こちらの連載は、時事ネタや身近な税法上の取り扱いをさんきゅう倉田がやわらかく解説。みなさんを絶好調時のムドーを一撃でがさ入れできるくらいの税金マスターにします。


元 国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな絵本は『100万回納税したねこ』です。

読者の皆さんと関わりの深い税金は、所得税、消費税、住民税、たばこ税、酒税あたりでしょうか。聞いたことはあって名前は知っているけれど、納める機会がほとんどない税金の代表に、「相続税」と「贈与税」があります。2つの違いを簡単に言うと

相続税は、亡くなった人から財産をもらったとき
贈与税は、生きてる人から財産をもらったとき

となります。

相続税のイメージ

贈与税のイメージ

やはり相続税も贈与税も裕福な方が納める税金だ、小市民のケンちゃんには無縁だよ、などと考えていたら、相続税の基礎控除が下がったじゃありませんか。「基礎控除」とは、その金額までなら納税しなくていい、という無敵のサービス。それが下げられると、税金を払う人も、払う金額も増えてしまいます。下がることでどのくらいの人数が新たに相続税を納めるようになるということは各種メディアで報じられていますが、なぜ基礎控除が下げられたかについてはあまり言及されていません。

財務省の方に聞いたところによると、「バブルで土地の値段がぐんぐんあがったことで、相続する資産の価値は変わらないのに、相続税を納める人数が圧倒的に増えて昭和63年から基礎控除が上がった。そのころは今よりも更に基礎控除が少なかった。その基準を元に戻しただけ」とのことでした。

現在の基礎控除はいくら?

では、現在の基礎控除はいくらなのでしょう。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

です。

法定相続人とは、基本的には亡くなった人の配偶者、子供、親、兄弟です。人数が増えるほど、控除が大きくなりますが、配偶者+子供、配偶者+親など、全員が同時に法定相続人になれるわけではなく、組み合わせが決められています。複雑なので、相続の可能性がある方は、ググってください。

この基礎控除、少し前までは、5,000万円+1,000万円×法定相続人、昭和63年以前は2,000万円+400万円×法定相続人と時代により変化しています。

贈与税にも、もちろん基礎控除があります。基礎控除がなかったら、日常生活で友人・知人にお金やモノをあげるだけで、税金を取られてしまいますから、年間で110万円の控除があります。あくまで、贈与税の基礎控除なので、働いて稼いだお金や生活費として家族にもらったお金、公営ギャンブルで得たお金、キングオブコントの賞金、竹やぶで拾った1億円、「告白します。○○はわたくしをだましました。許せないです!」で話題の大型YouTuberによる広告収入、ポートガス・D・エースを世界政府に引き渡したときの懸賞金は除かれます。生活費以外は「所得」になります。

では、相続税と贈与税の税率はどのくらい違うのでしょうか。

相続税の税率

贈与税の税率(※)

※贈与税は、「一般」と「特例」がありますが、相続の状況とより近い「特例」の税率を記載しています。

2つを比べると、税率は同じですが、金額が異なります。基礎控除も、相続税は贈与税の30倍以上ありますから、同じ金額を受け取っても、相続税の方が、納税が少なくすみます。贈与税の方が納税が少ないならば、亡くなる前にほとんど贈与して、相続税のシステムが意味をなさないので、合理的な金額で定められていると言えます。

これらを踏まえた上で、ほとんどの方が実施している節税は、「毎年親から110万円をもらい相続時の財産を少しでも減らす」です。相続税対策は、早いに越したことがありません。10年後20年後を見据えて、資産を移譲させてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら