JRや有料特急を走らせている会社では、特急電車に乗るには乗車券の他に特急券が必要だ。有料特急の車両は窓が大きく座席ゆったりとして居心地が良い。ところで、乗車券のみで利用できる普通列車や快速列車にも、特急用車両が使われている列車がある。そんなおトクな普通列車に乗るにはどこへ行けばいいのだろうか。

青函トンネルを走る「特急スーパー白鳥」指定区間内なら乗車券のみで乗れる

乗車券だけで有料特急用車両に乗れる。その理由は2つある。1つは「制度として乗車券で特急に乗れる」だ。青函トンネルを含む蟹田駅 - 木古内駅間、JR北海道の新夕張駅 - 新得駅間は特急列車のみの運行となっており、普通列車がない。そのため特例として、この区間内の駅から乗って、この区間内の駅に降りる場合は乗車券のみで利用できる。JR九州の宮崎駅 - 宮崎空港駅間の特急列車も乗車券だけで利用できる。この区間は普通列車も走っているけれど、空港アクセス路線の利用推進のためだという。

もう1つの理由は「普通列車に特急用車両が使われている」だ。特急列車の運行の末端区間が閑散線区で、列車本数が少ないために、便宜的に特急電車を格下げ運行する場合がある。また「サービス改善のために、第一線を退いた特急用車両を投入する」「終着駅で折り返すと通勤時間帯に当たるため、普通列車として運行する」など、様々な事情で特急車両が普通列車に使われている。

255系電車の「特急わかしお」末端区間は普通列車扱いとなる列車もある

「快速くびき野」は特急車両485系を使用。自由席なら乗車券のみで利用可能

伊豆急「リゾート21」普通列車で運行する場合は乗車券のみで展望席も利用可

時刻表で見つける方法もある

こうした「設備がおトクな普通列車」たちは、時刻表で発見できる場合がある。例えば市販の時刻表で外房線の特急「わかしお」を調べると、そこにはきちんと「勝浦 - 安房鴨川間普通列車」と書かれている。「日豊本線・宮崎空港方面」のページには、「宮崎 - 田吉・宮崎空港間の特急は普通乗車券のみで普通車自由席にご乗車になれます」という注釈がある。JR北海道の特急「スーパーカムイ」も、一部の列車は札幌 - 千歳空港間のみ普通快速扱いと表記されている。車両は特急スーパーカムイ用だが、「エアポート」として運行する区間は特急料金は不要となる。

時刻表には明記されていないが、類推できる列車もある。例えば、東京駅05:20発の静岡行き普通列車はJR東海の特急電車373系を使用する。この列車はかつて、特急車両を使った夜行快速「ムーンライトながら」の折り返し列車だった。東京駅に早朝に到着した「ムーンライトながら」の車両を静岡県の車両基地に戻すために、普通列車として運行していた。その名残というわけだ。ちなみに、東京駅を発車する東海道線の普通列車にはグリーン車が付いているが、この列車だけグリーン車の連結がない。そこからも「他の列車とは違う車種が使われている」と解る。

以下に筆者が調べた「特急用車両を使用した普通列車」の一覧を紹介する。しかし、この他にもあるかもしれないし、何らかの事情で車両が変更になった列車が出てきている可能性もあるということをご承知いただきたい。それは、普通列車の使用車種については、鉄道会社も乗客に対して使用車種を約束して運行しているわけではないからだ。また、車両の定期検査、運用変更などの都合で特急用車両とはならない場合もある。

乗車券のみで乗れる特急車両
JR北海道・快速「エアポート」 旭川 - 札幌間の特急「スーパーカムイ」の一部が快速となって千歳空港まで延長する
JR北海道・室蘭‐東室蘭 東室蘭 - 札幌間の特急「すずらん」の一部区間を普通列車として延長運転
JR東日本・青森‐蟹田 「青森06:03発蟹田行」、「蟹田06:27発青森行」は特急車両。時刻表にグリーン車連結を示すマークがある
JR東日本・佐原 - 銚子・鹿島神宮 東京発着の特急「あやめ」の一部区間を普通列車として運転
JR東日本・成東 - 銚子 東京発着の特急「しおさい5号・10号」の一部区間を普通列車として運転
JR東日本・館山 - 君津 東京発着の特急「さざなみ10号」の一部区間を普通列車として運転
JR東日本・勝浦 - 安房鴨川 東京発着の特急「わかしお」の一部区間を普通列車として運転
JR東日本・東京 - 伊東 東京駅07:24発伊東行は185系特急電車を使用
JR東日本・快速あいづライナー 485系特急電車または583系特急電車を使用
JR東日本・快速「くびき野」 485系特急形電車を使用。一日3往復。指定席もある
JR東日本・直江津 - 新井 「直江津08:37発新井行」、「新井19:31発直江津行」は485系特急電車使用。上記「くびき野」の車両を使用する
JR東日本・普通「妙高」 183系または189系特急形電車を使用。一日5往復で1本だけ快速列車。指定席もある
JR東日本・長野 - 松本 「長野6:55発松本行」、「松本20:10発長野行」はE257系特急電車使用。時刻表にはグリーン車の表示あり
JR東日本・新津 - 新潟 「新津08:13発新潟行」は、大阪発の夜行急行「きたぐに」の一部区間を普通列車として運転。583系特急電車を使った唯一の定期普通列車
JR東日本・JR東海・東京 - 静岡 「東京05:20発静岡行」、「静岡19:30発東京行」はJR東海の特急用車両373系を使用。時刻表にグリーン車のマークなし
JR東海・浜松 - 豊橋 「浜松20:15発豊橋行」、「豊橋20:53発浜松行」に特急用車両373系を使用
JR東海・大垣 - 米原 「大垣23:25発米原行」、「米原08:05発大垣行」(平日)、「米原06:57発大垣行」(休日)に特急用車両373系を使用
JR西日本・金沢 - 七尾 「金沢05:09発七尾行」は特急サンダーバード用車両で運転
JR西日本・山陰本線 「福知山05:10発豊岡行」、「城崎温泉20:25発豊岡行」は特急用車両183系を使用
JR四国・牟岐 - 海部 特急「剣山」「むろと」の一部区間を普通列車として運転
JR四国・松山 - 宇和島 特急用気動車キハ185系を普通列車用に改造した車両を運行
JR九州・光の森 - 熊本 特急「有明6号」の一部区間を普通列車として運転
伊豆箱根鉄道・駿豆線 東京発着の特急「踊り子」は駿豆線では特急料金不要
会津鉄道・快速AIZUマウントエクスプレス 元は名鉄の特急用ディーゼルカー「キハ8500系」
北近畿タンゴ鉄道 「福知山06:03発宮津行快速」、「福知山07:45発天橋立行快速」、「天橋立19:48発福知山行」はJRの特急用車両183系を使用
阿佐海岸鉄道 「甲浦07:15発」は牟岐まで普通列車。その後JR特急「剣山3号」となる
(注)時刻はJR時刻表2010年1月号を参考とした。全車指定席列車、定員制(整理券が必要)列車は除外。また、上記以外にも観光時期の臨時快速列車のほとんどが特急用車両を使用している