値化"という役割があって、報道番組とは違う形で権威に対する批判をサラッとできてしまうことがあると思います。また、チャップリンじゃないですけど、喜劇は、哀しみを笑いに変えることができるし、哀しさを笑うことで人生に前向きになれることがあると思うんです。そういうことを表現するのが、公共放送のコント番組の役割だと思うし、そこはしっかりとやっていきたいですね。

――最近よく「テレビ離れ」などと言われていますが、それは感じますか?

若い人はびっくりするくらい本当に見てないですよね。昔は「若い人はNHKを見ない」って言われていたけど、今はそもそもテレビ自体を見ていない。よく言われるのは「数字を取りたければ40代以上を取れ」って。だけど、そればかりをやってると放送文化が先細りになってしまう。若い人が見て、新しいって感動するようなコンテンツを残すっていう発想でやっていかなきゃいけないと思います。

――今後こんなことをやってみたいという企画はありますか?

『ウォーキング・デッド』みたいな海外ドラマのように、手間暇をかけて脚本も練って、シリーズドラマみたいなものも作りたいですね。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、西川さんの気になっている"テレビ屋"をお伺いしたいのですが…。

テレビ朝日『しくじり先生 俺みたいになるな!!』の北野貴章さん。コントとしてもよくできてるなって思って『しくじり先生』は見ちゃいますね。

――"教室コント"ですよね。

ええ。しっかりとした台本があって、メッセージもちゃんとあるし。ああいう番組こそ、NHKでやればいいのにって思います(笑)


戸部田誠(てれびのスキマ)

1978年生まれ。テレビっ子。ライター。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『コントに捧げた内村光良の怒り』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)などがある。
次回の"テレビ屋"は…

テレビ朝日『しくじり先生 俺みたいになるな!!』演出・北野貴章氏