――マイアミさん自身も番組に出るようになって、反応などはいかがですか?

最近ロケ現場に行ったりすると、「あ、マイアミじゃん!」と言われるようになってきました(笑) 「おざーっす!」(※2)もちょっと流行ってきてるみたいで、礒田さんと歩いてると、「あ、おざーっす! おざーっす!」って呼びかけられるんですよ(笑) そういうのがやっぱりうれしいですね。テレビ局に入ってブームを作りたいというのが大きな目標だったので、今はそういうブームを0から作り上げている最中で、やっていてすごく楽しいです。

(※2)「おざーっす」
番組ナビゲーター・礒田誉博が繰り出すあいさつ。右目の前で手を開くと同時に「おざーっす!」。今では収録で観覧客と一緒に合わせてやるのがお約束。

「おざーっす!」ポーズを披露

――来年の流行語大賞も狙いたいですか。

この番組は流行になりそうなワードがバンバン生まれるんです。基本、パイセン1人につき1個持っているので、狙っていきたいですね(笑)

――ロケ現場以外での視聴者の反応はいかがですか?

Twitterや、番組のホームページにも、すごくありがたいコメントがいっぱいきています。最初は結構たたかれるんじゃないかなと思っていました。VTRに出る方も、スタッフも、見た目がチャラいし、ノリでやってるように見えるので、「このご時世にふざけるな!」「なにをチャラチャラやってるんだ!」って言われる覚悟でやっていたんです。

――情報番組の『Mr.サンデー』の直後の時間帯ですしね。

そうですね。でも意外と「新しくて面白い」とか「いいチャラさだ」とか、好意的なメッセージをたくさんいただけてうれしいです。僕らが一番大切にしているのは、「パイセン」というのは、ただのおバカさんじゃなくて、ちゃんと皆に愛される人たちだということです。だから、すごく愛のある密着VTRを作りたいと思っていますし、それが視聴者の方に伝わってくれたらうれしいなと思っています。

――バカにしているのではないと。

そうなんです。おバカに見せているだけで、バカにはしてないんです。「日曜日のあの時間に『人生のパイセンTV』を見ることが毎週の楽しみになってます」みたいなコメントをいただけて、逆に僕らの方が元気をもらっています。視聴率どうこうよりも、それがありがたいです。

――いろんなパイセンたちを取材されていると思いますが、特にこの人はすごい、学んだなという人はいますか?

どの方々も、本当にマジリスペクトするところがいっぱいあります。短パン社長(※3)とかは、いまだにプライベートでも飲みに行ったりするんですよ。この番組って、密着が終わっても、一緒にご飯行ったりするんですよね。西沢モトさん(※4)とかもそうですし。それでまた、いろいろ熱い話をしたり。この人たちはすばらしいなと思いながら、僕もまた元気をもらうっていう感じです。

(※3)短パン社長
2015年10月25日の放送に登場したパイセンで、カジュアルブランドを手掛ける会社の代表取締役を務める奥ノ谷圭祐氏。1年中短パンで過ごしている。

(※4)西沢モト
2015年11月1日の放送に登場したパイセン。チアリーダーやダンサー派遣を行う会社の代表取締役を務める"日本初の盛り上げ師"。

――なるほど。そうやってつながりがあるから、年中ジャック・スパロウのコスプレをする人にハロウィンイベントへ出場してもらったり、番組ナビゲーターに、市議会議員を辞めてタレントになった礒田さんを起用したりと、以前密着した人たちが再び活躍できるんですね。

そうなんです。ちょっと言い方が悪いですけど、今の番組って売れてる人を起用して、ポイ捨てというのが多いじゃないですか。僕は絶対にそれが嫌ですし、失礼なのでしたくない。僕ら制作で生み出して、生み出した人はこのチームでいつまでも育てていきたいと思っているんです。

――そんなパイセンたちは、本当に個性的で魅力的な人ばかりでいつも感心しているのですが、どうやって見つけているんですか?

