就職活動は一筋縄ではいきません。準備不足のやらかし、判断に迷う場面、予想外のアクシデント――振り返れば「事件」だらけという人も少なくないでしょう。

実際の就活生の体験を描いた大人気漫画『就活でやらかした話』(青木ぼんろ作)をもとに、人事のプロに「その行動は正解だったのか?」をジャッジしてもらう本シリーズ「就活やらかし診断書」。

今回お送りするのは「嫌な雰囲気の面接官」です。

■就活やらかし体験談「手ごたえのない面接」

就活生・内木は、今まさに面接室にいた。
時計の針が、静かに音を刻んでいる。

面接官「……はい、わかりましたー」
淡々と答える企業の面接官。その声には温度がなく、機械のような響きがあった。

私は、返答を間違えたのだろうか……。

これまでの質問も、何を聞かれても反応が薄い。相づちも、うなずきも、ほとんどない。必死に笑顔を作っても、相手の表情は動かないままだ。

やがて、面接官が軽く背もたれに体を預けて言った。
面接官「それでは、面接は以上です」

  • 青木ぼんろ作『就活でやらかした話』より

    青木ぼんろ作『就活でやらかした話』より

→✅この話を漫画で読む

その瞬間、胸の奥がスッと冷えた。――あ、終わった。

内木は椅子から立ち上がり、深く一礼する。

内木「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました」

声が少し震えていた。
部屋を出るとき、面接官は軽くうなずいただけで、視線はすでに次の書類へと移っていた。

廊下を歩く足音がやけに響く。
内木「終始、興味なさそうな顔してたな……」
思わず口の中でつぶやく。肩の力が抜けて、思わず笑ってしまう。

内木「絶対落ちた……」

面接を終えるたびに、こうして勝手に自己採点をしては落ち込む。でも、今回はその中でも群を抜いて“手ごたえゼロ”だった。


数日後。

封筒を手にする内木。差出人の社名を見て、胸の奥がズキンと痛む。

内木「……ああ、結果きたか」

封筒を持つ手が、わずかに震える。落ちたと思っているだけに、開けるのが怖い。
深呼吸をして、ゆっくりと封を切った。

――そして、目に飛び込んできた一行。

「採用内定通知書」

一瞬、時間が止まった。

内木「え、内定!?」

思わず声が出る。
その驚きがあまりに大きく、思わず眉間にしわを寄せた。

内木「逆に怖っ……」

『就活でやらかした話』第39話エピソードより作成

■専門家の診断書「盛り上がらない面接=不合格、ではない理由」

「絶対落ちた」と思った面接に、なぜか通っていた――。就活ではそんな“逆転現象”が起きることがあります。無反応な面接官に不安を感じたり、手応えゼロで帰り道に自己嫌悪に陥ったり……。でも、実はその“感触”こそがズレていることも少なくありません。面接官の反応が薄い=評価が低い、とは限らないのです。では、どんなときに「手応え」と「結果」が食い違うのか、そして面接中に気持ちを立て直すにはどうすればいいのか。ここからはキャリアの専門家に聞いてみましょう。

  • 不合格を確信させる“塩対応”…!? 面接官は何を考えている?

    ※画像はイメージです

“手応えゼロ”が面接通過や内定につながることもある

いい雰囲気で面接が終われば、「面接通過したかも」「内定出そう」、逆に話が盛り上がらないと「落ちたかも」と感じる気持ちはわかりますが、必ずしもそうとは限りません。

面接官にもさまざまなタイプがあり、場慣れしたベテランばかりではありません。百戦錬磨の面接官に当たれば、あなたが気持ちよくしゃべれるようなリアクションを取るのは朝飯前ですが、採用後の上司や先輩になる「現場のビジネスのキーマン」は、面接には不慣れなことが多く、期待しているような好反応が得られないことも。

こうしたキーマンは、実際に現場で欲しい人材かどうかを見極め、合否を左右するキーパーソンでもあるため、面接官の反応が良くなくて「失敗した……」と応募者が勝手に思い込んでも、その裏では冷静な評価が進んでおり、結果的に面接通過や合格というサプライズにつながることもあるのです。

対策本には出てこない!? 面接で重視される「本当の評価ポイント」

では、現場のキーマンは何を基準に判断しているのでしょうか。

まず、採用面接の“対策本の位置づけ”を正しく理解するとよいでしょう。なぜならそこには罠があるからです。

採用面接では、質問される内容が大体決まっています。対策本にはその質問に対し「ミスなく最低限クリアする」ためのノウハウが書かれていますが、そのまま答えさえすれば面接通過や内定が確実にもらえるというものではありません。

100点満点中80点を取れば合格……というような試験とは異なり、「この人と働きたいか」を複数の面接官を通して確認する、その判断要素として対策本にある共通質問があるという位置づけになります。

面接官の立場で考えればわかるのですが、対策本の模範解答のように完璧な受け答えをAIのように行う人と一緒に働きたいとは思わないですよね。

逆に、ネットで都市伝説のように語られる「伝説の回答」で内定を得た人も出てくるのも事実です。ただし、その回答を真似しても再び内定がでることはありません。たまたま、その回答がその人のキャラに合い、面接官が一緒に働きたいと思っただけなので、再現性がないからです。

重要なので繰り返しますが、「この人を部下として一緒に働きたいか」これが対策本に出てこない“面接で重視される評価ポイント”になるのです。

面接中、ネガティブな気持ちになったらどう切り替える?

面接官の態度や面接の盛り上がりは合否に関係がない、と言っても人は感情の動物です。就活という人生の大事な局面で、面接官とのやり取りがしっくりこなければ不安になるのは当たり前です。

やってはいけないのは、不安をかき消すように、用意した回答をこれでもかとPRしまくることです。これは失敗につながります。志望度が高い企業であればあるほど、面接官とのやりとりでネガティブな気持ちに陥ったら、一か八かで「用意した回答の中でも渾身の出来栄えの内容を伝えて一発逆転を狙おう。数多く回答すれば、一つは面接官の心に突き刺さるかも」と期待する気持ちはわかります。しかし、これではクラスで一番のモテモテさんに、玉砕覚悟で告白することと一緒です。

忘れてはいけない一番大事なことは、面接通過や内定という結果を得ることです。

あくまでも、面接官の立場で考え、「この人が一緒に働きたいと思ってもらうには、私のどの側面を切り出せばいいのだろう」と一歩引いた視点で考えましょう。

客観視できれば、余計な言葉や対応をとって自滅するリスクが減ります。どうしても焦ったときは、頭の中で報道番組のレポーターのように「自分の置かれている状況を解説する」といいでしょう。状況を解説しようとすることで自然と冷静さが戻ります。面接中でも実践しやすいおすすめの切り替え方法です。

解説:松本利明(人事ジャーナリスト・コンサルタント)
漫画:青木ぼんろ