ワーク・ライフ・バランスを考える上で、「時給」が大切!?

入社して数年経つと、それまでがむしゃらに働いて仕事を覚えていた人も余裕が出てくるかもしれません。本当にこの仕事でいいの? 将来性はあるの? という風に悩むゆとりが出てきたら、考えて欲しいことがあります。

それは「時給」です。学生のアルバイトじゃないのに時給を気にするなんて…と思うかもしれませんが、将来のワーク・ライフ・バランスを考える上で、とても重要です。

ワーク・ライフ・バランスを時給で考える意味とは?

皆さんはそれぞれ、生活費の目安があるでしょう。家賃や食費、衣服費や友人とのつきあいにかかるお金は人それぞれ。月にいくらあれば生活できるか、大体、分かりますよね。

次に、毎月何時間働いているか、考えてみて下さい。タイムカードがない方は、いちど手帳に正確な勤務時間を記録することをお勧めします。会社の同期で月給がほぼ同額でも、部署によって労働時間が違います。割り算すれば、自分の時給を計算できるはずです。

「時給」に着目すると、面白い光景が見えてきます。大和総研の研究員・是枝俊悟さんが10月6日に発表したレポート「時間当たりで見ると男性より女性の方が賃金が高いって本当?」によると、正社員のボリュームゾーンでは「時間当たりで女性は男性より2割ほど多く収入を得ている計算になります」と記されています。

男性と女性の年収を単純に比較すると女性の方が低いのですが、女性は男性と比べて労働時間が少ないため、時給換算すると男性より高くなるというわけです。このレポートには、家事育児の大半を担っている女性の現状や課題が分かりやすく書いてあるので、ぜひ読んでみて下さい。

是枝さんは税制に詳しい若手エコノミスト。今夏に開かれた政府主催の「女性が輝く社会に向けた国際会議(World Assembly for Women :WAW)」、「ワーク・ライフ・マネジメント」に関する分科会でも、唯一の20代男性として参加し政策提言しています。読者の皆さんと同世代です。

業務の効率化が時給を上げる

この数字から推測できるのは、女性は家事や育児をやりながら効率的に働いているということ。実際、私の周りのワーキングマザーは、残業できない代わりに仕事中はわき目もふらず働く人が多いです。

子育て期はどうしても労働時間が短くなります。それでも収入を増やしたい場合、残業などで働く時間を延ばすより、高付加価値の仕事をして短い時間にたくさん稼ぐことを考える方が持続可能です。20代の皆さんは、今から準備する時間もあるからです。

時給を上げる方法は色々あります。今と同じ分野でより難しい仕事をする。隣接分野の仕事も覚えて守備範囲を広げてみる、等々。自分の頭で考え、勉強の機会を逃さず仕事をしてきた人は、5年後、10年後にケア責任を持つようになり、働く時間が短くなった時にも、収入を下げずに(むしろ上がることだってあります)楽しみながら働き続けることができるでしょう。

今、始めたその習い事は、今を楽しむための「消費」なのか。将来、時間当たりの報酬を上げる「投資」なのか。意識するくせをつけてみてください。

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著者プロフィール

●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。

【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座

25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫ウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。