元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな職業は「アラブの石油王」です。
国税局のときも、数多の社長と出会いましたが、芸人になってからも、ぼちぼち社長さんと知り合います。呼ばれて食事をしたり、カラオケに付き合ったり、だらだらと飲んだりすることがあって、自分の好きなものを食べるわけでもないし、仕事がもらえるわけでもないし、気も遣うし、あんまり良いことはありません(気の合う社長さんも3割くらいいます)。
それよりは、自宅に籠もって仕事をしている方が有意義に感じます。しかし、極稀に、社長業の真髄を見ることがあって、勉強になる。今日は、勉強になった話です。
先日、知人の社長さんとご飯に行きました。円卓を囲っての中華料理です。「若手芸人が、他人の金で良いもの食べやがって」と誤解されないために書いておくと、瓶ビールが600円チャーハンが800円客単価が2,500円の店でした。
その宴席には、ぼくと社長さんと社長さんの取引先の社長と部下の方が来ていました。社長さんは、その会社にお酒を卸していて、何年も取引しているようです。その取引先の人たちは、社長さんより10歳ほど若く、色が黒くて、Tシャツにハーフパンツという出で立ちで、月並な言い方ですが「オラオラ」していました。ぼくが挨拶しても名乗らず、名前も覚えず、話を振ったりすることもなかったので、ぼくはずっと、しゅうまいとかエビチリを食べていました。 ちなみに、この店は取引先の人が選んだようです。社長たちが食事するにしては、オープンで、リーズナブルで、さっぱりした味のお店です。
取引先の社長さんも部下も商品を買っている立場なので、社長さんにもオラオラします。飲み物の注文や配膳は、ぼくと社長さんで行います。成功体験や金持ち自慢も聞かせてきます。それでも社長さんは、ずっとニコニコして、「すごいですね、社長」と言ったり、いじられて「勘弁したってください、社長」などと言ったり、「全然儲かりませんわ~」と謙虚に振るまったりしています。
ぼくはニコニコしながら「すごいですね」とか「さすが」とか言いながらも、「なんだ、こいつらは?」と悪い考えを持ち、その反面、社長さんのことは感心して見ていました。取引先をヨイショするのは、営業職ではあたり前のことかもしれません。でも、社長さんは従業員ではなく、一代で裕福になった「社長」です。いまさらへーこらしなくても、そこそこにお金があります。
いや、そこそこどころかかなり裕福です。フェラーリとポルシェとレクサスとコンビニよりでかいクルーザーを持っていて、ヴァシュロン・コンスタンタンとかランゲ&ゾーネとか500万円以上する時計も10本以上持っています。20歳離れた女優の彼女がいて、信頼できる仲間もたくさんいます。実は、眼前の取引先より圧倒的に金持ちで、仕事で成功しているのです。でも、地面に沈むくらい腰を低くしている。
事業で成功しても、初心忘れず頭を下げ続ける姿勢に、ぼくは気概を感じます。この会食の前に社長さんは言っていました。
「フェラーリとクルーザーのことは内緒ね」
自分を大きく見せる社長は売るほどいますが、自分を小さく見せて相手の気分を損ねないようにする社長は初めてでした。ああ、どんなに成功しても、目の前の人より自分を小さく見せねばいけないな、実る稲穂は頭を垂れるだな、と心に刻みました。
3時間ほど食事をし、ではお会計、となったときに店員さんを呼ぶと、社長さんが鞄から出した財布は、中学生が使っていそうな、綿生地で3つ折りのマジックテープ式の財布でした(昼間、ぼくと遊んでいたときは、30万円以上するベルルッティの財布だったのに!)。
最後までぬかりのない社長さんに、取引先との振るまい方を、勉強させていただきました。
新刊『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』
(総合法令出版/1,404円/税込)さんきゅう倉田の初の著書が発売されました。ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員やパート・アルバイトの方のための最低限の税の情報を、たのしく得られます。購入は コチラ
新刊『笑う数学』
(KADOKAWA/1,404円/税込/1月27日発売予定)数々の数学イベントで大活躍の、数学エキスパート集団「日本お笑い数学協会」(タカタ先生、横山明日希、さんきゅう倉田、平井基之、秋田崇宏、小林裕人、鰺坂もっちょ)のメンバーが書き下ろした、とっておきの数学の話100を収録。
「数学で愛の告白」「キスするのに最適な身長差を三角比で求める」「アイドルが売れる確率」など、多種多様な数学の話にハマる人、続出中!