はじめまして、旅の口コミサイト「トリップアドバイザー」の三橋と申します。この連載では、世界15カ国で展開するトリップアドバイザーに寄せられた、世界中の旅行者の口コミやアクセスデータ、ユーザーに対して実施したアンケートなどのデータをもとに、最新の旅行トレンドや一風変わったランキングなどを紹介していきたいと思います。皆様の旅行の計画に少しでもお役に立てば幸いです。

さて、第一回目の今回は、年始ということもあり、「2010年、ブレイクする(かもしれない)、最も旬な海外旅行先はどこか」を探ります。

トリップアドバイザー 三橋竜二
新聞記者、雑誌編集者を経て、フリーのトラベルライターに。アジアや太平洋の島々を中心に旅行雑誌やガイドブックなどに記事を執筆。2009年より、トリップアドバイザーで広報を担当。旅の楽しさを伝えるために、日々データと格闘中。いつかイースター島に行くのが夢

バカンス先進国のヨーロピアンに聞け!

2010年に需要の高い旅先としては、ワールドカップ開催地の「南アフリカ」や万博の開催される「上海」、昨年から順調な「韓国」などがあげられるのですが、それではあまりに当たり前なので、ここでは、ブレイク寸前、うまくすれば数年後に大化けしそうなエリアというのを予想してみたいと思います。イメージとしては、70年代後半のバリや80年代後半のサムイ、最近の事例なら4~5年前のクロアチアのように、旅の主役がバックパッカーの若者からスーツケースを持った年配者やファミリーに移行しはじめ、日本の大手旅行社がツアー商品などをプッシュする直前のエリアです。

さて、それは一体どこなのか、トリップアドバイザーのユーザーの動向(口コミの投稿数、アクセス数)から分析してみましょう。注目するのは旅行のトレンドをリードしているバカンス先進国、ヨーロッパのユーザーです。旅行予約サイトのエクスペディアの調査によると、フランス人の有給休暇取得日数は平均で36日、イタリア25日、ドイツ25日、イギリス24日と、日本人やアメリカ人とは比べ物にならないほどたっぷりと休暇を取得しています。

国際有給休暇比較2009(エクスペディア調べ)

さらに、トリップアドバイザーが昨年実施したアンケートによると、ヨーロッパの旅行者は、旅に出る動機として過半数が「今まで見たことのない場所に行く」をあげています。日本人で同様の回答は2割以下、 最も多くの人が「世界の有名な観光地や景観を見る」と回答していることと比較すると、旅に求める根本的な意識に大きな違いがあるように思われます。ヨーロッパの人たちにとって、旅行とは冒険でありチャレンジであり、新しい旅行エリアを開拓するための意欲も時間もたっぷりと持っているのです。実際に、前述のクロアチアは当然としても、遠いアジアにあるバリやサムイにいち早く目を付けたのも、ヨーロッパの旅行者なのです。

ということで、たいへん前置きが長くなりましたが、トリップアドバイザーの欧州各国サイトにおいて、2009年にユーザーのアクセス数や口コミ投稿数が前年と比べて急増しているエリアを探してみました。すると以下のようなエリアが浮かび上がりました。

アドリア海沿岸(クロアチア、モンテネグロ、スロベニア)
アフリカ北部(リビア、アルジェリア)
アフリカ西岸(ガンビア、セネガル)
インド南部(ケラーラ州、カルナータカ州)
スリランカ

スリランカに大注目!

これらのエリアの中で、日本からのアクセスや日程の自由度、費用などから、最も注目したいのはスリランカです。スリランカ航空の直行便(一部はモルディブのマーレ経由)が週3便と日本からのアクセスがよく、もう一つの注目株インド南部やモルディブと組み合わせての旅行も計画できます。スリランカ自体の観光資源もとても豊富で、北海道よりやや小さめの国土に、インド洋に面した美しいビーチと2,000メートル級の山々、ゾウやヒョウなどの野生動物の生息するジャングル、さらに6つの世界文化遺産を含む、歴史的・文化的な見所など、数多くの魅力がギュッと詰まった国なのです。また、食事がおいしいことでも知られ、カレーを基本に、新鮮な魚介類のメニューも豊富で、米食がメインなため日本人にはなじみやすいのも長所の一つです。昨年には内戦の終結も宣言され、懸念だった治安も向上することが期待されます。

世界遺産にも登録されているダンブッラの黄金寺院

実はこのスリランカ、ヨーロッパの旅行者、特にサーファーやヒッピーの間では以前から人気のエリアでした。しかし2005年に世界的に有名なアマンリゾートが2軒のホテルをスリランカにオープンした頃から、上質なリゾート地としても人気を獲得し始めています。実際にトリップアドバイザーの口コミの評価による、最新のアジアトップホテルランキングを調べてみると、トップ30にスリランカのホテルが4軒もランクイン。これはタイに付いで2番目(ちなみに日本のホテルは残念ながら0軒)、バリのあるインドネシアと同数という快挙です。

野生動物を見るサファリツアーも人気

スリランカの中でも特におすすめなのが、南部のゴール周辺です。2つのアマンの他にも数多くの質の高いリゾートが登場しており、前述のアジアのランキング入りした4軒のうち2軒がこのエリアのブティックホテルです。中でも、高い評価を得たのが「アジアン ジュエル ブティックホテル」。わずか5室という小さなホテルにも関わらず、70件の口コミのうち、68件が最高の5つ星をつける(残り2つも4つ星)高評価を受け、アジア全体で2位にランクインしています。

また、アジアで11位にランクインした「カハンダ カンダ」は、ガラの市街から数キロの丘の上にあるホテル。93件の口コミのうち86件が5つ星と、こちらも高い評価を受けています。口コミでは「ホテルからの景色は、どの方向も素晴らしい。緑の木々に瑞々しい茶畑、その向こうには湖が広がる」「猿やクジャク、鳥達の声に囲まれながら、湖に沈む日は、目を見張るほど美しい」と、その隠れ家的な雰囲気を絶賛しています。

ヨーロッパとアジアのセンスが融合したカハンダ カンダ

このほかにも、たくさんのホテルがヨーロピアンから高い評価を得ており、一方で価格は驚くほどリーズナブル。また、ダイビング、トレッキング、サファリツアーなどの豊富なアウトドアアクティビティもそろっていながら、まだまだ観光地ズレしていない素朴な雰囲気を楽しめるスリランカ。政情などに注意は必要ですが、せっかく海外に来たのに、日本人観光客ばかり見かけてちょっとがっかり……そんな経験のあるアクティブな旅行者にぜひお進めしたい、2010年一押しの観光エリアなのです。