いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。
今回は、国分寺の自然食店「でめてる」をご紹介。
定食はすべて"玄米"で提供、自然食の心地よい店
1980年代前半くらいのころ、西荻窪の「遊々満月洞(ゆうゆうまんげつどう)」という自然食レストランによく通っていました。いま、「バルタザール」というお店になっているところ。自然食のたぐいはわりかし好きので、なにかとしっくりきたんですよね。
で、国分寺にもいい店があるらしいという話は、その当時から伝え聞いていたのです。だから気になっていたんですが、結局は行けずじまいで……って、40年も気にしたまんまにせずサッサと行けやー。ってことで、ようやく訪ねてみました。「でめてる」というその店を。
国分寺駅北口を出て駅前通りを進み、「本町二丁目」交差点を渡って右へ。すぐ見えてくるセブンイレブンの脇の路地を入ってすぐ右側。位置的には、以前ご紹介した「フジランチ」の近くです。
壁は白く、柱や窓枠などはこげ茶色の木材。開け放たれた扉の脇に置かれた植物も、色彩的にちょうどいいアクセントになっています。右上の梁の部分には手書きっぽい「でめてる」の文字があり、左側にも店名が彫られた木製看板がかかっていますね。
その趣は、いまは亡き「遊々満月洞」とも共通する中央線仕様。もう、この外観を見ただけで懐かしい気分になってきます。これこそ、いかにも中央線らしい食堂ですよ。
店内は中央部分に、かわいい木製の椅子が並んだ大きな木製テーブルが。
そして右側には、4人がけのテーブル席も2卓あります。
その向かい、つまり左側は大きな本棚になっていて、本や小物などがズラリ。
反戦、反原発、安全な食べものなどに関する本が目立つところも中央線住民っぽいですね。
メニューを拝見してみると、上部に「Since 1982」の文字が。つまり、僕が西荻でこの店の噂を耳にした時期とも合致します。なるほどね。
なお、そのすぐ下には「ごはんはすべて玄米ごはんです」との表記がありますが、玄米大好きなので非常にありがたい。
基本はおかず4品がついた日替わりの「玄米定食」で、そこにもいう一品加わると「でめてる定食」になるようです。この日の日替わりのおかずは「にんじんとごぼうのフライ」「コンニャク煮」「キャベツとキュウリの酢のもの」「ひじき煮」。
「でめてる定食」には、さらに「ひよこ豆サラダ」がついてくるそう。店名がついているのはおすすめの証ですし、当然ながらこちらをオーダーです。
開店間際の店内にはまだお客さんがおらず、突き当たりの厨房で店主の女性とスタッフがテキパキと作業をしています。BGMは初期のビートルズで、その快活さが正面の窓から差し込む陽光と混ざり合い、とてもいい雰囲気。
ここは、もっと早く来るべきだったなあ。
そんなことを考えている間にも、男性の単独客がひとり、またひとり。まだお昼前なのに、僕を含めた3人の客が集まったことになります。地元にすっかり根ざしたお店なんでしょうね。
やがて運ばれてきた「でめてる定食」は、なかなか魅力的なルックス。どれからいただこうかと、見ているだけで楽しくなってきます。
まずは、青菜やねぎなどの入った味噌汁から。出汁がよく効いているので、薄味だけれど物足りなさはまったく感じません。いや、それどころか、これこそが本当の味噌汁だよなあと思わずにはいられない満足感が。
胡麻のかかった玄米ごはんは硬すぎず、柔らかすぎもせず、絶妙の炊き加減。噛むほどに玄米の味わいが広がっていくので、そのまま食べても充分においしい。
そして小鉢に入ったおかずを一品ずつ、玄米と一緒にいただいてみれば、さらにいろいろな味わいを楽しむことができます。
「ひよこ豆サラダ」や「キャベツとキュウリの酢のもの」は爽やかな風味で、「コンニャク煮」や「ひじき煮」のほっとする味も魅力的。
「にんじんとごぼうのフライ」は硬めの食感も心地よく、ひとつひとつに納得させられるのです。
だから、食べ終えたあとの満足感も格別。ぜひとも、またお邪魔したいと強く感じたのでした。夜に、エビスビールを飲みながらイワシ料理を堪能するのもいいかもしれないな
●でめてる
住所: 東京都国分寺市本町2-14-5
営業時間: 11:00~15:00、17:00~20:30
定休日: 日、月、木