ひたすらネットで検索したり、面白そうなイベントがあったら行って、そこで知り合った人たちにいろいろ聞くとか、人伝えというのが多いですね。あとはSNSもバカにならない。レギュラーが始まるまでは、いろんなブログをチェックするなど、面白い人を探すリサーチに汗をかいていましたが、レギュラーが始まって「パイセン募集」の告知を打つようになってから、視聴者の方からもだいぶ情報が来るようになりました。世の中にはこんな面白い人がこんなにいるんだと、僕もびっくりするくらい。だから、もっともっとまだまだ紹介したい人がいっぱいいるんです。

――最近『月曜から夜ふかし』や『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』(いずれも日本テレビ系)など、素人さんにフォーカスした番組が注目を集めていますが、それらと『人生のパイセンTV』との違いは、素人さんを長く、深く追っているところにあるという印象です。

短い間、2~3日密着して、パパっとVTRを作ることもできるんです。でもそれだと、その人たちの素の良さが分からない。だから、台本も構成も一切作らずに密着して、その人の素の良さを出そうというのが、この番組の目指すところ。僕らが台本で決めちゃうと、ドラマになっちゃうじゃないですか。僕はドキュメントで魅力を伝えたい。それで、唯一無二の面白さを引き出したいなと思っています。

でも、ディレクターの皆さんは最初はすごい不安だったみたいで、みんな口をそろえて「大丈夫なの? 台本なくて」と言ってたんですけど、やり始めてすっかりそれが当たり前になってます(笑)

――レギュラー放送がスタートして2カ月ですが、改善点などはありますか?

今のところ改善点というのはないですけど、僕がすごく飽きやすい性格なので、次から次へと新しいことをしたいです(笑) 最初は、パイセンのおバカな部分を煽(あお)るパートと、熱い思いを伝えるパートの2部構成がすごい新しいと言われたんですけど、もっと新しいことをやりたい。あんなこともしたいし、こんなこともしたいし、あんなデカいこともしたいというのがどんどん出てくるんです。新企画も進行中です。

――『人生のパイセンTV』とは別に、今後テレビマンとしてこういう番組を作っていきたいという野望はありますか?

やっぱりテレビの常識を覆す番組を作り続けたいです。「今のテレビだからこんなことやっちゃいけない」と言われると、「いやいやそうじゃないですよ。それはやり方一つでどうにでもなりますよ」と言い返したいんです。僕が小学生、中学生の頃見ていたテレビって結構ハラハラ、ドキドキ見ていたのが多かったと思うので、そういう番組をもう一度、フジテレビから作っていければいいかなと思ってます。テレビって面白いんだねって、あらためて気づいていただきたいんですよね。そんな番組がいくつかできたら、最高です。

――マイアミさんがテレビマンを志すにあたって、影響を受けた番組は何ですか?

僕はテリー伊藤さんをリスペクトしているので、(テリーが演出を手がけていた)『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系、1986~1996年)は、リアルタイムでは見てないんですけど、今見ても刺激を受けます。ああいう「テレビって面白いんだ」という時代がまた来ればいいなと思います。

――素人さんがスターになるという点で、『元気が出るテレビ』は『人生のパイセンTV』にも通じるところもありますね。

テリーさんがすごいのは、素人の人たちをむちゃくちゃにして面白く見せる企画の斬新さですよね。そういういい意味で、僕らもむちゃくちゃをできればと思っています。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、マイアミさんの気になっている"テレビ屋"をお伺いしたいのですが…

TBSの藤井健太郎さんです。藤井さんが企画することって常に斬新ですよね。『水曜日のダウンタウン』も今の時代、あれだけ危ない架け橋を渡っていることもリスペクトですし、『クイズ☆正解は一年後』とか、ああいう発想も度肝を抜く。テレビを面白くしようとしている方なので、やっぱりマジリスペクトっすね。

■プロフィール
萩原啓太(はぎわら・けいた)
1986年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、09年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『もしもツアーズ』『キスマイBUSAIKU!?』『AKB48選抜総選挙』などに携わる。『人生のパイセンTV』で初めて演出を担当。フジテレビ最年少演出家(29歳)として注目を集めている。

●影響を受けたテレビ番組:『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』
日本テレビ系、1985年~1996年放送。ビートたけし司会、テリー伊藤演出によるバラエティ番組。「ダンス甲子園」「勇気を出して初めての告白」「早朝バズーカ」など、さまざまな名物企画を生み出し、日本テレビを中心に脈々と受け継がれるドキュメントバラエティの礎を築いた。
次回の"テレビ屋"は…

TBSテレビ『水曜日のダウンタウン』演出・藤井健太郎氏