2014年3月のJRダイヤ改正で、上野~青森間の寝台特急「あけぼの」は定期列車の運行を終了する。今後は臨時列車として運行予定で、さっそく春の大型連休期間の運行が決定した。しかし車両の老朽化などの状況や、かつて臨時列車に格下げされた夜行列車の経緯を考えると、完全に廃止される時期は近づいていそうだ。

ところで、寝台特急「あけぼの」は1970年に登場以来、現在まで、5つのルートで走るという珍しい列車だった。そのルートの変遷を振り返ってみよう。寝台特急「あけぼの」が走った路線を、すべて言えるだろうか?

2014年春から臨時列車となる寝台特急「あけぼの」(イメージ写真)

まず、現在の寝台特急「あけぼの」の運行ルートをおさらいしよう。下り列車を上野駅からたどって行くと、上野~大宮間は東北本線、大宮~高崎間は高崎線、高崎~宮内間は上越線、宮内~新津間は信越本線、新津~秋田間は羽越本線、秋田~青森間は奥羽本線となる。なんと6つの路線を経由する。

しかし、寝台特急「あけぼの」の登場時はこのルートではなかった。1970年に臨時列車として登場し、後に定期列車となった寝台特急「あけぼの」は、上野~福島間の東北本線、福島~青森間の奥羽本線というルートだった。じつにシンプルだ。このルートは1990年まで、約20年間にわたった。映画『おもひでぽろぽろ』に登場した寝台特急「あけぼの」は、この時代を描いている。

山形新幹線工事でルート変更

1990年に寝台特急「あけぼの」は転機を迎える。山形新幹線「つばさ」を直通させるため、奥羽本線福島~山形間の軌間を新幹線規格に拡げる工事が始まった。そこで当時、臨時列車を含めて3往復だった寝台特急「あけぼの」は、3往復とも別のルートに変更された。1往復は東北本線を上野~小牛田間とし、陸羽東線を経由して、奥羽本線は新庄~青森間となった。

別の1往復は、現在の寝台特急「あけぼの」のルートだ。ただし、東北本線経由の「あけぼの」と同じ名前ではまぎらわしいため、列車名は寝台特急「鳥海」となった。臨時列車の1往復は仙山線経由になった。こちらは途中駅の客扱いをしないためか、列車名はそのままで「あけぼの」となった。ただし、「あけぼの81号」「あけぼの82号」というように、80番代の号数が与えられている。この臨時列車は1996年まで運行していた。

寝台特急「あけぼの」が走った全ルート

1997年に秋田新幹線が開業すると、奥羽本線の大曲~秋田間は在来線軌間の複線から、在来線軌間と新幹線軌間の単線並列となった。このとき、寝台特急「あけぼの」の奥羽本線ルートは廃止されたが、「あけぼの」の名前は残った。寝台特急「鳥海」を「あけぼの」に改称した。この列車が定期列車最後の寝台特急「あけぼの」である。

ここまで、「あけぼの」のルートは4つ。残り1つはちょっと特殊な例だ。北上線を経由した時期がある。それも2006年と2011年の合わせて数日間だけ。2006年は羽越本線が土砂崩れの被害に遭って運行不可能となったため。2011年は集中豪雨により上越線が不通になったためだ。ちなみに北上線では、寝台特急「あけぼの」が登場する前、仙台~青森間を結ぶ急行列車として、「あけぼの」が存在したという。北上線の「あけぼの」復活として、また北上線では珍しい優等列車、寝台列車の運行として話題となった。

寝台特急「あけぼの」は春から臨時列車化され、やがて廃止されるかもしれない。しかし、「はやぶさ」「さくら」「みずほ」など、かつての寝台特急の名前が新幹線の列車名として復活した例もある。「あけぼの」は意外な形で再登場するかもしれない。

もっとも、東北方面の旅行に便利な夜行列車として、臨時でもいいから夜行列車として走り続けてほしい。それが現在、「あけぼの」を必要としている人の願いだろう。