本連載の第214回では「組織的な業務改善に役立つリーンシックスシグマとは何か」という話をお伝えしました。今回は「リーンシックスシグマを用いた業務改善のコツ」ついてお話します。

少子高齢化が進んで人手不足が慢性化する中で、上司から社内或いは部署内の業務を効率化するよう言われている方は多いのではないでしょうか。しかしどこから手を付けて良いか分からない、そんな方にリーンシックスシグマという手法による業務改善のコツをお伝えします。

リーンシックスシグマとは、企業がビジネスプロセスを改善し、無駄を排除し、顧客満足度を向上させ、結果的に利益を最大化するための手法です。※リーンシックスシグマ自体について詳しく知りたい方は前回のコラムをご覧ください。

それでは、リーンシックスシグマに学ぶ業務改善のコツを見ていきましょう。

1. 適切なプロジェクトを選ぶ

最も重要なのは具体的なビジネス課題に取り組むプロジェクトの選択です。プロジェクトを選ぶ際には、その成果が組織全体の戦略的な目標にどれだけ貢献するかを考えることが重要です。例えば、顧客満足度を高めることを最重要課題として位置付ける営業チームの課題として「顧客から、問い合わせ対応への応答時間が長いというクレームが挙がっている」といった状況があるとします。これを改善するプロジェクトを選択すれば、顧客満足度が向上し、その結果として組織全体のパフォーマンスにも寄与するでしょう。

2. 5つのステップを踏む

次に、リーンシックスシグマのフレームワークとして定義されている、定義、測定、分析、改善、管理の5つのステップを取り入れましょう。前述の「応答時間の改善」を例に取れば、まずその現状を定義し、かかっている時間を測定します。時間を測定したら、平均応答時間に加えて、応答時間のバラツキにも着目するとよいでしょう。そして平均的に応答時間が長いのか、極端にバラツキが大きいのかを分析し、その結果を基に改善策を策定します。そして改善策を実行し、その結果を評価し、管理します。このようなシステマティックなアプローチにより、目指す改善を明確にし、それを達成するための進捗を着実に進めることができます。

3. データドリブンな意思決定

そして3つ目に重要なのが、データに基づいて意思決定を行うことです。これにより、問題の特定や解決策の開発が感覚や直感に頼るよりも遥かに効果的になります。営業部隊のプロジェクトであれば、顧客データ、売上データ、マーケティングデータなどを分析して具体的な問題を特定しましょう。これが最も適切な改善策を導き出すための基盤となります。

4. 改善を求める文化の醸成

業務プロセスの改善は、個々のメンバーの努力だけではなく組織全体の協力が必要です。継続的な改善を組織に浸透させるために、組織の文化自体を変革することが求められます。これを達成するための一つの手法として、定期的なミーティングを開催し、役職や部署の垣根を越えて従業員が業務プロセスの改善に参画できるようにする仕組みが挙げられます。また、チーム内で改善の提案を奨励し、それを評価・採用することも有効です。

5. 訓練と教育の重要性

最後に、リーンシックスシグマのツールと手法を理解し、適切に活用するためには教育と訓練が欠かせません。データの収集や分析の基本、プロセスマッピングなどを学ぶことで、従業員はデータを理解し、分析し、解釈する能力を向上させることができます。もし余裕があれば、リーンシックスシグマによる改善部隊を創設し、そこで蓄積した経験を教育・訓練プログラムに落とし込み、継続的に社員に還元する仕組みができるとベストです。

これらの要素を実践することで、会社や部署が業務プロセスを継続的に改善し続け、業績を向上させることが可能になるでしょう。ビジネスは常に進化し続けています。それに対応するためには、自身もまた学び続け、改善を追求し続けることが必要です。リーンシックスシグマはその一助となるでしょう。ぜひ挑戦してみてください。