本連載の第108回では「決められない会議を変えるには」と題し、意思決定ができない会議の原因と対処法をお話しました。今回も引き続き会議に着目し、会議そのものの必要性を見直すための方法をお伝えします。

多くのビジネスパーソンが避けて通ることのできない会議。朝から晩まで会議に出ずっぱりという人もいるでしょう。しかし、これまで見てきた会社の中には「なくても困らないのでは」と思える会議がチラホラありました。

最近は働き方改革の影響で変わりつつあるかもしれませんが、「会議に参加する」ことを「仕事をしている」ことと同義と捉える風潮が世の中にあります。しかし、本当にそれでよいのでしょうか。もしも、会議に参加しても「一言も発言しない」、「本筋に無関係な発言しかしない」といったことを繰り返していたとしたら、それでも仕事をしていると言えるかは微妙でしょう。そして、それ以上にまずいのは「実は不要な会議」の存在です。

では「実は不要な会議」とはどのようなものでしょうか。それは内容面と形式面の2つの側面で識別できます。

【内容面】

1. 目的が不明確

とりあえず集まっているという会議です。週次、或いは月次などの定例会などによく見られます。会議の冒頭に「さて、今日は何を話しましょうか」という感じで始まる会議は目的が決まっていない時点で開催する意義が問われます。

さらに厄介なのは「本会議では各部のリモートワークの活用状況について話しましょう」というように、一見目的があるように見える場合です。この例では、よく考えてみると「話し合うことで何を達成したいのか」が分かりません。

「各部のリモートワークの導入率を平均70%に達成するための計画案について合意を得る」とか、「リモートワークの導入率が80%の部署は40%の部署より離職率が15%高くなっている。リモートワークで社員のモチベーションが下がっている可能性があるので、早急に課題を抽出して対策を立てる」といった具合に単に話し合うのではなく、それによって達成したいことを明確にしましょう。

2. 目的が重複

その会議自体には目的が明確にあるものの、実は他で行われている会議と目的が重複しているという場合もあります。特に組織が縦割りで部門間の連携が取れていない場合には、複数の部署で同じ目的の会議を開催していても気が付かないことがあります。また、社員が自発的に会議を開いて課題を解決しようとする組織でも起こり得ます。

他の会議で既に結論が出ていたり、或いは議論が進んでいたりする場合に、そのことを知らずに全く同じ目的で会議を開くことはあまり生産的とは言えません。また、それ以上に同じ目的にも関わらず複数の会議で異なる結論が出た場合などは却って社内に混乱を招くことも想定されます。

このような事態を防ぐには、常日頃から会議の開催目的や結論などのアウトプットの情報を社内で発信し、共有しておく仕組みが有効です。それによって目的が重複する会議をせずに済むようにしましょう。

【形式面での要件】

1. 双方向でのやり取りが不要

会議によっては発表者が一方的に情報を伝えるだけのものもあります。延々とテーマに沿って話すだけで、それに対して他の参加者はただ黙って聞いているだけ、というものです。このような会議はもはやオンラインかオフラインかを問わず、会議の形式を取る必要がありません。

一方的な情報提供であれば自分が話す様子を動画にしたり音声で録音するなどして対象者に配信し、観たり聞いたりしてもらえば十分なはずです。わざわざ会議を開くとなると参加者全員のスケジュール調整や会議室の確保などの手間が増えます。それに対して情報配信という形式を取れば聞き手は自分の都合の良いタイミングで視聴できるので招集や調整などの手間がありません。

2. リアルタイムでのやり取りが不要

双方向でのやり取りが必要だとしても、リアルタイムでのやり取りが不要な場合にはやはり会議という形式に拘る必要がありません。つまり、お互いにやり取りが必要だけれど急ぎではないという場合です。このような場合には、複数人で同じ時間に同じ場所に集まってやり取りするコストが大きいのであれば無理して会議形式にしなくてもよいでしょう。

こうした場合には会議形式にせず、チャットなどのテキストコミュニケーションツールを使うことをお勧めします。チャットであれば双方向でやり取りが可能ですが、お互いに都合の良いタイミングで意見を述べたり質問を問いかけたりできるので、会議を開催しようとしてもなかなか都合が合わない人とのやり取りでは特に便利です。また、テキストなら記録が残るので、後から振り返ったり他の人に議論の内容を共有したりすることも簡単にできます。

以上見てきたように、内容面と形式面の2つの側面から「本当にその会議は必要か」を精査し、不要な会議自体の開催をやめたり、会議を別の形式に変えることで対応したりすることで効率化できる余地があるかもしれません。是非一度、検討してみてはいかがでしょうか。