契約社員がワンピースの輸入販売をビジネスに

副業元年と言われた昨年から、さまざまな副業が注目されているが、実際には副業をしたくても、何をどうすればいいのか分からないという人が多いのが現状だ。そこでオススメなのが「自分の得意なことを仕事にしてしまう」というパターン。この連載では、これまで起業の相談に応じてきたクライアントの中から、スキマ時間とこれまでの経験をいかし、自分の得意なことで収入を生み出している人を紹介していく。

• ワンピースの輸入販売を手掛けるニー亜紀子さん

第33回目に紹介するのは、契約社員として働きながら、副業でワンピースの輸入販売を手がけ、とうとう本業にしてしまったという、ニー亜紀子さん(43歳)だ。

契約社員として働いていた数年間、休暇で何度かバンコクへ行くことがあったというニーさん。お気に入りのワンピースを買って帰国したところ、友人から「私も欲しい」と言われたことがきっかけとなり、自宅で数回の試着会を開催するようになった。そこから、本格的にワンピースの買い付けと販売が始まったという。

そもそもニーさんは、国際結婚をしたあと、ご主人の仕事で海外転勤が決まったため、「日本に数回帰国するだけで成り立つような仕事スタイルは無いかな?」と考えていた。そこで、このワンピース販売にピンときたのだそうだ。

現在では、ワンピース既製品の買い付け、オリジナル商品のデザイン&制作、ネット販売、卸業、自宅サロンでのセミナー開催、代理店販売などかなり幅広く手がけ、すっかり本業にしてしまった。そのワンピースの人気の秘密を聞いてみた。

着やせに特化したワンピース

「私が販売しているワンピースは全て、『マイナス5キロ着やせする』というのがテーマで、『魔法のワンピース』と銘打っています。無地は着やせしませんので、90%が柄物です。ダイエットしなくても着やせして見えるというのが、１着で実感していただけるので、リピーターさんがどんどん増えました」。

ワンピースを売っているお店や会社、企業はたくさんあるが、その中で「着やせ」に特化したことが人気の要因だとニーさんは言う。また、店舗を持たずに自宅で試着会を開催したため、不要なコストを抑えることができたのも、成功の要因だろう。

今では自宅にとどまらず、全国各地で試着会を行うまでになったニーさんのワンピースだが、もちろん立ち上げの段階ではいろいろと苦労があった。

まず、実際にワンピースを着てもらわなければ、着やせを実感してもらえない。そのために試着会をコツコツと続けてきた。また、そのお知らせはほとんどブログで行ったそうだが、そのブログでも、「いかに柄物ワンピースが気になる体形を隠してくれるか」、「なぜパンツスタイルよりワンピースが着やせするか」を書き伝えるのに苦労したそうだ。

• 似合うワンピース、ファッションをお伝えするのが、客によって難しいこともある

さらに、実際に客と接する試着会でもこんなことが。

「お客さまの試着をお手伝いしている際、『どう見てもこちらのワンピースの方が、色、柄、デザインどれをとってもお似合いなのに……』と思い、お勧めしても、ご購入に至らないケースはよくあります。どうしても無難なタイプのワンピースが選ばれがちです」。

「好きなものを着るのが一番良いこと」と思いながらも、「もっとご自身の魅力を引き出せるワンピース、ファッションがあるのに」と、もどかしい気持ちになることもあるそうだ。

代理店へ展開、今後は卸売りも

現在、4歳のお子さんを抱えての仕事とあって、業務は寝かしつけのあとだったり、お子さんがテレビを見ている30分の間だったりと、合間を見つけて集中的に行っているというニーさん。そんな中でも効率的に魔法のワンピースを広めようと、代理店制度をスタートした。

「全国でかなりの数の代理店ができたのですが、やっぱりすぐに辞めてしまう人や、なかなか売り上げがあげられない人などもいて、良い代理店さんと出会うまでに時間がかかりました。また、『着やせ』のことを考えて、大きなサイズにフォーカスして商品を仕入れたり、オリジナル商品の製作をしたりしていたのですが、小さなサイズの体型の方も、『着やせはしなくてもスタイルアップするワンピースが欲しい』のだと気づくまでに時間がかかりました。その失敗を踏まえて今では全てのサイズを販売しています」。

• ワンピースで幸せになる女性を増やしたいというニーさん

そうした苦労や難しさを乗り越えてきて、ニーさんの今があるのだが、そのためのエネルギーとなったのは、客の喜ぶ姿だそうだ。ニーさんは、ワンピース販売だけでなく、カラー診断や骨格診断セミナー、着やせセミナーなども毎月開催している。ワンピースを通して、どんどんきれいに、そしてアクティブに変化し、結婚が決まる人も多いのだという。洋服を通してそこまで変化があるというのは、正直筆者も驚きである、

「大切な日に魔法のワンピースを着て、SNSに写真を投稿してくださるお客さまを見ると、涙が出るほどうれしいです」とニーさんは言う。

そんなニーさんに今後の展望を聞いてみた。

「今後は、店舗のオーナーさんや、今後お店をオープンしたい方に向けて、オリジナル商品を卸売りしていきたいと思っています。全国で販売するのが夢です。もちろん、買い付けから販売まで全てを1人でやることは大変ですが、コストの削減になることは間違いありません。海外、外国人との交渉などを含め、お洋服に限らず、店舗を持たないで稼げる方法をお伝えするビジネスコンサルティングも展開していきたいです」。

契約社員として働きながら、そして退職後は子育てしながら、「ワンピースを仕入れて売る」事業をここまで拡大できたのは、ニーさんの行動力、さらには「この服で幸せになる女性を増やしたい」という熱い思いがあったからだろう。今回の取材でも筆者は成功の要因としてその2点を感じた。やはり、「思い」と「行動」は必須である。ニーさんのさらなる活躍が楽しみだ。