東京の地下鉄は2つの事業者が運行している。東京メトロが9路線。都営地下鉄が4路線。それぞれの路線は特徴もさまざま。東京メトロ丸の内線は半環状の路線で、都営大江戸線は数字の「6」を描くような感情運転を行う。東京メトロ南北線・副都心線や都営三田線などは南北方向、東京メトロ東西線・半蔵門線や都営新宿線は東西方向を結ぶ。東京メトロ有楽町線は北西と南東を結び、東京メトロ千代田線は南西と北東を結ぶ。非常に複雑な路線網だけど、どの駅間もおおむね2回の乗換えで到達できる。
では、全13路線で最も便利な路線はどれだろう。これは酒席の話題で盛り上がること間違いなし。なにしろ「便利」の基準はひとつに決められない。「東京駅・新宿駅に乗換えなし」「空港に直通」「運行本数が多い」「終電が遅い」など、さまざまな「便利」がある。住まい選びの悩みどころのひとつだし、自分で選んだ路線が最も便利だと思いたい。
13路線それぞれに便利な部分がある。それなら、どの路線にも1回で乗り換えられる路線が「1番ではないけれど、あらゆる面で2番目に便利」といえるのではないか。はたして、そんな路線はあるだろうか。複雑な路線図を眺めても目が痛くなりそうなので、路線別に乗換え相関図を作ってみると、ひとつだけあった。東京メトロ半蔵門線だ。
東京メトロ半蔵門線は渋谷~押上間を結ぶ地下鉄路線で、東武スカイツリーラインや東急田園都市線と相互直通運転を行う。1968(昭和43)年、都市交通審議会から運輸大臣(当時)に「東京11号線として整備が必要」と答申された路線である。渋谷駅から青山一丁目駅までは銀座線と並行し、政界の中心地にある永田町駅、金融街の大手町駅を経由する。表参道駅では銀座線と平面乗換えができるし、九段下駅では都営新宿線と改札内で乗り換えられる。大手町駅は地下鉄路線が5本も集まる。たしかに便利そうだ。
他の路線との乗換駅を見ていこう。都営浅草線とは水天宮前駅と押上駅で乗り換えられる。水天宮前駅で都営浅草線に乗り換える場合、地上に出て徒歩で人形町駅へ行く必要があるけれど、これで東京メトロと都営地下鉄を乗り換えるときの割引を受けられる。都営三田線とは大手町駅と神保町駅で乗換え可能。大手町駅の乗換え通路は長いので、神保町駅がおすすめ。
都営新宿線とは九段下駅と神保町駅、住吉駅の3駅で乗り換えられる。都営大江戸線は青山一丁目駅と清澄白河駅で乗換え可能。複数の駅があり、しかも東西に離れているから、都合の良い乗換駅を選べる。
半蔵門線は東京メトロ同士の乗換えも便利だ。銀座線は渋谷駅・表参道駅・青山一丁目駅・永田町駅・三越前駅の4駅で乗換え可能。丸ノ内線は永田町駅と大手町駅で乗り換えられる。ただし、永田町駅で半蔵門線から銀座線・丸ノ内線への乗換えは赤坂見附駅まで地下通路を歩く必要があり、ちょっと面倒。他の駅でも乗り換えられる。
日比谷線との乗換駅は水天宮前駅。都営浅草線と同じく人形町駅まで数分歩く。東西線と乗換え可能な駅は九段下駅と大手町駅。有楽町線と南北線は永田町駅で乗り換えられる。千代田線とは表参道駅と大手町駅で乗り換える。両駅とも千代田線から小田急線へ直通するロマンスカーの停車駅だ。副都心線との乗換駅は渋谷駅。乗換えが不便と話題の渋谷駅だけど、半蔵門線と副都心線は同一改札内で乗り換えられ、歩く距離は比較的短い。
このように、半蔵門線は東京の地下鉄全路線に乗換え可能。もっとも、乗換えを1回で済ませるために、半蔵門駅から水天宮前(人形町)経由で東銀座駅へ……というルートは遠回りになってしまうだろう。
ちなみに「他の地下鉄路線との乗り換えやすさ」で次点は都営大江戸線、東京メトロ有楽町線・東西線だった。都営大江戸線は千代田線以外のすべての路線に乗り換えられるし、千代田線とも都営大江戸線の六本木駅から乃木坂駅まで徒歩2分ほどの近さ。有楽町線も都営浅草線以外の路線と乗換え可能で、都営浅草線に乗り換える場合は銀座一丁目駅または新富町駅で下車すると東銀座駅が近い。東西線は副都心線以外の路線に乗換え可能で、副都心線の西早稲田駅は東西線の高田馬場駅から徒歩で行ける距離にある。