JR東日本は7月19日、山形新幹線の観光列車「とれいゆ つばさ」の運行を開始した。秋田新幹線で余剰となったE3系を改造した観光列車で、車体番号は700番台となっている。6両編成で、普通車指定席が1両、お座敷タイプ指定席が3両、バーカウンター付き車両が1両、足湯付き車両が1両という構成だ。

なんといっても目玉は「足湯」。温泉ではなく水道水を沸かしているとはいえ、移動する列車の中で、移り行く風景を眺めつつ湯浴みを楽しめるとは、いかにも日本人好みの列車である。この「足湯」を楽しむには、JR東日本のツアー商品「びゅう」で申し込み、「足湯券」を購入する必要がある。

この足湯サービスは画期的で、発表時から大きな話題となった。だが驚いてはいけない。JR西日本が2017年に導入する新しい寝台列車には、バスルーム付きの豪華客室が用意されるという。肩まで浸かれる風呂付きの列車なんて初めて……、ではない。じつはかつて、JR東日本がユニットバスを搭載した豪華寝台列車を走らせていたのだ。

日本のクルーズトレインの元祖「夢空間」

JR東日本が運行していた「夢空間」(写真はイメージ)

JR東日本が走らせていたバスルーム付き車両は、「夢空間」という名前で1989年にデビューした。デラックススリーパー(寝台車)、ラウンジカー、ダイニングカーの3両編成で、デラックススリーパーに風呂が設置されていた。ビジネスホテルとほぼ同じユニットバスだから、肩までお湯に浸かるには体を丸めなくてはいけなかったし、窓もない。ゆったりお湯に浸かって景色を楽しむという具合にはいかなかったようだ。

「夢空間」はヨーロッパの国際列車「オリエント急行」を手本に、デラックススリーパーにはスイートルーム1部屋とツインルーム2部屋を設置。内装は高島屋百貨店が担当した。ラウンジカーはバー、ソファ、ピアノを搭載したロビーで、内装は松屋百貨店が担当した。ダイニングカーは食堂車だ。調理室と展望室側にテーブル席を配置。4名用の個室がしつらえられていた。内装は東急百貨店が担当した。

車両はブルートレインとして親しまれた24系25形の派生車種として製造された。そのため、他の24系客車と組み込まれて臨時列車や団体列車に使用された。上野~札幌間の寝台特急「北斗星」に連結され、「夢空間北斗星」としても運行された。「夢空間」は2008年3月で営業運転を終了している。営業運行のノウハウは、その後にデビューする寝台特急「カシオペア」に活用されている。

引退した車両のうち、ラウンジカーとダイニングカーは埼玉県三郷市のショッピングモール「ららぽーと新三郷」に譲渡され、現在も展示されている。この場所はJR武蔵野線新三郷駅に隣接し、かつて貨物操車場だったところだ。

残るデラックススリーパーは、東京都江東区のレストランに譲渡された。これはオーナーシェフが、「オリエント急行」でシェフを勤めていた縁だという。

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