本連載の第160回では「マルチタスクをやめた方がよいのはなぜか」と題し、2つの観点からマルチタスクをすべきでない理由をお伝えしました。今回もタスクに焦点を当てて、タスクの優先度の付け方についてお話をします。
「この案件、急ぎで対応をお願いします」
上司からこのように指示を受けたら、他のタスクを途中で切り上げてでもその案件に着手するという人は少なくないでしょう。しかし、特に急ぎというわけではないけれどタスクを山ほど抱えている場合には、どこから手を付けたらよいのでしょうか。
タスクの優先度を考える際には「緊急度」と「重要度」の2軸で考えよう、というのが一般的ですが、ここでは別の観点を紹介します。それはタスク間の「繋がり」です。
難易度や所要時間が全く同じタスクがあったとしても、先にやるべきタスクとそうでないタスクがあります。それを見分けるのに必要なのがタスク間の繋がりです。そのタスクの繋がりを認識しないままタスクを進めようとすると、手戻りが生じたりミスが発生したりすることがあります。
たとえば、こちらの表のようなタスクがあったとします。
タスク群がA、B、C、Dの4つあり、それぞれにタスクが3つ~5つ含まれています。このようにタスクを整理して表にすると、とりあえず上から順番に着手したくなるのではないでしょうか。しかし、本当にその順番が最適解かどうかはこの表からでは判別できません。
このような時には、それぞれのタスク群とタスクの包含関係や繋がりを図式化しましょう。先ほどの表で整理したタスクの繋がりを図式化すると、こちらの図のようになりました。
この図では、「あるタスクのアウトプットが別のタスクのインプットになっている」という繋がりを矢印で表しています。これを見ると、それぞれのタスク群の中での繋がりに加えて、タスク群を跨ぐ繋がりも存在していることが分かります。タスクA-5からタスクB-3、タスクC-4からタスクB-2、タスクC-3からタスクD-4、そしてタスクD-4からタスクA-4という繋がりです。
もし、これらの繋がりを認識せずにタスクA群からB群、C群、D群へと順番に着手しようとすると一体どうなるのでしょうか。タスクA-1、A-2、A-3と途中までは順調に進めていくことができますが、A-4で躓くことになります。なぜなら、A-4はD-4のアウトプットがないと着手できないからです。そこで慌ててD-4に取り掛かろうとしますが、それにはD-1からD-3と、C-3が終わっていないとできないことが判明します。ここまで来るともはやパニックになってもおかしくないですね。
そこで、タスク間の繋がりを図式化したものを基に、どのような順番で進めるべきかを考えてみましょう。最初に進めるべきタスク群は「他からのインプットがなく、そのアウトプットが他のタスク群のインプットになっているもの」です。この例で該当するのはタスクC群なので、そこから着手すべきということになります。
一方で、他のタスク群からのインプットはあるものの、他のタスク群へのアウトプットがないタスクB群は最後に着手すべきということになります。あとはタスクD群、タスクA群が残っていますが、D群のアウトプットがA群のインプットになっていることを考慮すると、「タスクC群→D群→A群→B群」と進めることが最も効率が良いということが分かります。
「いやいや、現実のタスクの繋がりはこんなに単純ではない」
というご指摘もあるかと思います。恐らく業種・業界によってはタスクがこの例の何倍も複雑に関係し合っているということもあるでしょう。
しかしそれならばより一層、タスク間の繋がりを図式化した上で着手すべき順番を丁寧に考える必要があるのではないでしょうか。「複雑だから考慮しない」というのは、本来進めるべき順序を考えることから逃げているだけとも捉えられます。
パズルのような複雑なものだからこそ何も考えずに着手するのではなく、一旦立ち止まってタスク間の繋がりや構造を図式化し、最適解を模索すべきではないでしょうか。一筋縄ではいかないかもしれませんが、ぜひ挑戦していただければ幸いです。