一般的な風潮として世の中はダイエット至上主義みたいな部分があるように感じています。細くて痩せている方が綺麗。ダイエットしているのが当たり前。皆さんも少なからず感じているところではないでしょうか?
このような風潮から何が起こるかというと、「痩せるために体重をコントロールしよう!」だと思います。じゃあどうやって体重を知るか、と言ったら体重計ですよね? 体重計が家にある人も多いことでしょう。
体重計に乗れば、自分の気持ちとは裏腹にほぼ正確に結果が現れます。毎日体重を量り1kg減っては喜び、1kg増えては落ち込み……こんなこと繰り返していませんか? 実はこれ、ダイエットに逆効果かもしれません。なぜ毎日体重計に乗って体重測定することが逆効果なのか解説します。
毎日の体重測定で痩せない理由
多くの人は毎日体重計に乗ることで一喜一憂します。なぜなら体重計に乗る時に、「前日よりも体重が減っているかな?」と無意識に「期待」をしてしまうからです。これはギャンブルと同じ様な状態です。ギャンブルは、外れるかもしれないけど、当たるかもしれないという期待感を持っていきますよね? それで期待感を上回る結果(体重が減っていた。ギャンブルで当たった)があると、「ドーパミン」というホルモンが分泌されます。
ドーパミンは脳の回路を刺激して「もっと欲しい!」という感情を作るといわれています。だから、依存を引き起こしやすくなるのです。ドーパミンの影響で、体重計に依存すると数値の変化だけを見て一喜一憂することになります。上手く行っている時は良いかもしれません。しかし、結果がなかなか出ない時、良くない結果だった時に自暴自棄になる可能性があります。「体重が1kg増えたからもういいや!」と自暴自棄になっていたら、せっかくコツコツダイエットをしても無駄になります。体重計によって量れる体重に振り回されていたらダイエットどころじゃありません。
体重計に乗らなくても体重は一定である
体重をコントロールする際に体重計に乗らなければいけない、と考えている方が多いと思います。冒頭にもお話しました。しかし、実は体重計に乗らずとも人の体重はほぼ一定に保たれています。なぜなら、「ホメオスタシス」(恒常性)という機能が備わっているからです。
ホメオスタシスとは、身体を一定に保つ機能のことを指します。例えば、暑い時には汗をかいて身体の体温を下げ、寒い時には身体を震わせて体温を高めます。これと同じように、体重もある一定をキープする仕組みになっています。食べ過ぎた後はお腹があまり空かない。我慢して食べない状態が続くとその後に食欲が強まるというのがその仕組みの一例です。
体重を一定に保つ仕組みがあることで、体重計に乗らずとも体重をある一定の状態へと保てます。私自身、体重計に乗ることはほとんどありませんが、体重を測定するとおおよそ63kg~65kgの範囲を保っています。これは、体重を一定に保つための脳の仕組みが正常に働いているから為せる技なのです。脳の仕組みを整えるための方法は、次回の記事でご紹介します。
体重計との付き合い方
毎日体重計に乗るのがよくないという理由は分かった。じゃあどうやって体重計と付き合っていけば良いのか……最後にこれについてお話をしたいと思います。
体重は身体の中の水分量によって容易に変動します。皆さんも1度は経験あるかと思います。お風呂の前と後で体重測定をすると体重が500g減っているあの現象です! そのため、1日の体重の変動に一喜一憂するのは、心のためにも良くないと考えています。だから、体重計に乗るのであれば1週間に1度、起床後お手洗いを済ませた状態をオススメします。その体重の数値を記録しておき、1カ月の推移を見つつ、平均体重を計算してください。 アプリに登録すれば折れ線グラフを直ぐに出せるし、平均体重も直ぐに分かるかと思います。その結果を、翌月と比較して体重の推移を見ることで、増加傾向なのか、減少傾向なのか、あまり変わらないのか推測することができます。
とはいえ、個人的には体重計は必要ないと思っています。なぜなら、ダイエット指導をしていると「体重計に振り回されている人が非常に多いと感じるから」です。周りに居ますよね? 体重計に毎日載ってなくてもスタイルが変わらない人。こういう人を目指せるのが1番だと考えています。
ただ、体重計も上手に使えば現状を把握するための、有効なツールです。もしも、毎日体重測定をしていて体重に一喜一憂してしまう。そんな状態で困っているなら、今回の記事を参考に体重測定の方法を一度見直してみてください。
■体重計との付き合い方まとめ
(1)体重計に乗るのは朝1番にお手洗いに行った後
(2)体重計に乗るのは1週間に1度
(3)1カ月の平均推移(平均体重)を計算する
(4)翌月の状態と比較する
【参考文献】
The effect of repeated weighing on psychological state.p.121-30.(Ogden, J. Whyman, C. Eur Eat Disord Rev 5(2) 1997)
もっと!愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学(ダニエル・Z・リーバーマンほか 株式会社インターシフト 2020)
強迫的な薬物依存の神経メカニズム 実験医学 Vol37 N.o4(稲田健吾ほか 羊土社 2019)
肥満症における報酬系の役割と病態的意義 実験医学 Vol.34 No.2(益崎裕章ほか 羊土社 2016)